第6話 私の鷹はパイロット



 誰かがケンカをしていた。

 取っ組み合いや殴り合いではない。

 大きな声で攻撃的に。そこに和解や相互理解の意思は一切なく、ただただ向こうを踏みつけたいだけの、聞くに堪えない雑音。

 そういった類のやつだ。


「だから! なんでお前がここにいるんだって聞いてるんすよ、マリアンジェラ先輩!?」

「何度も同じことを言わせないで。バカなのお前?」


 それ。それだよ。

 そこで『バカ』とかいっちゃうのが、もう最高にあれ。


「そうやってバカにするなら、ちゃんと賢くやってくださいよ先輩。バレバレじゃないすか、お前がノエミを使い捨てにする気満々だって」

「あら。どうしてお前にそんなことがわかるの? 思い込みが激しいタイプのバカなのね」

「やっぱお前脳みそ腐ってんのな。普段あんだけ好き勝手いっといて、ピンチになったら都合よくお友達とか、バカはお前だクソバカ」


 いやいや、ピンチになっても団結できないどっかの霊長類に比べたら、随分とマシじゃないかな。


「お互い様でしょ、そんなの。ノエミだって同じようなものでしょうに」

「あ、なあんだ。ちゃんと理解はしてるんすねマリアンジェラ大先輩。こっち2人。お前1人。だからお前は今からここで頭割られるって」

「ね、マナナ。こんなこといっててもしょうがないよ。殺すならさ、さっさと殺そ? 殺らないなら、いい加減、話進めよ?」


 うーん。1番大人しそうな感じの『ノエミ』がこの発言。

 やっぱこいつら、まともな奴らじゃないよなあ。


「その通りよクソバカ。こうしてぐだぐだ話している時点で、お前だってわかっているはずよ。ここでわたくしをどうにかしたところで、何もプラスなんてないわ。生き死にの話をするなら、そもそもお前、どうして生きているのよ? バカじゃないの?」

 これがマリアンジェラ大先輩。

 きっと彼女は、煽らなければ死んでしまう病に侵されている。たぶん末期のどうしようもないやつ。


「は? お前の頭カチ割る為だよ、大先輩」

 このろくでなしがブルースしてるのがマナナ。

 きっと彼女は、マリアンジェラ大先輩をガチで嫌っている。信用も信頼もゼロ。どうにも敵と認識しているっぽい。


 この2人が何やらいがみ合う声でおれは目が覚めた。


 ……が、咄嗟の判断で、目蓋は閉じたままをキープした。

 もしおれが起きたとバレたら、興奮状態にある2人の関心が一気におれへと集中する。

 そんなの、絶対にロクなことにはならない。

 だったら寝たふりをしたままクールダウンを待ちつつ情報収集。これ一択だ。


「あのね2人とも。それキリがないから、話進めるね? マナナは今までどうしてたの? 本当に死んじゃったと思ってた。だから最初にみつけた時、幽霊だって思ったんだよ?」


 場が鎮まり、進む。


「スカウトされたんだよ、A&Jに。今の暮らしから抜け出したくないか、って。それを受ける条件に、ノエミとバンビもA&Jで雇ってもらえる様に話つけて、迎えに来た」

「……あのねマナナ、バンビは」

「会ったよ。お別れをいって、とりあえずベッドに寝かせといた。やったのはグリゼルダ?」

「……うん。なんか『ボクがママがイシ邪魔するなー』とかわけわかんないこといって」


 4人目。グリゼルダ。だぶん2人の仲間のバンビって娘を殺害。


「遺志もなにも、魔女ローゼガルド様が死んだことによる、ただの連鎖反応に過ぎないというのにねえ。神格化の弊害って、根っこが消えても残り続けるのが嫌ね」

「マリアンジェラお前、そんなこというヤツだった?」

「死んだ上役のご機嫌取りなど、ムダではなくって? わたくしたち特別行動隊が忠誠を誓っていたのは、あの御方が誰よりも強かったから。死んでしまえば、その大前提は崩れ去るの。それでも死肉に頭を垂れる狂人は、グリゼルダぐらいじゃないかしら」


 ……これ、くっそやばくね?

 ローゼガルドに忠誠を誓っていたらしい『特別行動隊』の皆さん。

 たぶんこの3人はそのメンバーで、なぜかボスの死を知っている。

 やったのは誰だ!

 おれだ!

 成敗!


 ……とりあえず、落ち着こう。


「じゃあ、なんでお前は『ウチの新人』をかっさらった? なにがしたい?」

 ……ん?

