第15話 チーム対戦 中編

『戦闘開始』

 開始の合図とともに瓦礫から一斉に飛び出した。

 その一瞬後、先ほどまでいた場所に爆発魔術が飛んできたんだけど!?

 僕は、同じ方向に飛び出して一緒に瓦礫に隠れた隊長に思わず叫んでしまった。

「は、早すぎないですか!?」

 爆発魔術は詠唱に時間がかかるはずだ。

 開始とともに攻撃なんてあり得ないんだけど、どうして!?

「想定内だ」

 隊長が軽く答える。……つまり、これも不正の一種なんですねわかります。


 僕と隊長以外の三人は、さほど遠くはない瓦礫にそれぞれいる。隊長は足が速くないって言ってたし、迎撃を得意とするって言ってたし……。

 もしかして……これって、僕が隊長を守るってことになるのかな?

 そう考えてたら、

『……クロウに万が一のことがあったら、チームから外すからね』

 と、地を這うような声が通信から聴こえてきたんだけど……。

 言ってきた人があのいつもにこやかなジェシカ・エメラルドさんだったので戦慄した。どんだけ隊長のことが好きなの!?

 僕はコクコクとうなずくしかなかった。


 僕がジェシカさんの脅迫に慄いていると、肩をトントン、と叩かれた。慌ててそちらを見ると、隊長がじっと僕を見つめていた。

「今日の相手はチーム対戦第二位だ。教官のえこひいきも加えるとなかなかに強くなるので心してくれ」

「は、はい!」

 僕は気を引き締めた。

 一度も戦ったことのないアンノウンはともかく、対人戦であまり遅れをとるわけにはいかない。

 少なくとも、このチームにいるだけの実力を示さなくては。

『ジェシカとリバーは敵チームに攻撃をかけてくれ。キースは待機後、敵チーム陣地に向かってくれ』

『『『ラジャー』』』

 指令を出すと、隊長は僕を見据えて言った。

「君は私と行動を共にしてくれ」

 護衛ってことだろうな。僕が曖昧にうなずこうとしたら、隊長がさらに続けた。

「他の皆は、私が攻撃を受けるのを異常に嫌がるので、君が私についていることで、敵への牽制と味方への安心につながるのだ」

 ……なるほど。さっきジェシカ・エメラルドさんに脅されたのってそういうことか。

 でも、あれだけ心配しているジェシカ・エメラルドさんなんだから、僕がついていたって安心はしていないと思うけど……。

 でも、それで負けたら僕のせいになりそうなので、

「ぜったいに守ります!」

 と、言い切った。


 様子をうかがうと、ジェシカ・エメラルドさんとリバー・グリフィン君は敵と対戦している。

 相手は三人だ。

 さすがというか……。二人とも。まったくと言っていいほど攻撃が当たらない。


 僕は、隊長の指示に従って、隊長を抱えてあちこち移動している。

 隊長はものすごく軽いので、片手で抱えて運べてしまう。

 空いた片手に武器を持ち、たまに飛んでくる飛来物を叩き落とす。

 隊長の指示は的確で、移動した直後に今までいた地点が攻撃されている。

『こちらキース。目標に近づきつつある』

「そのまま静かに接近してくれ。だが、無理はしなくていい」

 どうやらキース・カールトン君はあちこちに移動しつつ、相手の魔術師が隠れているであろう瓦礫に近づいているようだった。

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