第8話 勇気を出しましたわ

 ナナリーさんは冷静さを保ちつつも、アメリア嬢に対して毅然とした態度で立ち向かいました。

彼女はエリアンナを守るかのように前に出て、挑発する言葉とは裏腹に、実はわたくしのことを心から心配してくれている様子でした。


「エリちゃんはあなたとは違うのよ! 素直で、誠実で、そして何よりも心が可愛い。外見だけで人を判断するなんて、浅はかね」


 アメリア嬢は頬を手で押さえながら、怒りと驚きで声を震わせました。


「この方の何が可愛いっていうのよ!」


 ナナリーさんとアメリア嬢の睨み合いは、周囲の空気まで凍りつかせるほどの緊張感を帯びていました。わたくしはその二人の間で、怖さと同時に、ナナリーさんに助けられたことへの感謝の気持ちでいっぱいでした。


 しかし、内心では、この争いがエスカレートする前に何とかしなければと焦りを感じていました。

わたくしは勇気を振り絞り、二人の間に割って入りました。


「ナナリーさん、アメリア嬢、どうかこれ以上は……もう十分です! わたくしは皆さんの気持ちが本当にありがたいですが、争いは何も生み出しませんわ」


 わたくしの言葉には、自分でも驚くほどの落ち着きがありました。その穏やかな態度が、少しでも事態を収めることができればと願いながら、わたくしは両者を見つめ続けました。ナナリーさんはわたくしの目を見て、わたくしの意を汲み取り、ゆっくりと後退し始めました。

アメリア嬢も、さすがに場の空気を読み取り、これ以上の言葉は慎むことにしました。


 その日の出来事は、わたくしにとって大きな試練であり、同時に自分の内に秘めた強さを知る機会でもありました。そして何より、わたくしはナナリーさんという心強い友を得たことに、深い感謝の気持ちを抱いていました。


 アメリア嬢は怒り心頭に達していたものの、エドモンド様を引き連れてその場を立ち去りました。彼女の高慢な態度は、彼女が去った後も周囲の空気に影を落としていました。


 ナナリーさんはわたくしの肩に手を置き、優しく慰めながら謝りました。


「エリちゃん、こんなことになってしまってごめんなさいね。わたし、身分とか容姿で人を差別するような人が本当に嫌いなの」


 わたくしはナナリーさんの温かい言葉に心を打たれました。

彼女がわたくしのことを高く評価してくれたことは、わたくしにとってこの上ない喜びでした。


「いえ、ナナリーさん……あなたがわたくしを守ってくれたこと、本当に感謝していますわ! あなたのような友人がいて、わたくしは幸せですわ」


 ナナリーさんの言葉はわたくしに勇気を与え、自分自身をもう少し大切に思うきっかけとなりました。彼女の支えがあれば、わたくしはこれからの困難にも立ち向かっていけると確信しました。


 わたくしたちは手を取り合い、屋敷に戻る道を歩き始めました。ナナリーさんとの友情は、わたくしの心に新しい光を灯してくれたのでした。

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