「当然、生き残る為ですわ。わたくしと、チームメイトのノエミが」

「具体的には?」

「欲張りすぎよ。そっちも答えなさい。どうしてお前は生きているの?」

「……お前なぁ、死んでりゃよかったって、まだそんな」

「話を逸らさないで。どうしてお前は、行方不明から10日以上経っているのに『弾け飛んで』いないの? 見たのでしょう? 本館で、弾け飛んでいた皆の死体を。魔女ローゼガルド様が全隊員に仕掛けていた、あの恐ろしい仕込みを」


 弾け飛んだ死体。恐ろしい仕込み。部下全員に。

 ……首輪爆弾的なやつか。


「例外などありえない。マナナ、当然お前にも『あれ』は仕掛けられているわ。魔女ローゼガルド様の御機嫌ひとつで腰から上が爆散する、あの隊長でさえ一切の抵抗ができなかった、即死の爆弾が」

「ま、それは私もマリアンジェラも一緒なんだけどね」

「ノエミ。話の腰を折らないでくださる?」

「はあい。あっち行ってるね」


 そう返事して、軽い足音がこちらへと近づいて来る。


 いやこっち来んなよ、もっと白熱してじゃんじゃん情報吐き出せよ、というおれの願いも虚しく、ノエミはおれのすぐ側に腰を下ろした。


「あの魔女ローゼガルド様が、行方不明から10日経ったお前を爆破しない理由があると思う? 断言してあげる。ないわ。逃亡なら始末をつける必要があって、戦死なら身元の確認を不可能にする。やらない理由がないの。けどお前は弾け飛んでいない。いい? これはわたくし『たち』にとってとても重要なことなの。だから心して答えなさい。どうしてお前は死んで――いいえ、弾け飛んでいないの?」


 よし、良い感じに盛り上がってきた。なんならおれも先が気になる。

 つまり今なら、誰もおれなんかに注目していない。

 チャンスだ。

 横向きに寝転がったままおれは、そっと薄目を開けた。



 鼻と鼻がくっつきそうな至近距離に、誰かの顔があった。



 心底びびったおれの目は反射で全開になり、ばちっと眼が合う。目の下の深いクマが不健康かつ病的な印象を与える、なんかメンタルに問題を抱えていそうな高校生ぐらいの女の子。

 向こうも同じく横向きに寝転がっており、ただただじいっとこちらを見つめていた。


 おそらく、彼女が『ノエミ』だ。


 とりあえずおれは、指を立てた。

 人差し指をぴんと立て、そのままゆっくりと唇の真ん中にもってくる。

 お静かに。というジェスチャー。

 前にこれをやったヒルデガルドには、なぜか黒杭をぶち込まれたが……きっとあれは例外だ。

 たとえ初見でも、なんとなく意味は伝わる筈。


 1秒。2秒。3秒が過ぎて、ノエミはにっこりと笑った。


 どこか病的な目元さえどうにかすれば、きっと可愛いと形容される笑顔だったに違いない。



「……さっき本館で皆の遺体を見るまで、わたしは『爆弾』の存在なんて知らなかった。だからわたしには、対処のしようなんてなかった」

「ふうん。ならお前をスカウトしたA&Jになるわね。けどそうなると、なぜ連中に魔女ローゼガルド様の術をどうにかできる程の力があるのか、とても不思議ね」


 視線だけで周囲を探る。ヨランダは見当たらない。同じ落下地点にはいたので、おれだけが連れて来られたとみるべきか。


「A&Jって組織は決して無能の集まりじゃない。現場の細かい所までは知らないけど、管理側は頭の良いヤツばかりだった。意味もなくリスクを撒き散らすような真似は絶対にしないと断言できる程度には、まともで合理的な集団だった」


 突然頭上から、はいちょっと失礼しますねーとノエミの囁きが降ってくる。

 返事するより早くおれの頭の下に両手を差し込み、ゆっくりゆっくりと持ち上げていく。

 え、なに? シャンプーでもされるの?

 一瞬、死ぬ気で抵抗しようか迷ったが……とりあえずのってみることにした。


「そんな組織が、おそらくは最高機密であろう極秘の存在や事柄を、この半日だけで3つもわたしに教えた。入って2週間の、元特別行動隊魔女の犬の、信頼も信用も何もないこのわたしに。ちょっと口頭で口止めする以外は何もせず、最高幹部2人の同意の下で」

