芳香

 少女が花摘む花畑。

 白き花に囲まれて、

 歌う少女に近寄る蝶。


 はらはらはら と、

 舞いながら、

 優しく歌う声が重なる。




 ♪月の雫が、光になって、

  命が生まれ、影が生じて。♪



 少女も合わせてことばを唱える。



  『始まりの白、

   広がりの黄、

   統一の赤、

   深淵の黒、

   繫がりの青』



 ふわぁ〜と、甘い香りが少女を包む。



 ルーナ・ジェーナは、なぜだか急に 胸が締め付けられるような懐かしさを覚えて、

はらり、と涙を流した。


 ひらひらひら と、蝶は何処かへ飛んでいった。


 甘い香りだけを残して。




 これは、ルーナ・ジェーナが ひとり 地下神殿を守っていた時の ある日の出来事。




 


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