第14話 チーム対戦 前編
僕が小隊室に入ると、すでにみんな集まっていて、とても気合いが入っていた。あ、隊長以外ね。
どうしたんだろうと思っていると、リバー・グリフィン君が僕の前に仁王立ちして、怖い顔をして僕を見下ろした。
「いいか、今日の演習は対人戦だ。相手はお前に変われッつったヤツのいるチームだ。なら、わかるよな?」
えっ……「わかるよな」って言われたって……。
戸惑っていると、隊長がリバー・グリフィン君を手で制する。
「気にしなくていい。だから、君の思うままに全力で戦ってほしい。サポートするので、君はしてほしいことがあったら言ってくれ」
僕はわけがわからないままうなずいた。
対人戦の訓練にもいろいろなパターンがあって、今回はチーム同士の対人戦だそうだ。
他には、四、五チームで砦を攻防するパターンもあるし、一人一人戦うパターンもあるとのこと。
ちなみに、どれでも全勝しているとのことです。
足を引っ張る気しかしない僕だけど、やるしかない。これだけ気合いが入っているのにミスしたら、チームを追い出される気がする。
アッシュ・ウェスタンス教官がやってきて、青ざめている僕を見ると苦笑した。
「普通でいいから。ただ、隊長の言うことは聞いてね。それが一番重要」
……みんな、『隊長の言うことを聞け』って言うなぁ。確かにそうなんだろうけど……。
ヘッドギアを装着してVR練習場にダイブすると、そこは廃墟の部屋だった。
キョロキョロしていると、
「マップを送る」
と、隊長がお決まりのセリフを言った。
なんでも、事前に送られてくるマップは陥れる気満載の偽りだらけだそうでして……。
マップを見ると、広い部屋の中のようだ。周囲が瓦礫と壁に阻まれているので、外には出られない。
あちらこちらに瓦礫があり、僕たちは大きな瓦礫のある地点にいて、反対側の瓦礫には敵チームがいる。
僕はマップを見ながら考え込んだ。
「が、瓦礫は破壊出来ないんですか?」
僕が尋ねると、隊長が答えてくれた。
「いい質問だ。VRの性質上、それ以上のマップが存在しないオブジェクトは破壊出来ない。だが、他のオブジェクトは破壊出来る」
なるほど。
「ただし、敵チームが盾にしているオブジェクトは、強化されていて壊せない」
「へ!?」
おかしなこと言ってるんですけど?
「そ、それって魔術でやってるん……あ、そうか」
違った。嫌がらせの主犯は教官だった。つまり、相手チームの魔術とかじゃなく、教官がVRを操作してやっているんだ。
「あ、あの……。そのことについてアッシュ・ウェスタンス教官は何も言わないんですか?」
証拠がない、とかなのかな。でも、それにしたってあまりにも不自然極まりないと思うんだけど……。
「多少のハンデはつきものだ。その程度で負けはしない」
隊長は軽く言ってのけた。さ、さすがというか、見た目は幼女だけど貫禄がある。
隊長は僕を見すえて言った。
「必要なときはこちらから指示を出す。返事は要らないが指示通りに動いてくれ」
「は……はい」
…………僕は団体行動をしたことがない。だから、非常に不安だった。
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