「ふうん。試しにどんな機密なのか、話してみなさいよ」

「だったらマリアンジェラも、そこのはしご上って2階に行ってみてよ」


 2人は黙った。

 頭の下にノエミの足が挟み込まれ、おれは膝枕された。


 正直ノエミの行動は意味不明だったが、ここだと思った。

 頭の位置を微調整するフリをしてそのまま、ずるり、と横へ滑り落ちようとして――できなかった。ステルス子機影分身が出ない。

 あれっ? と思い反射的に周囲を見渡すも、闇に反射した先が見えるといった超視界も機能せず、ごく普通に見える範囲が見えるだけだった。


 隙間だらけのくせして無駄に広く天井の高い掘っ立て小屋。差し込む日の光。ロフトと呼ぶには余りにもお粗末な2階部分。対峙する2人。

 ひとりは全身黒ずくめの忍者か黒子みたいな格好をした20代後半ぐらいの女。

 もうひとりは黒いパンツに白シャツの、サーファーギャルが起業して社長になった感のあるギリ10代っぽい気の強そうな女の子。


「わたしが本館に行った時は、3階の物置部屋の窓を割って館内に入った。まだ『爆弾』のことなんか知らなかったから」


 やっぱりこっちの若社長がマナナだ。


「いや、ぐだぐだいうより、見せたほうが早いか」


 いってマナナは粗末なはしごに飛びつき「駄目マナナ止めて!」ノエミの制止の声には構わず、さっと2階部分へ上った。

 急に頭上で大声を出されたおれは、人知れずびくっとしていた。


「どう? マリアンジェラ。2階部分ここの高さは、ダフネが弾け飛んでた階段の踊り場よりは高いでしょ。それでもわたしは弾け飛んでいない」

「ええ、そうね」

「確認するけど、お前とノエミは今でも『あの階段の踊り場』よりも上へあがると弾け飛ぶ。実際にはわからないけど、少なくとも、そう仮定して行動してる」

「あら、どうしてそう思うの?」

「あの魔女ローゼガルド様最後の一手だぞ? 絶対に諦めずどこまでも追ってくるに決まってる。タイミングがずれたからセーフ、なんてぬるいオチで済むワケがない。おそらくは最強の呪詛だ。100年は残り続けるとみていい」


 へえ。じゃあ最悪の場合、上の方へ逃げれば2人は追って来れないのか。


「……そういった『呪』の類ではなく、もっとシンプルな仕組みよ」

「聞かせろ。お前はともかく、ノエミを死なせるワケにはいかない」

「随分と偉そうね? 直に現場を検分しておきながら、この程度もわからない分際で」

「随分と偉そうだな? 2階にすら上がれない、3歳児未満の分際で」


 2階部分から飛び降りたマナナが、マリアンジェラのすぐそばに着地する。やんのかこらやったんぞ、みたいな空気が充満する。なんか普通に殴り合いが始まりそう。つうかお前ら、無限ループ入ってね?


「はいはいそーいうのはもういいから! 私とマリアンジェラはどうにかグリゼルダから逃げ切りました! で、それからどうしたのかな?」


 ノエミが強引に話を進める。

 たぶん、おれに聞かせる為に。


「……グリゼルダを撒いたあと、あらためてノエミの鷹にいくつかサンプルを回収させた結果、わたくしたちに仕掛けられた『これ』の大まかな特性は把握できたわ」


 何気に凄いなマリアンジェラ先輩。


「マリアンジェラはね、研究室にも出入りできるしナントカ流って拳法もできる、性格以外は駄目なところがないデキる女なんだよ」

 そう小声で吹き込んでくるノエミも、あまりマリアンジェラ大先輩のことは好きではないようだった。


「基本的に『これ』は、相手を内部から破壊する一攻撃手段でしかなかったの。問答無用で一撃必殺な代わりに、色々と条件が厳しいタイプのやつね。それを魔女ローゼガルド様からの『供給』で強引にせき止めていた、というのが爆弾の正体よ」

「……供給って、なにそれ?」

「詳細は不明。一切探知できず、距離の概念を飛び越える性質をもった『なにか』としかいいようがないわ」


 たぶんそれ『闇』関連の何かだな。

 ヒルデガルドの口ぶりから、ローゼガルドも無制限に使えてたっぽいし。

 つーか、そんなこともできるのか闇技術。

 いや、できてしまうというべきか。


「重要なのは供給を止めれば本来の機能を取り戻す、という点よ。任意の爆破はこれね。当然、魔女ローゼガルド様が死んでも供給は止まり、これまた同じく本来の機能が発揮される」

「本来の機能――ある一定の高さ以上になればドカンと爆発。仕掛けられた者は即死」

「まさに王の血統にのみ許された暴虐。腹が立つ程に強力だわ」


 良い感じに一段落ついた。

 いがみ合っていた2人は少しだけ冷静になり、おれと話をする余裕が生ま、


「ところでマナナ。わたくし、お前がA&Jから教えられたという最高機密の1つがわかったのだけど、何か体調に変化は? 喉や腹部に圧迫感や膨張感は? それとも、この程度ではセーフなのかしら?」

「は?」

「だって可能性はひとつしかないじゃない。王の血統の暴虐を捻じ曲げる、あるいは上書きするなんて真似ができるのは、同種の存在以外にはあり得ない。つまりA&Jの創始者一族は王の血統、となるわよね。これが、お前が教えられた機密の1つではなくて?」



