第126話 撮影当日

 彩音さんの3Dライブ当日。この日は撮影準備を手伝うため僕は早起きをしていた。

 僕が出かける準備をする中、台所ではななちゃんが朝ごはんを作ってくれている。

 3Dライブの撮影に遅れるといけないので、ななちゃんは昨日僕の部屋に泊っていた。



「斗真君、朝ごはんが出来たよ」


「ありがとう。今そっちに行くよ!」



 リビングに行くとテーブルにはご飯やみそ汁や焼鮭等、純和風の朝食が並んでいる。

 ななちゃんはといえば、椅子に座っていて僕が来るのを待っていた。



「ごめん、遅くなって」


「全然大丈夫だよ。それよりも早く食べよう!」


「そうだね。じゃあいただきます」


「いただきます!」



 久々に食べる純和風の朝ごはんはものすごく美味しい。

 いつもは買い置きのクロワッサンを食べるだけなので、こんなに美味しい朝ごはんを食べるのは久しぶりかもしれない。



「どう? あたしが作った朝ごはんは美味しい?」


「すごく美味しいよ! こんな美味しい物が食べられるなんて、僕は幸せだよ」


「ふふっ♡ ありがとう! おかわりもあるから、いっぱい食べてね」


「ありがとう」



 こんなに美味しいごはんが食べられるなんて僕は幸せだ。

 ななちゃんが作ってくれるごはんなら、毎日でも食べたい。



「毎日こんなに美味しい物を食べれるなんて、ななちゃんの旦那さんになる人は幸せだろうな」


「ありがとう。斗真君が良ければ、毎日ご飯を作ってあげるよ」


「えっ!? いいの!?」


「うん! そしたら斗真君の部屋のベッドをもう少し大きくしないといけないね」


「僕は今ぐらいのサイズが丁度いいと思う」


「斗真君は本当にそう思ってるの?」


「うん。あのベッドに何も問題はないと思うよ」



 僕が寝ているベッドはセミダブルなので、1人で寝る分には特段問題ない。

 それなのにななちゃんは顔が真っ赤になっている。いつの間にか朝ごはんを食べる手も止まっていた。



「あのベッドがちょうどいいなんて、つまり斗真君はあたしと‥‥‥‥」


「あたしと何?」


「何でもないよ!? それよりこの焼鮭美味しいね!? 我ながら最高の出来だと思う!」



 ななちゃんは何かをごまかしていたけど、何をごまかしていたのだろう。

 彼女が何を考えてるのか僕にはわからないけど、これ以上追及しない方がいいことだけはわかる。



「そういえばななちゃん、昨日はよく眠れた?」


「うん! バッチリだよ」



 この様子を見る限りななちゃんの調子は良さそうだ。

 この事務所に来て初めての3Dライブの収録。昨日の夜一緒に寝た時は緊張していたので睡眠が取れているか不安だったけど、この様子なら大丈夫そうだ。



「斗真君」


「何?」


「今日のライブだけど、あたしは上手に踊れるかな?」


「大丈夫だよ! 昨日の練習でも彩音さんがななちゃんのことを褒めてたでしょ」


「うん。彩音さんはそれでいいって言ってたけど、リハーサルでもミスしたから心配なの」


「ミスは誰にでもあるよ。でもそのことを彩音さんは何も言わなかったでしょ?」


「うん。彩音さんも昨日の夜『ダンスの振りを間違っても堂々と踊ってれば、誰もわからないよ』って言ってた」


「本人がそう言ってるなら大丈夫だよ」


「本当にそうかな?」


「そうだよ。だからななちゃんも心配する必要はないと思うよ」



 今日のライブの主役がそう言ってるなら問題ないだろう。

 もっと別のフォローの仕方があるとは思うけど、自分の思ったことを直球で言う所が彩音さんらしい。



「わかった。今日のライブは一生懸命頑張るね」


「その意気だよ!」



 ななちゃんもやる気を取り戻してくれたようで何よりだ。

 あとは今日の撮影でいつもの実力を発揮してくれることを祈ろう。



「斗真君、朝ごはんのおかわりはいる?」


「うん! そしたらご飯をもう1杯もらうよ」



 それから僕はななちゃんが作ってくれた朝ごはんを堪能する。

 2人でゆっくりご飯を食べていたらあっという間に時間が過ぎ、3Dスタジオへ向かう為部屋を出た。



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ここまでご覧いただきありがとうございます。

続きは明日の8時頃に投稿をします。


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