第17話 独白
――私はもともと良いところのお嬢様だったらしい。
でも、記憶にあるのは黒と赤の世界。
私は、気付いたときにはエリアに巣食うどこかの暗殺部隊にいて、暗殺者として教育されていた。
ほとんど虐待に近く、何度も死にかけたけどなんとか生き残った。
その部隊にいた子供たちで生き残っているのは、私を含めて数人だった。
どこからか連れてこられた子どもたちは、早ければ数日で死んでしまった。
そんなでも連中は気にすることはなく、私は機械のように感情なく訓練をこなしていた。
隊長だけが金が手に入ったとゲラゲラ笑い、すぐ死にやがってと罵倒し、私たちを殴りつけて愉しんでいた。
どうやら私は筋が良かったらしい。
教えられたことをすんなりと覚え、身体能力も優れていた。
おまけに感情を殺すのも上手かった。同じ部隊の連中が任務に失敗して殺されるのを、喜びも悲しみもなく淡々と受け止めた。
とうとう、私の初の任務が訪れた。
私はターゲットのいる地点に向かい……そのときに別の暗殺者と出くわした。
「――お前、どこの部隊だ?」
私が部隊名を告げると、その暗殺者は笑った。
「あの、クズ部隊か。子どもをさらって虐待まがいの教育で暗殺者に仕立てあげ、使い捨てにしている」
吐き捨てるように言うと、私に提案をしてきた。
「手柄を譲ってくれたら、俺のいる部隊に移籍するよう口をきいてやるぞ」
私はその提案に乗り、そのまま引き返した。
「――帰ったのか。早かったな。で、案配は――」
私は酔っぱらってわめく隊長の、喉をかき切った。
待ち合わせの地点に行くと、先ほどの暗殺者が立っていた。
「手際がいいな。それとも、殺せなかったか?」
私は無言でリュックを放り投げた。
暗殺者はしばらくリュックと私を見比べ、用心しながら袋を空ける。
「……確かにしとめたのを確認した」
中身は、隊長の生首だ。証拠に持ってきたのだ。
暗殺者は、私を見ると、ちょっとため息をついたようだ。
「手際と度胸がいいのはわかった。だが、それだけじゃダメだ。怪しまれたらそれで終わりだ。使い捨てになりたくなけりゃ、周囲に溶け込めるような人間を演じられるようになれ」
と、説教してきた。
つまり、教育が足りないのか。あの隊長は私たちを消耗品だと思っていたからそういう教育しか受けさせなかったんだろう。
今から行く部隊がどういうものだかわからないけれど、私には先も後もない。
生きるためにひたすら殺す。生きている間、きっと私は誰かを殺し続けるのだろう。
――そして月日は過ぎ、再教育をされた私は移籍した暗殺部隊でのし上がっていた。
確かにこの部隊は、教育の質が良いらしい。適性があったら惜しまずに教育を受けさせてもらえた。その暗殺部隊の中では三番目の地位についたのだった。
「依頼だ。セントラルに潜入し、コイツを暗殺しろ」
隊長が依頼データを送ってきた。
「セントラルへの潜入じゃ、強さよりも溶け込めるかどうかが問題になるだろう。情報戦の得意なお前が最適だと判断した。期限の指定はないのでゆっくりでいい。セントラルじゃ勝手が違うからな。念入りに準備して、用意周到で挑め」
私は聞きながらデータを閲覧する。そして、ある箇所で止まった。
「――もしかして、コレなの?」
そこには、オドオドした黒髪の少年が写っていた。
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