 ――まじか、こいつ。



 正直、どこかでナメてた。

 なんだかんだいいつつも、同じチームのメンバーなんだろ、みたいな意識がおれにはあった。


 ここまでの流れからすると、機密情報を洩らしたマナナはどうなるか。

 闇技術でつくられた爆弾とやらが、なにやら捻じ曲げられたり上書きされているらしいマナナは、果たしてどうなるのか。


「――うぐ」

 胸元を押さえ、マナナがうずくまる。

「なるほど。本人の自覚がトリガーになるのね。随分と穴だらけな仕様だこと。王の血統とはいえ、やはり所詮は在野に流れた傍流の手遊てすさび、といったところかしら」


「てめえなにやってんだマリアンジェラッ!」


 激怒したノエミがマリアンジェラへと駆け出す。

 膝枕から放り出されたおれは、そのまま床を転がる。


 うずくまるマナナ。一瞬おれと目が合い固まるマリアンジェラ。影がぐにゃりと歪み、おそらくは『鷹』と一緒に突っ込もうとしているノエミ。


 おれからすればこの現状は『ローゼガルドの部下だった特別行動隊とかいう連中が勝手に殺し合いを始めました』でしかない。


 普通に考えるなら『お好きにどうぞ』でお終いだ。


 けど。

 けど何か。

 何かが、引っかかる。

 見落としちゃいけないものをスルーしているような。

 どこかで違和感があったような。



 ――じゃあ、なんでお前は『ウチの新人』をかっさらった?



 これだ。

 マナナがおれのことを『ウチの新人』と呼んだ。

 名乗ってもいない初対面のおれの『どこを見て』そう判断したのか。


 服、しかない。


 ヒルデガルドの親戚で、ヤクザの親分の息子の『ミゲル様』一家の直系か認められたごく一部の者だけしか着用を許されない、このガラ悪縞々ちびっこギャングスーツだ。


 A&J。王の血統。ウチの新人。ミゲルの一派とは協調する必要がある。

 足して引いて、答えがどん。

 A&J=ミゲル様の所。



 ――なんでヤクザがそんなベンチャー企業みたいな名前使ってんだよ! いやよくある手口だけどさあ!



 走る。

 うずくまるマナナに向かって、とにかく全力で走る。

 彼女が弾け飛ぶと同時に、きっとおれの安全な未来も一緒に弾け飛ぶ。


 2人とマリアンジェラは完全に決別した。

 理屈はさっぱりわからないが、とにかくあいつはやりやがった。ごめんで済むレベルは超えた。

 なら残るのはどちらか一方だけ。

 あっさりとあんな真似ふわっと即殺ができるマリアンジェラと2人きりなんて、絶対にごめんだ。

 そもそもヒルデガルド姉さまはすでにミゲル一派A&Jとの協調路線を決めている。

 ならばマナナは未来の仲間であり、向こうの都合としても、おれとは仲良くする必要がある。


 つまりは、こんな状況でやっとみつけた味方だ。

 失うわけにはいかない。


 しかし今は日中。もうすでに日は昇っている。闇はどこかに消えた後。

 当然のように、ステルス子機影分身は出なかった。超視界も機能せず。たぶん『杭』も無理。闇由来のものは全て使えないとみて間違いないだろう。


 なら残る手札は、超存在であるピラミッドさん由来のやつのみ。


 本にしてもしょうがない。そもそもこの場にいる3人は規定値に達していない。

 なら使うべきは。

 飛びつくようにして、うずくまるマナナの背中を叩く。



 ――つまんねーことすんな。ぶっ殺すぞまだ見てない人には決して話さないで下さい



 どこかの誰かが組み上げた、おれにとって気に入らない界を崩す、ピラミッドさんのいう『宵の双葉』とやら。


 走れ、崩せ。


 そこで突然のめまい。

 頭の芯が回って、あちこちから力が抜けて、どうにも上手くいったかどうかがはっきりしない。

 やっぱり日中は、全てのスペックがだだ下がりしているのを実感する。

 かといって「ごめん無理でした」が通用する状況でもないので、とにかくマナナの背中をばしばし叩きまくる。

 いいから! とにかく! やれ!

