07 冒険者の成長
冒険者としてまだまだ駆け出しではあるが、少しずつでも成長を感じている。街中のおつかいから、素材の収集。それに護衛の仕事。時々失敗もあるけれど、着実に成長している。
「アスミーは頑張ってるよ」
今日は一緒にヒューイもいる。私より少しだけ早く冒険者になった先輩だ。知り合いに紹介してくれたり、難しい仕事を一緒にしてくれたり、いい人だ。そしてすごく羨ましい人だ。
今回の仕事は街道の警備だ。街道に最近大きな野生生物がうろついているらしく、街道沿いから追い立てる仕事だ。難しくはないが、油断は出来ない。大きな動物は力だけでも強い。
「そういうヒューイはいいよね」
「何が? 剣は使えるけど、弓は使えないぞ? ……あ、まずい!」
牙の大きな猪が街道の敷石を掘り返そうとしている。慌ててヒューイが走って行く。私も弓を放って威嚇する。猪は弓に驚いたようだが、そばにやってきたヒューイに怒りを見せる。突進しようと後ろ足で土を蹴るとヒューイに向かっていく。危ないと叫ぶところだが、彼はその突進を避ける。いや、避けたわけではなく彼の周りに潜む風が猪の軌道をずらしたのだ。
「お、ギリギリ。……よ、い、しょおおおぉ!」
ヒューイは剣を猪の鼻面に当て、街道から追い立てる。
私も弓で加勢する。これで暫くは寄ってこないだろう。
「これで依頼は完了だな」
「そうだね」
私はヒューイの方に歩いて行く。彼の周囲に風はない。だけれども何度も一緒に仕事をするうちに気がついた。彼に致命傷になるような攻撃は当たらない。少なくとも物理攻撃は当たりづらい。
風の灯り亭が彼の実家なのは有名だ。そしてその一族が風竜様の加護を得ていることも。本人はまったく理解していないが、この街に住むかの一族は皆守られている。
その加護が羨ましい。
でもそれ以上に風竜様を心から敬っているヒューイが羨ましい。
私にはそんな存在はいない。
「帰りに飯でも食っていこうぜ」
「うん。いいよ」
ただ妬みはない。
私にとっていい人で、羨ましいが、それ以上に尊敬できる人なのだ。
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