2章 忘れられないひと夏の思い出
第58話 どうしてこうなった
「いてててて‥‥‥‥‥」
「ななちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫! あたしの事を受け止めてくれてありがとう、斗真君」
「どういたしまして」
ある日の放課後、僕はななちゃんに誘われて彼女の家に遊びに行った。
親が仕事でいないから自分の家で遊ぼうと誘われ、彼女の家に行ったのが全ての間違いだった。
「(何でこんな事になったんだろう)」
それは僕にもわからない。
今わかることといえば、ななちゃんはベッドの上で倒れている僕を見ながら恥ずかしそうに笑っていることだけだ。
「そういえばあたしが着てるこの衣装って似合ってる? この服はあたしのお気に入りの服なんだけど、可愛いと思わない?」
「うん、そうだね」
青いチャイナ服を着ているななちゃんはものすごく綺麗だ。
ノースリーブだからこそわかる透き通る程綺麗な白い腕にスリットの隙間から垣間見える肉厚で健康的な太もも。それを間近で見て思わず息をのんでしまう。
「(って、今はななちゃんのことをまじまじと観察している場合じゃない!! まずはこの状況を整理しよう)」
ななちゃんの部屋に入った直後彼女はどこかへ行ってしまい、しばらくの間彼女の部屋に1人でいた。
それからしばらくしてななちゃんが部屋に戻って来たと思ったら、部屋に備え付けられていたコンセントに足を引っ掻けて転びそうになった彼女を助けようとして、ベッドの上に押し倒されてしまった。
「(もちろんこれが不可抗力だということはわかっている)」
ただ僕がななちゃんの事を受け止めた影響で、僕と彼女は密着した状態でベッドにいた。
正直この状態はまずい。彼女に密着した影響で体中が火照っていた。
「斗真君、どうしたの? そんなに目線をそらして?」
「何でもないよ!? 気にしないで!?」
僕の事を見下ろす彼女は魅力的だ。まるで本物の2次元のキャラクターが3次元に出てきたようである。
今のななちゃんがあまりにも可愛すぎて、思わず生唾を飲み込んでしまう。コスプレ衣装を着てベッドの上で僕の事を押し倒す彼女を見上げながら、あまりの緊張で体が硬直してしまった。
「斗真君はあたしに気を使わなくていいよ。この衣装が変なら変って、はっきり言ってほしい」
「全然変じゃないよ!? そのコスプレ衣装、ななちゃんにものすごく似合ってる」
「嘘なんてつかなくていいんだよ。さっきからずっと目線を反らしてるし。似合ってないなら似合ってないって、斗真君にははっきり言ってほしい。そうすればあたしも諦めがつくから」
「さっき言った言葉は僕の本心だよ! むしろ今のななちゃんは学校にいる時よりも可愛くて魅力的だ!」
「それならなんであたしから距離を取ろうとするの? 可愛いと思うならもっと近くで感想を言ってよ」
「そうは言われても‥‥‥その格好は男の僕には目の毒だよ」
僕がななちゃんから目を逸らしているのにはちゃんとした理由がある。
それは彼女があまりに過激な服装をしているせいだ。今着ているチャイナ服だって胸の真ん中には丸い穴が開いているだけでなく、両足にスリットがあるせいで彼女の健康的で肉感たっぷりの張りがある太ももがあらわになっている。
「この格闘ゲームのキャラクターが着てる青いチャイナドレス、斗真君は気に入ってくれると思ったんだけどな」
「気に入る気に入らないの話をしてるんじゃなくて、僕は布面積の話をして‥‥‥」
「この衣装が駄目なら、こっちのバニーガールの方がよかったかな?」
「それはもっと駄目だよ!? 布面積が今着ている服よりも少なくて、見えたらいけない所が見えるかもしれないよ!?」
「それは斗真君にとっては役得じゃない?」
「確かにそうかもしれ‥‥‥‥‥じゃなくて!? 異性にそんな軽々しく肌を見せちゃ駄目だよ!?」
「大・丈・夫♡ こんな事をするのは斗真君だけだから。今日はいっぱいサービスしてあげる♡」
「どういうこと!?」
もしかしてななちゃんは僕の事を男だと思ってないの!?
そうだとしたら結構ショックなんだけど、彼女はそんな僕の気持ちを汲み取っていないのか飄々としていた。
「もしバニーガールがお気に召さないなら、こっちのクレオパトラのコスにしようかな」
「そっちも布面積が少な‥‥‥」
「そうだ! 斗真君はあたしにどっちの服を着てほしい?」
「えっ!?」
「だからバニーガールとクレオパトラ、どっちの服を着て欲しいの?」
そんなこと僕に聞かれても答えようがない。
僕の好みでいえば今着ているチャイナコスが1番そそられるから、出来るだけそれをずっと着てもらえるとうれし‥‥‥って、僕は何を考えてるんだ!?
「バニーガールとクレオパトラ、斗真君はどっちが好き?」
「う~~~ん、そうだな‥‥‥」
2つの衣装を見比べながら、何でこんな事になったのか考えてみた。
全ての始まりは数週間前。神倉ナナの炎上騒動がほぼ沈静化し、学校でななちゃんと一緒にお昼ご飯を食べている時まで話を遡る必要がある。
その日の昼休み、昼食を食べるために席から立ちあがるとななちゃんに声をかけられた。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。
続きは明日の7時に投稿します。
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