つまりはこう言うことでしょう

@overbatako3

とあるご令嬢のあれこれ

「公爵家令嬢!あなたとの婚約を破棄する!」


「王太子殿下、一体どう言うことですの?今日は先の戦の戦勝祝いの場ですわよ?お集まりの皆様も困惑しておられますわ」


「ええい煩い!私は真実の愛に目覚めたのだ!この娘は平民の出だが私に癒しと幸せを与えてくれた!可愛げのないお前と一生を共にするなど考えられない!」


「殿下ぁ、皆さんの前でそんな、恥ずかしいですぅ」


「ハァ……左様でございますか。かしこまりました。これ以降のお話は公爵家当主である父とお進めくださいませ。御前を失礼いたしますわ」


「公爵家令嬢さま!お待ちください!」


「あら、貴方は先の戦でお目覚ましいご活躍をされ軍神とお呼ばれになる騎士団長閣下ではありませんか」


「貴方の幼き頃からの努力と忍耐、辛いお后教育の中でも優美さと優しさを失わないその強さを、私は知っています。ずっとお慕い申し上げておりました!」


「まあ!なんてことでしょう。私は王族に婚約破棄された身ですわ。こんな傷の付いた女など軍神閣下にふさわしくありません」


「いいえいいえ!子爵家の三男と言う下級貴族の末席から、剣1本でここまで這い上がってこれたのも、あなたに相応しい男になりたいと言う一心からです。王からは武功として辺境伯を賜り騎士の称号もいただきました。公爵家の姫君には到底不足の身分とは承知しておりますが、是非私の妻になっていただけませんか」


「そこまで私のことを…!でもお互いによく知り合いませんと…お友達からでもよろしいですか」


「勿論です!」


一年後


「おかえりなさいませ旦那様」


「ただ今帰りました愛しい人」


「領地に問題はございませんでした?」


「ええ。貴女の采配で国境周辺はとても賑やかですよ。何せ交易の要になっていますからね」


「それは良かった。王太子殿下の補佐となるべくして領地経営を学んだ甲斐が有りましたわ」


「補佐などではなく、実務はほぼ貴女だったのでは?」


「いえ、殿下の周りには優秀な方が揃っていらしたので、私はお勉強させて頂いただけですわ」


「その優秀な補佐官や側近達が次々と王城を辞しているようなのです」


「まあ、何故でしょう?」


「どうやら平民上がりの婚約者殿のお后教育が進まず、苦言を呈した者は解雇されているとか」


「そんな……殿下はご自分の心に忠実で素直な方だからと、せっかく王妃様が優秀な側近をおつけになっていたのに」


「貴女が幼い頃より厳しく教育されてきたのも、あのボンクラの面倒を見させる為だったのでしょう?」


「旦那様ったら。王族の方をそんなふうに言うものではありませんわ」


「貴女を初めてみた時、俺はまだ兵舎に入って間もない12歳のガキでしたが、俺よりも小さな女の子が教育係の叱責に耐えながらカテーシーの練習をしている間、名ばかりの御学友と遊び呆けているバカ王子をずっと見てましたからね」


「そんな顔をしないでくださいな。良いのです。私は貴方に出会えて幸せなのですから」


「俺もですよ愛しい人」


「王太子様は少し頼りない所もあるかと思いますが、第二王子様は優秀な方ですから。きっとご兄弟で力を合わせて国をお治めになりますわよ」


「ええ、そうでしょうね。そういえばその第二王子殿下に縁談が来ているようですね」


「あら、どちらのご令嬢が?」


「王の片腕であらせられる宰相閣下のお孫さんだそうです」


「まあ、そうですの。それでは王太子殿下に万一のことがあっても安泰ですわね」


「第二王子殿下も宰相閣下のお孫さんもまだ学生ですから、話が進むのはご卒業されてからでしょうけどね」


「それはそれは。その間に王太子殿下のお話も進むのでしょうね」


「ええ、きっとそうでしょうね」


「旦那様」


「なんでしょう愛しい人」


「私は今、この上なく幸せです。旦那様に愛されて、領民たちも慕ってくれて、やり甲斐のある仕事までさせて貰って、何も不満はありません」


「そう言っていただけて何よりです」


「ですからどうか、貴方ご自身で貴方を貶めるような事をなさらないでくださいね」


「はは、貴方には敵わないな。大丈夫ですよそんな事にはなりません。心配してくれてありがとう。さあ、そろそろ夕飯の時間だ。行きましょう」


「ええ」



10年後



「新しい国王陛下が即位されたぞ!」


「二年前に即位の寸前で亡くなられた兄君に代わってのご即位、まだお若いのにご立派じゃあないか」


「兄君は本当にお可哀想だったよなあ。婚約者のご令嬢と外遊中に船が沈むだなんてなあ」


「全くだよ。あの事故で王子様の側近たちも一緒に亡くなっちまったんだろう?」


「おい、目出度い時にそんな話はやめようぜ。見ろよ、ご立派なお姿じゃないか」


「ああ、わざわざ屋根のない馬車でお姿を見せてくださるなんてな」


「あの馬車のすぐ後についている護衛が噂の軍神さまか?」


「あちらも立派な体躯の男前だなあ。奥方様も物凄い美人なんだろ?」


「いいなあ畜生、あやかりたいもんだぜ」



こうしてお姫さまは素敵な騎士と結ばれ、末永く幸せに暮らしましたとさ。


めでたしめでたし。

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