第16話 裏切りの代償
清洲会議の二日目の夜、会議場は緊張感で満ちていた。僕は、秀吉と勝家の激論を静かに眺めていた。勝家は信孝を推し、秀吉は三法師を推していた。僕は、三法師を後見する体制を提案していた。この三つ巴の議論は、遠くで鳴る雷のように、重々しく響いていた。
勝家の言葉には情熱があり、「信孝こそが、信長様の意志を継ぐにふさわしい。我々は彼を支えるべきだ」と力強く主張していた。
秀吉は巧みに言葉を紡いでいた。「三法師様が織田家を継ぐのが自然だ。私が彼らの側で支える。これが最も適切な策だろう」と。
僕は、夜空を見上げながら、二人の言葉を反芻していた。勝家の言葉には情熱があり、秀吉の提案には計算がある。しかし、どちらも僕にとっては遠い話だ。僕は静かに自分の立場を語った。「三法師様が織田家を継ぐことは賛成だが、彼らはまだ若い。我々宿老が後見し、彼らを支えるべきだ」と。
僕の言葉は、会議場に静かながら重い影を落とした。僕は、秀吉と勝家の言葉の背後にある野望や計算を感じ取りながら、冷静に自分の立場を維持していた。しかし、僕の言葉は誰に向けたものだったのか。僕には彼らのように語気を強める意欲もなかった。今更わかりきったことだが、やはり僕は戦国武将には向いていないのかもしれない。
2日目の会議が終わり、僕はひとり庭を歩いていた。「この三つ巴の議論は、ただの表面的なものに過ぎない。真の戦いは、もっと奥深いところで行われている」と考えながら、次の一手を練り始めた。夜空に浮かぶ星々のように、僕の思考は静かで、しかし確実に未来への道を照らしていた。
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