第15話 波紋

清洲会議はすでに二日目の夕方。僕は決断を下していた。秀吉の提案に対して、僕は自分なりの代案を持ち出した。それは、三法師が織田家の家督を継ぎ、叔父の織田信雄と信孝が後見人となるというものだった。さらに、傅役として堀秀政が付き、この体制を執権として羽柴秀吉、柴田勝家、丹羽長秀、池田恒興の4重臣が補佐するという構想だった。


僕は会議場で静かに、しかし確固たる意志でその提案を述べた。「三法師様が織田家を継ぐ。信雄と信孝が後見し、秀政が傅役となる。そして、秀吉、勝家、恒興と私がその補佐をする。これが最善の策だと考えます。ただし、僕自身は、できれば隠居して、この乱世から離れたい。」


僕の提案は、会議場に衝撃を与えた。秀吉の提案を採用しつつも、運営方法では一線を画し、新たな体制を提示したことで、他の武将たちは驚き、そして深く考え込んだ。


「長秀、お前はなぜ隠居を望む?」勝家が問いかけた。


「この乱世はもう十分だ。私には自分の時間がもっと必要だ。」僕はそう答えたが、心の中では他の武将たちの反応を慎重に観察していた。


僕の提案は、新たな権力構造を示唆していた。それは、秀吉の野心を抑え、勝家や他の武将たちにも一定の役割を与えるものだった。そして、僕自身は表舞台から退くことで、背後でより自由に動けるようになる。


会議場の中では、僕の提案を巡って新たな議論が交わされた。僕はその議論を静かに見守りながら、次の一手を練っていた。僕の心は、普段と変わらぬ無感動さで、しかし確実に次の一手を計画していた。

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