第57話 社長としての責務(神宮司琴音視点)
《神宮寺琴音視点》
「菜々香を神宮司さんの事務所に所属させるんですか?」
「そうです。そうすれば今回の対応は私の事務所の問題にもなりますので、事務所ぐるみで対応させていただきます」
今回の事件を事務所の問題として訴えれば、菜々香ちゃんの訴訟費用も事務所負担に出来る。
菜々香ちゃんの両親の懐も殆ど痛まないので、渡りに船な提案のはずだがどういう反応をされるだろう。
「もし、その提案を断らせていただくと言ったらどうしますか?」
「その時はそれで構いません。費用の負担は出来ませんが、出来る限り訴訟のお手伝いはさせていただきます」
今の私にはそういうことしか出来ない。出来れば今の話を聞いて菜々香ちゃんの両親の考えが変わってくれることを祈る。
「神宮司さん、貴方は今回の盗撮事件についてどう思ってますか?」
「非常に悲しい事件だと思います。こんなことをした犯人の事を許すことは出来ません」
「そういう話をしているんじゃありません。菜々香がまた同じような被害にあう可能性を考慮してないのかと聞いているんです」
「もちろんその可能性は0ではありません。ただうちの事務所に入れば、そういう問題は極力防げると思います」
「どういうことですか?」
「まずうちの事務所は私がマネージャーをしていて、タレント1人1人をしっかりと管理しています。こちらの資料をご覧ください」
「これは何ですか?」
「私の事務所の概要です。まずはうちの所属タレントの人数を見てもらえればわかりますが、うちの事務所に所属しているタレントは3人しかいません」
「そんなに人数が少ないんですか!?」
「はい。うちのタレントは少ないですが、その分私がしっかりと管理させてもらっています」
正確にいえば私が彼女達の生活を管理していないと何をするかわからないので目を光らせている。
それぐらいあの子達の生活指導をするのは大変だった。
「なるほど。貴方はタレント1人1人の私生活も管理しているんですね」
「私生活全てを管理しているわけではありません。ただこの職業上、今回のような事件に見舞われる可能性もあります。なので最低限の防犯対策はさせてもらっています」
「具体的にはどのような事をしていますか」
「例えば今回の件でいえば、タレントを守るために弁護士と相談してこのような問題を早急に解決出来るように動いています」
「他には何かありますか?」
「私の事務所に併設されている寮の周りには防犯カメラもついています。そこで不審者が見つかれば、すぐ通報出来るような態勢を整えています」
これは私達の事務所には女性が多いということで、防犯上つけたものだ。
これがあるとないとでは雲泥の差が出る。例え不審者がしらを切っても、この映像が証拠となり警察も私達の話を聞いてくれるようになった。
「貴方の事務所に所属すれば、防犯上の安全が確保されるのはわかりました」
「はい」
「でも、この職業は一生続けられないものだと僕は思います。芸能界と同じで10代20代のうちはいいですが、30代40代になると活動が制限されるんじゃないですか?」
「もちろんその可能性もあります。なのでウチの事務所では高校卒業後そのまま働くのではなく、大学へ行くことも推奨しています」
「御社のタレントが大学に行った実績はあるんですか?」
「あります。現在3人のタレントが所属していますが2人は大学に通いながら、この活動を続けています。もう1人今年高校3年生の子がいますが、その子も大学に進学する予定です」
「神宮司さんの所のタレントさんは計画的に物事を進めているんですね」
「将来の選択肢は多い方がいいですからね。大学を卒業した後もこの活動をしてくれるかわかりませんが、色々な選択肢がある中でこの活動を継続してくれれば私としては嬉しいです」
それが私の願いでもある。大学4年生になったら今後の進路についてヒアリングをするつもりではいるけど、もしこの活動を辞めるとしてもその人が決めた事なのだから快く送り出そうと思っている。
「なるほど。貴方はタレント1人1人の未来もしっかり考えているんですね」
「もちろんです。これも少数精鋭だからこそ、出来ることだと思っています」
そうでなかったらここまで個人に対して干渉できないだろう。
少数精鋭だからこそ、タレント1人1人に対してここまで手厚いフォローが出来ると思っている。
「今菜々香さんが個人で活動をしていることは知っています。私の事務所に入ることで活動に制限がかかることがあるかもしれませんが、今までよりも安全な環境で活動できると思います」
「そこまで言われたら、私達から言えることはありません」
「それでは‥‥‥」
「ただおたくの事務所に入るには菜々香の意志も確認しないと‥‥‥‥‥菜々香は神宮司さんの事務所に入りたいか?」
「うん! もしVTuber活動が出来るなら、琴音さんの所でお世話になりたい!」
「わかりました。そしたら我々はこの件を承諾します」
よかった。菜々香ちゃんの両親を説得出来て。これで一安心だ。
正直途中から菜々香ちゃんを所属させるのは難しいかもしれないと思っていたけど、無事彼女が私の事務所に所属することが決定してよかった。
「そしたら会社概要や契約の内容について、これから詳しくご説明させていただきます」
「はい」
「もしご両親が事務所見学を希望されるのならばいつでも案内しますので、空いている日を教えてください」
それから私は菜々香ちゃんの契約について、ご両親を交えて話を詰めていく。
後日菜々香ちゃんの両親を事務所に案内した後、無事両親の許可を取ることに成功した。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。これにて番外編は終了です。
2章は学園から少し離れ、琴音の事務所に舞台を移します。
初めて事務所に所属した菜々香とそのサポートをしている斗真の身にどんなことが起きるのか、次話の投稿を楽しみにしていてください。
2章は明日の7時に投稿しますので、よろしくお願いします。
最後になりますがこの作品がもっと見たいと思ってくれた方は、ぜひ作品のフォローや応援、★レビューをよろしくお願いします。
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