 そんな、荒いタイプの田舎のおばちゃんみたいな動きを繰り返していると、めまいと脱力感はどんどん悪化していき、さらには寒気と目のかすみも追加。そろそろ本気でやべえぞこれ、と思ったところでマナナが吐いた。

 かなり派手に、そりゃもうなんだかエラい勢いで大変なことになっているが、とにかく上半身が弾け飛んではいないのだ。たぶん上手くいった。いってろ。いってたら嬉しいな。


 マーライオンが「おい、その勢いは危険だぞ」と苦言を呈してきそうなマナナの背中をさすっていると、なんか鈍い音が響き渡った。


 どすっ、とか、ごすっ、とかいう不吉な音の出所を辿ると――ノエミと鷹がマリアンジェラにボコられていた。


 なんというか、勝負になっていなかった。


 ガチの格闘家、対、物係ものがかりの女子高生とでもいえばいいのか。

 一目でわかるレベルで、錬度の桁が違う。

 本気でぶち切れて殺しに行くノエミと同時に上空から襲いかかる鷹。

 実質2対1……ではあるのだが。

 ノエミが逆手に持ったナイフで斬りかかるも、流され、極められ、どすっ。ナイフがからんと落下しつつ『く』の字に折れ曲がったところを両手で掴まれ――俗にいう首相撲だ――膝で顔面をごすっ。

 ムエタイと合気道のいいとこ取りみたいな謎格闘技が、圧倒的暴力の一方通行を実現する。

 鷹も必死に飛び回ったり引っ掻いたり頑張ってはいたのだが、ノエミと同時にいなされ、かわされ、3回目の急降下に合わせて放たれたマリアンジェラの肘で頭部が吹っ飛び、続く裏拳で地に叩きつけられた。

 一瞬ゆるんだ拘束から逃れようとしたノエミはなぜか逆に振り回され、空いたスペースに差し込まれた膝が腹に刺さりどすっ。

 そうしてまた首相撲が始まり、顔面に膝、膝、膝。


 なんというか、マリアンジェラが強過ぎた。

 性悪インテリみたなムーブをかましておいて、さらに殴り合いもいけるとか……まじであの先輩、性格以外はダメなところないんじゃねと思わせるハイスペックっぷりだ。


 しかもあいつ、まだ余裕がある。たぶんノエミに対しては手加減をしている。

 鷹の頭を吹き飛ばした強さで膝や肘をぶちかませば、きっとノエミは即死する。

 けどそれをしないのは決して情や優しさではなく、今後の使い道を考えてのことだろう。


 だとしたらあれは、未来のおれの姿なのかもしれない。

 使い道のある道具という意味では、おれとノエミに大差はない。


 こりゃバテてる場合じゃないと1歩踏み出した足が――マナナのマーライオンで盛大に滑った。そういやおれ裸足だった! ダイレクトかよきっつ! 

 全霊を振り絞り、綺麗な方の床へと倒れる。

 すぐさま気を取り直し起き上がろうとしたが……足腰に力が入らない。立ち上がれない。

 想像の10倍ぐらい、限界かつふらふらだった。


 首相撲で転がされたノエミがそのままマウントを取られる。マリアンジェラが振りかぶって、打ち下ろす。1発、2発、3、4、5――。

 時間がない。おれは起き上がることすらできない。

 なら、この状態でもできることをするしかない。

 確かヨランダがいうには……足す、だったか。

 照れてる余裕もヒマもない。

 ここでやらなきゃ、もうどうしようもなくなる。

 本気でやれ。死力を尽くせ。


 よし。せーの、


 ノエミ頑張れ超頑張れまじで応援してる。おれの未来はノエミにかかってる。なんかおれの方から『足せる』なら全部つっこむから要るだけ持ってけ大丈夫破裂とかしないしさせないからとにかくノエミに全乗せするわ!


 一瞬だけ落ちた。

 額を床にぶつけた痛みで飛び起きる。


 ノエミに乗っかるマリアンジェラの肩に、頭部のない黒い鷹が停まっていた。

 いや、違う。

 あれは停まっているのではない。

 掴んでいるのだ。

 叫ぶ。


「そのまま持ち上げろ! ノエミッ!」


 首なし鷹が羽ばたく。

 マリアンジェラが鷹の足を殴ろうと振り上げた腕にノエミが組みつく。

 一瞬の空白。

 首なし鷹が、かっ飛ぶ。

 ノエミが手を離す。

 成人の重量が、何の抵抗もなく超スピードで天井へと吸い込まれた。

 

 ば、と飛び散る。

 特にこれといって派手な音はしないのが、妙に生々しかった。


 黒ずくめの腰から下だけが、どちゃっと落ちて来る。

 続いて上から降ってくる『雨』とか絶対に浴びたくないと慌てたおれの手に、ちょうど良い感じの布っぽい何かが触れた。

 さっと掴み、全身をすっぽり覆うかたちでカバー。

 熱帯地方のスコールみたくばたばた布地を叩いてくる大粒の何かは意識からシャットアウトする。

 そうして何も降ってくるものがなくなって、ようやくおれは顔を覗かせた。


 室内の惨状はもう笑うしかないレベルの地獄絵図。

 血やら何やらでどろどろのマナナとノエミが、ふらつきながらも上体を起こし、こちらを見た。


 何かいってくるかな、と思ったが2人ともに無言。


 こっちとしては、イエイとハイタッチでもしたい気分なのだが……向こうからすれば『いや結局おまえ何なんだよ?』といった感じか。

 よし。

 実はひっそりと温めていた自己紹介やつがある。

 前に聞いて、これなんかハッタリがきいてていいなパクろう、と密かにストックしていたやつだ。

 それをひとつ、ここでかまそう。

 こういうのは案外、馬鹿にできない。

 

 相変わらず限界ふらふらで立ち上がれないのはどうにも格好がつかないが、そこはまあお互い様だ。

 せめてもの見栄でゆっくりと余裕たっぷりに。

 なんなら薄笑いを浮かべる勢いで。


「初めまして2人とも。わたしはアマリリス。旧王家現当主ヒルデガルドの妹だ。正式にはもっと長い名があるらしいが、墓標以外で使う機会はないので気にしなくていい。わたしにはミドルネームもファミリーネームもなく、書類上の表記では、名のあとに国号が入る。ただ表に出ることはないだろうから、わたしのことはただ『アマリリス』と、そう呼べばいい」


 うん、いいんじゃないか?

 旧王族の一員(仮)だという七光りをびかびかさせる。

 あるものは使う。そこに抵抗はない。

 さあ、国内最強のバックに慄け!


「はいアマリリスさま! ノエミっていいますよろしくお願いします! 質問です! 魔女ローゼガルド様ぶっ殺したのってアマリリスさまですか?」


 あれ? 普通に会話続いちゃったよ。


「トドメを刺したのは親衛隊か使用人の誰かじゃないかな。わたしはほんのちょっと、切欠をつくっただけだよ」


「すごい凄い! それなら呪詛対策もかんぺきだ! ホントなんだ! 本当にあれをやったんだ! すごい! 凄ーい! あは、あははっ! 痛っ、いだだだだ!」


 ノエミのテンションがぶち上がったかと思えば、急に苦しみだした。

 え、なにこの娘こわい。

 おれは慄いた。









※※※









 この掘っ立て小屋は特別行動隊のセーフハウスのひとつらしく、予備の装備に水や食料など必要なものは最低限常備してあった。


「いやーホントあのまま殴り殺されるかとおもったよー」

 顔面青あざだらけの、彼氏にDV受けてる系メンヘラっぽいビジュアルになったノエミが、貯蔵用の飲料水でざぶざぶ顔を洗う。

「あのねノエミ、そもそもマリアンジェラ相手に正面から殴りにいって勝てるわけないだろ? キレるのはいいけど、考えなしはダメだ」


 マナナとの話はあっさりついた。

 ボスであるミゲルもここに来ているのですぐに引き合わせると。

 ただ、色々と酷いことになっている2人には少々時間が必要だった。


「考えはあったよ。タッカーと死ぬ気でやれば、片目ぐらいなら潰せるかなって」

「それ考えっていわないから」


 鷹のタッカー君。

 思ったより愛情のない名前に、ドライな本質をみた。


「なあノエミ、タッカー君、ちゃんとパワーアップした?」

 今おれの目の前にいる、首なし鷹を撫でてみる。

 つやつやふぁっさあ。

 なにこれ凄い。


「したした。ふつーなら、成人の質量を持ち上げるとか絶対にムリだよ。やれっていわれたからノリでやってみたけど、たぶん私が一番びっくりしたんじゃないかな」

 いいね。ちゃんと足せてる。

「他になにか変わったところは?」

「どうやってもタッカーの首が戻らないのと、あとは……え、なにこれ? ちょっとまってね、こうしてそうして……おらっ!」

 首なしタッカー君の影から、ずるりと、同種の黒鷹が出てきた。こっちはちゃんと頭がある。サイズもほぼ同じ。

「うわあ、もう一本ひともと出てきたよ。ちょっとひく」

「ただでもう1つ。お得じゃないか」

「そだね、これはこれでお得だよね。よーしタッカー、新入りに実力をみせてやれ!」

 そうして特に理由のない、タッカー君対新入りのFFファルコンファイトが始まろうとしたが、マナナの「じっとしてろ」という一声で終息した。


「なあマナナ。もしかして傷を治せるやつって珍しいのか?」


 血や泥を落としたノエミの顔に、なにやら薬っぽいものを塗っているのを見たおれは、わざわざそんなことをする理由を聞いてみた。


「はい。衛生兵型メディックは全体の3%ぐらいしかいませんね。基準未満の真似事レベルを合わせても5%とかその辺っすね」

特別行動隊うちにも1人いたけど、弾け飛んじゃったからねー。もったいない」


 ヨランダ、何気にエリートだった。

 ハウザーもプルメリアもさらっとできてたから、ワリと誰でも普通にできるものかと。

 ってそうだ、ヨランダ!


