第6話
各々ゆっくりと南の方へ進路をとる中、ヤムだけが高度をあげた。高度をあげながら筒状の装置を覗き込んでいる。
「二時の方向に商船がいるな」とヤム。
「さっきは軍艦がいるっていってなかったか?」とバーボア。
「軍艦と決まったわけではないが、大きな船は商船とは違う風に乗っている。商船は恐らくこの風に乗っている。近い」とヤム。
「孤立しているか?」と尋ねるのはヤーナミラ。
「分からない」とヤム。
「私は、私はどうなるんだ!」と突然叫ぶエイナイナ。
「わたしの近くに
この三人の会話にクウェイラとシューニャはあまり興味がなさそうだった。適当に流して飛んでいる。飛行船に貼り付いていたクラゲを始末した二人だ。恐らくこの二人はディンギー操作や鉾の扱いに長けていて、ディンギー自体も実戦向けに調整してあるのだろう。じっとしているのが
「どうもノイズが激しいな」と筒状の装置を覗くヤムが呟く。
「そりゃエイナイナの舟だろ」とバーボア。
みんながエイナイナの方を見る。
「あ、おまえ。スコークをつけているな?」とヤム。
「当然だ。わたしは正式な軍隊の所属であり武力行使を認められている。武力行使には責任が伴うんだ。スコークは身分の証明であり……。あ、何をする」
言っているそばからヤムがエイナイナに近寄ってきて、エイナイナの機体の先端に回り込んだ。
「スコークを外すぞ」とヤム。
「勝手にいじるな!」
「借金返済したら返してやるよ」
飛行船には横流れを防ぐためのキールが備わっている。一部のクラゲが持つクラゲ
「借金返済? 借金ってなんだ?」
「あの飛行船
「馬鹿を言うな! 飛行船ガブーストがいくらすると思っているんだ!」
エイナイナが機体につけていたスコークという装置にも同様に小さなクラゲ耳が入っていて、動くたびに微細物質エーテルを振動させるので友軍からお互いの位置を知るのに役だった。波動は笛の音よりもずっと遠い位置で検出することが可能で、風を切る音に邪魔されることもなかった。しかし空賊たちにとっては獲物となる飛行船に空賊の可能性のあるディンギー集団の存在が気づかれてしまうことは望ましくない。空賊たちがスコークをつけることを嫌がるというのはもっともな話だった。
「お前たち、波動計で獲物となる飛行船を探しているのか?」とエイナイナ。この質問には誰も答えてくれなかった。
「とりあえず二時方向の商船に向かおう。あとでもう一度波動計を確認する」とヤーナミラ。
こうして一行は移動を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます