◇一章◇トーリア国と奴隷
◇一話◇デカい竜と契約
さて俺は死んだわけだ。俺はこっから三途の川に行って、次は閻魔大王の審判を受けるんだよな?俺は天国に行くのか地獄に行くのか……。
ま、まぁ?俺は前世特に悪いこと……してないはずだからな!……だよな?
ところで、なんで俺は意識があるんだ?それになぜか力が入る。
まてよ、こんなことがあり得るのか……?
意識は切れたばっかり、戻るはずがない。つまり、ラノベで見たことがあるあの転生を俺がしている他にない。
んえ?転生!?い、いやおい待てまて!俺が転生なんて、てかこんなことが
「うぁ……」
嘘だろ……出ちゃったよ声、出ちまったよぉ!?
「ラーメン……」
言えちまったよ!てか最初の言葉が『ラーメン』て、いやもうこんなことをしている場合じゃないな、うん。
起き上がろう。
「……うわくら……」
初めて見た光景は暗闇だった。
おそらく俺は洞窟に来たっぽいな。なんで分かるかって?頭に入ってるんだもん!いやもう完璧脳内に【現在地点は洞窟です】みたいなのが入ってるんだよ!
とりあえず座ろう。
……待てよ?転生ってのは生まれ変わるみたいな感じだよな。でも俺の場合は生まれ変わったというより元々ここにいた人に意識が移ったってことだよな、記憶もあるし。
まぁ、もしかしたら総じて転生者って事なのかもな。……いや
ってかこんなこと考えてる場合じゃないわ。
「よし!出るか」
歩きながら手や顔に触れてみたが、前世よりも若々しくて、まるで10代の若さみたいな手をしてるんだよなぁ。
ってことは俺、もしかしたらイケメンになっている説がある!いわゆるあれだ、異世界転生系ラノベとかで生まれ変わったことによってイケメンになるってやつだ!あと異世界といえば魔法!チート系のスキルも貰えるよな!
よし、外に出たし、試しに魔法が撃てるか試してみよう。
「ファイアボール!」
――出ない。
え?普通魔法って出るもんじゃないの?簡単に放てるんじゃないの!?
手を何度も振ったり、放つかのように手を木々に向けるが何も起きない。
――いやもしかしたら唱え方とかがあるのかもしれない。
「我が魂よ!炎となり万物を焼き尽くせ!アルティメット・ファイアボール!」
――はい、出ませんでした。俺の物語、完!
「……あ、なんか魔法陣みたいな絵が頭の中に……」
もともと有ったかのように、自然と記憶に練りこまれていたのは、The・魔法陣と言わんばかりの絵。
ちなみに俺の足元に『書け!』と言わんばかりのちょうどいい木の棒がある。おそらくこの魔法陣、チュートリアルみたいな感じだろうな。
「いやゲームかよ!」
やべ、前世の癖の口癖がまだ治ってなかった。
「よし、書こう」
足元の木の棒を拾って、魔法陣を書いてみた。我ながら……なかなかの完成度じゃないか?
まぁ、テンプレみたいに二重の丸書いて、間にちょちょいと変な文字書いて、真ん中に六芒星を書いたというものだが。
ちなみに大きさとしては半径5mのデカい魔法陣だったので、作るのに割と時間がかかったが……。
「んでんで……んと、呪文がっと……?」
「
意味とすれば、契約をしてくれる仲間の召喚魔法?みたいだ。
ちなみに召喚して契約の方は相手が認めてくれないと契約不可らしい、まぁそりゃ相手だって契約者に好みはあるしな。
「うぉあっ!?」
魔法陣は強く光りだし、咄嗟に目を塞いだ。
いや、本当に目が死ぬ。ほらあれだ、例えるならソシャゲでめっちゃレアなやつとかそういうのが出てくる演出であるやつ、虹色に光るかそれか強く光るみたいな感じの演出。
正直ここまで光ればとんでもない仲間が出てくるんじゃないか?それに契約獣召喚だし、出来れば可愛くてもふもふな仲間とか出てきてくれたらいいな!
ちなみにこの魔法陣、どうやら1回きりらしい。
「そろそろ……いいか?」
薄目で見て、光が弱くなっているのが分かった。
さて、さっそく見てみようか。
――え?
「ゴアァァァァァ!!!」
鼓膜が破れそうな声と共に、目に入ってきたのはふわふわや可愛い動物みたいなやつじゃなかった。
「……え、えぇ……え?り、竜!?」
目を擦り、もう一度確認。
――完璧な白竜です、ありがとうございました。
これどう見ても契約どころか俺が食べられて死んで終わりってなるだろうな。
「俺の事食っても腹の足しにもなりませんし、お腹壊しますよー?」なんて言って、やんわり逃げようと思っているが……。
「ゴァァア……」
――なんで俺は舐められているんだろう。俺の事、味見でもしてるのか?
「って、今度はなんだ!?」
竜が突然光り出すと同時に、姿かたちが小さくなっているのが見えた。
それはまるで人のようで、そして角があって小さな羽があって、んで小さな尻尾があって――
「初めまして!ご主人……様?かな」
抱きつかれた。凄く柔らかいのが当たってる。その答えは、胸だ。
「うぉぁぁぁぁぁっっっ!?」
「ふやぁっ!?」
とりあえず初めましての竜?に、開幕土下座をかました。
理由は、驚いてバランス崩して女の子に覆いかぶさってしまったからだ。ちゃんと頭に手を添えて守ってるから怪我はしてないはずだが……。
◇
「か、顔上げてくださいぃ!なんで出会って直ぐ私は土下座見せられてるんです!?」
「いや、もう、なんと言うかホントに」
「いえいえいえ!だって驚きますよね!見ず知らずの竜が人になるというのを目の前で見せられたら……」
とりあえず冷静になって起き上がり、竜さんの身体を見た。
――ない。
何がって?服がだよ!
「うぉぉぁぁっっっ!!」
「!?」
咄嗟に竜さんの上半身に、上着を着させた。とりあえずこれでいろいろと目に入るものはガードできたし、大丈夫だな。
童貞である俺は母親以外の女性の裸体を見ること自体がないというのに、まさかこんな形で見ることとなるとは。
「あ……ごめんね!?お見苦しいの見せてしまって……」
「いや素晴らしかったです」
反射的に何言ってんだよ俺。ほら凄い困惑してるよ、しちゃってるよ!
「えっ……?」
訂正できなくなっちまったよ。まぁ本当にきれいな肌だったしな、契約できなくとも眼福だった。
とにもかくにも、こっから俺は一人で頑張っていくわけだ。最初はどうしていくべきか、国とか探してみたほうがいいんだろうか。
「あの、契約するために呼んだんです……よね?」
「あ、はいそうです」
「なんかすいません、身体に触れたり変なことを言ってしまって……」
「いえそれはいいのですが、契約はしないんですか?」
「そうですよねすいません、呼んでしまってはなんです……え?」
一瞬理解が追いつかなかった。召喚されて、なおかつ裸体を見られているというのに何故『契約はしないんですか?』という言葉が出てきたのだ。
「えっ、良いんですか?契約」
「はい、その為に呼ばれたようなものですし……」
おかしい、この魔法契約自体は召喚者が決められる事じゃないのに……なんでなんだ?まぁ、そんな事はどうでもいいな。
契約しよう。
「します、しますします凄くします。」
「良かったです、それでは契約させてもらいますね!」
竜さん、なんか爪を尖らせて俺のてを握りに来たんですけど、これ契約ってまさかのまさかじゃないよな。
スッ
俺の手首に切れ込みが入る。
凄く切れ味が良い爪ですこと。あと凄い痛い、いや本当に痛い。
「いっ……!」
「あっ、動かないでください!頸動脈切れたら多量出血で死にますよ」
「怖いんですけどぉ!?」
竜さん、今度は手首の血を舐め始めた。なんと言うかエロい。
チロチロと血を舐め取ると、竜さんは光り始めた。
「今度はなんだ?」
「大丈夫れす、契約というのは召喚主の血液を召喚獣が、召喚獣の血液を召喚主が摂取し、混じり合わせる事によって互いが契約を認めあったということになるんです」
そう言いながらコクリと血を飲み込む。
「ですので次は、貴方の番ですよ」
躊躇なく竜さんは自分の手首に切れ込みを入れた。痛くないのか心配なんだけど。
血の色は同じ赤、まぁ異世界とて血がめっちゃ虹色とか、そういうのになるわけないよな。なってたら俺、驚いて逃げるもん。
恐る恐る竜さんの手首を持って、そっと舐めてみる。
「ん……ぅ……」
口の中に広がる鉄のような味。そして女の子の血を舐めているという背徳感。
というか、色々とまずいことしてる感がある。これが……罪悪感!?
――ってか、なんつー声出してんですか貴方!
数秒ほど舐めていると、俺の身体も光り出した。
これで契約完了、なのか?それにしてはあんまり実感がないというか……。
と、思っていた矢先、頭の中に竜さんの名前が浮かび上がった。
「ノア……ノア・エルラド?それが君の名前?」
「マナベ……ミナト、素敵な名前ですね」
そう言って微笑んでくれた竜さん、もといノアに、俺はなんだか安心してしまった。
この子無自覚に男を惚れさせてるだろ。笑った姿、すごい可愛いし。
「素敵って言われたのは初めてだなぁ」
「ふふっ!それでは契約成立という事で、私は貴方をミナトさんと、ミナトさんは私をノアと呼んでください」
それはそれでなんか違和感がある、なんというかむず痒い。やっぱ『さん』付けをされるよりも、お姉さんじみてるノアは『くん』呼びの方が嬉しいな。
『ミナトくん』って……うん、やめとこう。趣味を現実に混ぜるのは。
「いや、タメ口にしてくれ!俺最初からタメ口だし、さすがに俺だけがそうなのは……」
「わ、分かりました……では」
「……じゃあこんな……喋り方でもいいかな?この喋り方なら、ミナト君って呼んだ方が良いかもしれないけれど……」
お姉さんです。完璧なお姉さんです!俺が大学時代に読んでたラノベにいた、めちゃくちゃ好きだったお姉さんキャラです、しかも凄く似合ってます。
君付け最高です。ありがとうございます!
こんな子が近所のお姉さんとか幼なじみだったらって、夢を見てしまうほどに似合ってる。
「大丈夫ですっ!!」
心の中でガッツポーズ。
結果、俺の初の魔法は失敗に終わったが、新たにめちゃくちゃ可愛くて、お姉さんな契約竜ができたのであった。
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