「わたしと同じ場所にもう1人居た筈なんだが、どうなったかわかるか?」

「……おそらく、魔女の巫女の所にいるかと」


 マナナにこれまでの経緯を聞く。

 とりあえずキャッツの皆には、もし次があったならエレクトリカルなパレードは勘弁してねと、できるだけ早く伝えようと思う。

 わざわざ『ここだ! 瀕死だぞ!』とド派手にアピールするのは、余りにもリスキーだ。

 助けてもらっておいて何だが、いうべきはいわねば。


「その魔女の巫女を裏切った3人の男たちはどうした? ここにはいないみたいだけど」

 これには、マリアンジェラと行動を共にしていたノエミが、

「なんかマリアンジェラがさくっと殺っちゃった。箱の操作はマリアンジェラ、実働は向こうって連携はしてたけど、捨て駒だったみたい」


 他人事じゃない。1歩間違えれば、おれも彼らと同じ末路を辿ったかもしれない。


「なんでその3人は裏切って、しかもマリアンジェラとつるんでたんだ?」

「わかんない。爆弾の解析が終わったあと、なんとなくマリアンジェラと一緒に行動してたらあの3人がいてさ、そしたらマリアンジェラが『盟主からの勅令よ』とかいって話しかけて、そっからはこしょこしょ話。教えてくんないの」

「盟主?」

「この旧市街で『盟主』なんて呼ばれるのは『闇の薔薇』って魔術結社のリーダーだけっすから、まずそいつのことかと」


 ああ、スパイとかそういう話か。

 なんつーか、闇精霊とかいっても、やってることはおれの知ってる人間と変わらないよな。

 理解できると喜ぶべきか。

 またそれかと嘲るべきか。


「それで、私たちの爆弾をどうにかするには『あれ』――じゃなくてアマリリスさまが必要だから奪うぞ、っていわれた」

「爆弾を? 具体的には?」

「聞いてない。あの時はもうバンビも死んじゃって、全部どうでもよくなってたから」


 やっぱこいつ、いい感じにメンタルがヘラってやがる。

 このまま下手に刺激しない方向をキープしようとおれは決める。


「……そういえばたしか、共食い工作でマリアンジェラの担当って」

「魔術結社『闇の薔薇』だねー。3人とはその時に知り合ったとかいってたけど、たぶんなんか悪巧みしてたよあれ。というか3人の態度が、完全に上位者に対する部下って感じだったから、あいつ向こうでも地位持ってたっぽいね」


 裏切りと陰謀が渦巻き過ぎててむせる。


 とはいえ、もう本人は弾け飛んだ後だ。

 ならするべきは、これからの話だろう。

 こっちにも、無視できない問題がある。


「えー、式典用の軍服しかないの? こんなの街中で着てたらおかしいじゃん」

「ジャケットは着なきゃいいだろ。あと動くな。固定が緩む」


 今2人は血みどろな服を着替えている。

 特別行動隊とかいう軍隊より過酷そうな所属の彼女らは、おれの10倍はタフだった。

 破裂しかけたり、ガチでボコられたりしたが、もう動ける程度には回復している。

 ちなみにおれは、木箱の上でべちゃっと寝てる。まだ起き上がれそうにない。


「なあマナナ。ひとつ、確認しておきたい」

「はい」

「いいのか? このままA&Jと合流して」


 おれが彼女なら、このまま逃げる。

 謎の王族パワーで秘密を洩らせば破裂する爆弾を仕込んでくるような連中とは、とてもじゃないがやっていけない。


「当然、知らされてなかったんだろ? 機密を洩らせば弾け飛びます、とか」

「それはまあ、はい」

「そういえば私もA&Jに入るんだっけ? せっかく魔女ローゼガルド様がいなくなったのに、またあんな感じになっちゃうの嫌だなー」

「たぶんノエミは大丈夫だと思う。わたしの場合はとにかく大急ぎって感じだったから」

「急いでるからってこっそり爆弾仕込んでくるヤツらとか、信用できない」

「それでも確実に魔女ローゼガルド様やマリアンジェラよりかはマシだよ。実際に見て聞いた。それは間違いない」

「そんなこといって『ミゲルさま』とかいうボス、わざと撒いたくせに。手がかりとか行き先とか、いくらでも知らせる方法はあったのにさ」


 あ、やっぱマナナも不信感あって、すでに行動してたのね。


「……ノエミには先に話しておきたかったんだよ。A&Jって組織は魔女ローゼガルド様と同種のクソだけど、それでもほんのちょっとだけマシで、比べ物にならないぐらい給料は良くて、あてのないわたしたちが生きるには金が必要だって」


