白き月にうたう〜記憶のカケラ〜

はじまりのうた

花畑

　♪はじまりは、白。

　　友だちの黃。

　　心の赤に。

　　裏側の黒。

　　水は青くて。

　　世界は、ひとつに。♪

　花畑の真ん中で、少女は歌う。

　欠けた記憶を埋めるかのよう。

　♪はじまりは、白。

　　目の醒める黃。

　　希望の赤に。

　　美しき黒、月の影。

　　青は何者、何になろうか。♪

　少女の歌声が、森の中へと吸い込まれていく。

　ムーンフォレストの木々たちが、枝葉を揺らし、風が抜けてく。

　白い花咲く、森の奥。

　少女の秘密の花畑。

　――ねぇ、ルーナ・ジェーナ。その歌は何？

　訊かれても、少女は答えられない。

　それは、なくした記憶の中にあるから。

　記憶は手放してしまったけれど、少女の心の奥深くから

　溢れた思いが歌になる。

　少女はひとり、花を摘む。

　女神さまに捧げるに花を。

　ムーンフォレストの番人として。

　少女は、森の地下神殿で、

　来たるべき時をひとり待ち、

　今日も　祈りを捧げ、守る。

　ルーナ・ジェーナの口ずさむ歌。

　ムーンフォレストの　はじまりのうた。