第8話 女王の茶会(前編)
新都を
新都ダニアの街は多少の混乱もありながら、それでも
多忙を極める女王たちだが、オーレリアやウィレミナらで構成される評議会・紅刃血盟会が機能し始めていることにより、女王たちにかかる負担は確実に少なくなっている。
この日、2人の女王は
ブリジットはボルドを
そしてこの茶会の発起人はクローディアの
「ボールドウィン。ごきげんよう」
茶会の席でブリジットを出迎えたクローディアは、その
ボルドも彼女に笑顔を返し、
だがブリジットもクローディアもボルドもわずかに笑顔が固い。
3者間にどこか緊張感が
「ブリジット。共和国からの
「ああ。教えてやってくれ。アーシュラ」
そのまま
アーシュラはボルドの
そして彼にだけ聞こえるような小さな
「もう少し自然にクローディアに接していただけませんか」
彼女の言葉にボルドは思わずギクリとする。
以前にクローディアからの愛の告白を受けて、それを断ったボルドはその後のクローディアとの接し方に苦労していた。
クローディアは以前のように親しく声をかけてくれるものの、やはり彼女もボルドもまったく以前と同じようには振る舞えずにいた。
表面上はにこやかに接してはいても、ボルドは彼女と話す時はどうしても緊張してしまうし、壁のようなものを感じる。
仕方のないことだと頭では理解しつつ、ボルドにはどうすることも出来ずにいた。
「すみません。出来るだけ普通にと心掛けてはいるのですが……」
「あなたが悪いわけではありません。普通の男女ならばあのようなことがあればギクシャクするのは当然のことでしょう。ですが……」
そう言うとアーシュラは茶葉を手に取る。
そしてボルドに
「このままではクローディアもブリジットも
それはまさしく無理難題だったが、ボルドは
アーシュラにこう言われて真剣に考えないわけにはいかない。
「ブリジットとクローディアは普段共同の仕事をする際にはごく自然に笑い合えるようになってきました。時が確実にわだかまりを解決してくれているのです。ですが、やはりあなたを交えて3人で同席すると、どうにも空気が固くなる」
「すみません……。クローディアは普段の御様子はいかがですか?」
「かなり元気になっていらっしゃいますよ。ですが……今も時折、人知れず泣いている時があるようです」
それは主の
「クローディアのことはお気に病まなくても結構。ただ、女王たちのより良き今後の関係性のために力を尽くせるのはボールドウィン。あなたを置いて他にいません。何かあのお2人の心を
アーシュラにそう念押しされ、ボルドは思わず頭の中で必死に思考をこねくり回した。
そんなボルドの目の前で、アーシュラは別の容器に白い粉末を入れ、そこに牛の乳を注いでいく。
そしてそれを熱湯の入った
するとほどなくして乳が白く泡立ち始める。
その様子にボルドは思考を止め、ふと目を見開いた。
「それは?」
「共和国原産の脂肪分の高い牛の乳を泡立てたものです。共和国では茶の上にこうしたものを浮かべ、飲むのが
そう言ってアーシュラが泡立てた乳を茶の上に
それはまるで水面に浮かぶ白い雲のようであり、思わずボルドはその様子に見入った。
そこで彼はあることを思い付いて、テーブルの上に何本が置かれている
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