第18話 初めての友達
「それで僕へのお願いって何なの?」
『お願いの内容だけど、今度あたしと作業通話をしてくれませんか?』
「作業通話って何?」
『その名の通り、自分のやりたい作業をしながら通話するの』
「ナナちゃんは今そんなに忙しいの?」
『忙しくはないよ。ただあたしは配信をする前の週に配信用のサムネを一気に作るタイプだから、通話しながら一緒に作業できる人が欲しかったんだ』
「そんなことをして、リスナーの人達にバレたらまずいんじゃないの?」
『大丈夫大丈夫。配信の裏でやっていることだから、誰もわからないと思うよ』
「そういう問題なの?」
『うん! それにあたしのリスナーの中にガチ恋勢はいないから大丈夫だよ』
「本当? 今日の配信を見ている限り、それっぽい人もいた気がするけど」
『本当だよ!! 現にみんなよくチャット欄で、『俺達に構ってばかりいないで、早く嫁に行った方がいい』って言ってくるんだよ!! まだうら若き乙女なのに、失礼しちゃうよね!!」
そういえば神倉ナナはネットではアラサーの社会人と言われていたんだ。
だからみんなナナちゃんの事を恋愛拗らせアラサー叔母さんだと思っているのだろう。
現に僕も配信前に"授業"という単語を聞くまで、この人が学生だとは思わなかった。
『それにあたし、この前Toma君とチャットをしてて凄く楽しかったんだ』
「えっ!?」
『あんなに楽しくチャット出来る人なんて生まれて初めてだった。だから‥‥‥あたしの友達になってくれませんか?』
こんなに真剣な声色で言われてしまうと僕も困惑してしまう。
正直ナナちゃんの気持ちは僕も痛い程わかる。
この前彼女とチャットをして思ったけど、こんなに相性のいい人と話すのは僕も初めてだった。
だから彼女ともっと話をしたい。その欲求が日に日に大きくなっていった。
「それは‥‥‥その‥‥‥」
『ごめんね、迷惑をかけて。やっぱり今の話、忘れてもらっていいよ』
「全然迷惑じゃないよ!? 僕もこの前ナナちゃんとチャットをしてて凄く楽しかったから、一緒に作業通話をしよう!!」
勢いで言ってしまったけど大丈夫かな? でも、彼女とはものすごく相性がいいので、出来ればもっと話をして仲を深めたい。
「(それになんだかんだいって、今日の配信は楽しかった)」
ナナちゃんには散々振り回されたけど、配信中は僕も彼女との掛け合いを楽しんでいた。
こんなに楽しい時間を共有できるのだから、これからも彼女とは末永く友達として付き合っていけるだろう。そんな確信めいたものが僕にはあった。
『本当!? 嬉しい!! 斗真君はいつ予定が空いてる?』
「平日の夜だったらいつでもいいよ。日中は学校に行ってるから、週末以外作業通話は出来ないと思う」
『平日の夜か。あたしはいつも夜中に配信をしてるから、配信が終わった後でもいい?』
「僕はそれでいいよ。むしろそうしてもらえると助かる」
「じゃあ決まりだね!」
「一応聞いておくけど、ナナちゃんは夜中よりも日中の方が時間的余裕があるの?」
『ないよ。日中はあたしも学校に行ってるから、作業通話をするのは難しいと思う』
「わかった。それならさっきナナちゃんが決めた通り、配信が終わった後の方がいいね。その方がお互いに都合がいいと思う」
これで大体の話はまとまった。いつになるかわからないけど、僕は近いうちにナナちゃんと作業通話をすることになった。
『そしたら斗真君、この後の予定は空いてる?』
「えっ!? 早速今日からするの!?」
『うん‥‥‥ダメかな?』
「ダメじゃないよ!? この後は何も予定が入ってないから、ナナちゃんが満足するまで付き合うよ!」
『よかった! 実はあたし最近遊戯ダムにハマってて、そのアニメをToma君と一緒に見たいと思ってたんだ』
「いいね! 実は僕そのアニメを持ってるから、よかったら一緒に見よう」
『凄い!! あのアニメを全部録画してたんだ!!』
「録画していたわけじゃないよ。あのアニメは面白いからBDを買ったんだよ」
『そうだったんだ』
「うん。実は僕今あのアニメにハマってて、最近はあのアニメに出てくるカードを集めてる」
『えっ!? 斗真君もあのカードゲームをやってるの!?』
「その反応を見ると、もしかしてナナちゃんもあのカードゲームをやってるの?」
『うん! あのアニメにハマって、ついついカードゲームにまで手を出しちゃった!』
話せば話す程ナナちゃんと僕の趣味は似ている。
ナナちゃんも僕と趣味が合った事に興奮しているようで、配信の時よりもテンションが上がっているように見えた。
『あのカードゲームをしてるって事は、最近出たテュエルマスターズってゲームはやってる?』
「もちろんあのゲームもやってるよ。お恥ずかしい事にこの前丁度シルバー帯になったばかりだから、やりこんでるわけではないけど」
『あたしと同じだ! それならあとで一緒に対戦しよう!』
僕とナナちゃんのオタトークは全然話題が尽きない。どうやら僕達は本当に相性がいいらしい。
駄目だということはわかっていても、それをやめることが出来ない。
それぐらいナナちゃんと話しているのが楽しかった。
『そしたら一緒にアニメを見ながらゲームをしよう! 今ゲームのフレンドコードを送るね!』
「ありがとう! そしたら僕は遊戯ダムのアニメを画面共有するから、ちょっと待ってて」
それから僕はナナちゃんと一緒に遊戯ダムを見ながらスマホゲームをした。
アニメの1期分を見た後、2人でアニメの感想会をした結果夜が明けてしまい、一昨日に続いてこの日も夜更かしをしてしまった。
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ここまでご覧いただきありがとうございます
続きは明日の8時に投稿します。
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