 うん、薄々感じてはいたけど、やっぱマナナはまともだな。

 今からみると、最初のおらおらっぷりは敵に対する牽制だとわかる。

 まともで賢くて、がない。

 だからきっと彼女は、己の生活基盤と定めたA&Jの命令ならば、割り切っておれと敵対できるタイプだ。


 勘違いしてはいけない。

 今マナナが友好的なのは、A&Jがそういう方針だからだ。

 私的な情は、お互いに皆無だ。


 だからおれは、特にそれには触れずに取っておく。

 最悪の場合、マナナに対して切れる鬼札。



 今もノエミの中にある爆弾を、崩してあげるよ。



「まーそれはそうなんだけど、ものごとには限度ってのがあるからね? 即死爆弾とかふつーにアウトだからね? もし会っていきなり爆弾どーんとかされたら逃げるからね? もちろんマナナも一緒にだよ?」


 そこでノエミはおれを見て、


「もし逃げるってなったら、アマリリスさま、見逃してくれる?」

「いいよ。こっちはヨランダと合流さえできれば、あとはどうとでもなる。1人や2人どこかに行ったところで、気にしないよ」


 だからヨランダと合流するまでは一緒にいてね、助けてね。

 クソみたいな本音はがっちりガード。なんか良い人っぽいオブラートでぐるぐる巻きだ。


「すみませんアマリリスさま、気にしないでください。こいつ勢いだけで喋るんで、話は半分ぐらいで聞いてもらえれば」

「ええー、私は全部本気だよ」

 いかにも軍服です、みたいな格好に着替えた2人がこちらへやって来る。

「ジャケット着ないんじゃなかった? 悪目立ちしないか、それ」

 なぜか軍帽まで被ってフルセットになっている。

「実はねアマリリスさま。私もマナナもけっこう内側が傷んじゃってて、もうガチな戦闘とかムリなんだよね」


 マリアンジェラにボコられたノエミは数本の肋骨を骨折。

 破裂しかけたマナナは内臓に重大なダメージ。

 そんなワケで2人とも、激しく動くのはきついらしい。

 何ならおれが1番健康まである。


「だからもういっそ、見かけで威圧してはったりバシバシでいくのが1番じゃないかなって」

「今のコンディションでも、ちんぴらの5、6人ぐらいなら問題ありません」

「ならこっそり行った方が良くない?」

 わざわざ目立ってカチ合わんでも。

「それじゃ最悪、ミゲル様も気付かず合流できない可能性があるんすよ。わたしたちだけで魔女の巫女の所に行って上手いこと交渉するとか、ちょっと自信ないっすね」

「あ、けどアマリリスさまならいけるかもだね」

「よし。なるべく派手に目立ちながら行こう」


 魔女の巫女とかいう、どう考えてもかかわっちゃダメなヤツとの絡みは最低限にしたい。

 聞く分にはローゼガルドとは不仲だったらしいが、敵の敵が味方とは限らない。


「ここいらを軍服でうろつくのは第1軍の警邏だけっすから、手を出されることはまずないかと。どんな阿呆でも、ケンカを売ったら終わる相手ぐらいは知ってますから」


 ……まあ、専門家がいけると踏んだのならいけるのだろう。

 おれはべちゃっと寝そべっていた木箱から起き上がり、そこで額に乗せていた冷たく絞ったハンカチがぽろっと落ちた。

 マナナが用意してくれたそれの存在を、すっかり忘れていた。

 つい反射で、落ちようとするハンカチに手を伸ばす。

 反射神経が息をしてないおれの手は空を切る。いや、ちょっとだけかすった。

 腕は2本ある。つまりもう片方の手で、次でばしっと掴む!

 べしっと弾いた。

 ぴょーんとハンカチは飛んで行く。


「え」


 何ともいえないやっちまった感と共に、見当外れの方向へ放物線を描くハンカチを眼で追っていると……不意に、そいつの姿が浮かび上がった。

 おれが寝そべっていた木箱のすぐ隣。

 デザインとしては画一品の、ほぼ同じ大きさと形の木箱が、くっつけるようにして並べられているその上に。


 くすんだ金髪のくせっ毛ショートヘア。

 歳はノエミよりもさらに若い。日本感覚で中3から高1ぐらい。

 ガチな美少女といった感のある、ぱっちりお目々がおれに向かい見開かれている。

 さっきの声はおれじゃない。

 マナナでもノエミでもない。

 彼女だ。


 片膝を抱えるようにして、ずっとそこに座っていたのだろう。

 マリアンジェラと同じ、全身黒ずくめの忍者か黒子みたいな格好。


 同じ服装ということは、同じ集団に属していると考えられる。

 特別行動隊。

 確かもうひとり名前があがっていた。

 マナナとノエミの仲間だった、バンビという娘を殺害した4人目。


 冷え切ったマナナの声が、その答えを教えてくれる。



「――グリゼルダ」



 彼女は、おれのすぐ隣にいた。


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