第7話 女王と蒸し風呂
新都。
女王ブリジットのために作られた入浴施設には
建物の中央にある
ブリジットはこの
「……それで怒ったソニアがベラに
すぐ
「今はあんなに仲がいいのに、ベラさんとソニアさんは子供の頃にそんなにケンカしていたんですか?」
目を丸くしてそう言うボルドにブリジットは快活に笑って言った。
「ケンカなら今だってするさ。だいたいベラがあの調子でからかって、怒ったソニアがムスッとして
そう言って友のことを語るブリジットの顔は友愛に満ちていて、ボルドはそんな彼女の顔を見るのが好きだった。
やがてブリジットは、ボルドが
「そろそろ出るか」
そう言う彼女に従って
ブリジットは外に用意されている
ボルドも同じようにして水風呂に足を入れるが、
ボルドは水風呂が苦手で、どうしても全身を
そんな彼を見てブリジットは優しく
「無理しなくていい」
彼女の言葉に甘えて、ボルドは水風呂の
そんな彼の姿を愛おしそうに見つめながら、ブリジットは先ほどの話の続きを口にする。
「何にしろ2人とも生き延びてくれて良かった。さすがに危なかったからな」
南ダニア軍を迎え撃った新都攻防戦ではベラもソニアも
だが2人とも生き延びて今はこの新都での日々を
ボルドにとっても彼女たちは大切な友人だ。
「はい。お2人には長生きしてほしいです」
そう言ったボルドは、ふいに胸の奥に言い表せぬ重い不安を感じた。
彼が一番長生きしてほしいのは目の前にいるブリジットだ。
だがブリジットは代々短命の家系であり、歴代のブリジットたちも40歳を少し越えたところでこの世を去っていた。
異常筋力で人間離れした力を見せる彼女たちは、その反動で40歳を迎える辺りで急激に体が弱ってしまう。
その運命からは逃れられないのだ。
もちろん命に限りがある以上、愛する者との今生の別れは誰にでも必ず訪れる。
だがボルドの場合はそれが他の人より早く来るのだ。
そんなボルドの不安をその表情から読み取ったブリジットは立ち上がると、ボルドの
「ボルド。おまえにはアタシを
「ブリジット……私も共に
そう言うボルドの肩をブリジットは抱き寄せた。
水風呂で冷えた彼女の体がヒヤリと冷たい。
「いいや。おまえは生きてアタシたちの間に生まれて来るであろう子供たちを見守ってやってくれ。それに……」
そう言うとブリジットはボルドの目をじっと
「おまえは生きてアタシのことを覚えていてくれ。こうして愛し合った日々のことを。そうしている間は、アタシたちの記憶は消えないだろう?」
ブリジットの言葉にボルドは
彼女の言う通りだと思った。
彼女を愛した記憶を自分がこの頭に留めている間は、2人の愛は消えはしない。
そんな風に思えてボルドは心が少しだけ温まったように感じた。
「分かりませんよ。もしかしたらサッサと他の誰かと再婚してしまうかも」
「なっ……だ、
そこまで言いかけてブリジットは押し
ボルドがニコニコしているのを見たからだ。
「おまえ……アタシをからかっているな?」
「すみません。しませんよ。誰とも再婚なんて。私の身も心も一生あなただけのものですから」
そう言うボルドの笑顔が
「このまま水風呂に引きずり込んでやる! こいつめ!」
「ひゃっ! 冷たいですから! ご勘弁下さい!」
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