第116話 仲直りの糸口
「あ~~~疲れた。帰ったらビールでも飲もう!」
「未成年2人の前で堂々と飲酒宣言をしないでよ」
「そんなに固い事を言わなくてもいいでしょ。最近仕事ばかりしている私にとって、ビールを飲むことが私の唯一の息抜きなんだから」
飲酒が生きがいなのはいいけど、お酒を飲むのは程々にしてほしい。
ただでさえ収録がない日は毎日外回りに出て疲れているのだから、姉さんにはゆっくりと体を休めてほしかった。
「菜々香ちゃん、初めてのコミフェスはどうだった?」
「凄く楽しかったです。斗真君と一緒に遊べて、いい息抜きになりました!」
今日は色々な事があったけど、ななちゃんが喜んでくれてよかった。
ここ最近見られなかった笑顔もたくさん見れたし、ななちゃんをコミフェスに連れてきた僕の判断は間違ってなかったようだ。
「斗真君もあたしをこのイベントに連れてきてありがとう」
「うっ、うん!?」
「今日は斗真君の格好いい所もたくさん見れたし。あたしは凄く満足してるよ」
「今日の僕に格好いい所なんてあった?」
むしろ今日はななちゃんに醜態ばかり見せていた気がする。
それぐらい今日はななちゃんのマネージャーとして反省することが多かった。
「あったよ! 広場での撮影会の時、あたしを気遣って撮影会を切り上げてくれたでしょ」
「そういえばそんな事もあったね」
「それに強引にあたしの写真を撮ろうとしている人を注意して追い払ってくれた。あの時あたし怖くて固まってたから、斗真君が応対してくれて嬉しかったよ」
そう言われるとなんだかこそばゆい気持ちになる。
僕としてはあのような状態になる前にもっとやりようがあったと思うので反省するばかりだ。
「だからありがとう、斗真君。今日はあたしの事をエスコートしてくれて。おかげで今日1日楽しく過ごせたよ」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
僕の腕を両手で掴み体を押し付けるななちゃんが上目遣いに僕の事を見上げている。
嬉しそうに僕を見る彼女の事が気恥ずかしくて、目をそらしてしまった。
「今日の斗真と菜々香ちゃん、なんだか距離が近くない?」
「それは姉さんの気のせいだよ!?」
「そう。仲が良い分には何も言わないけど、貴方達も彩音とサラみたいに喧嘩しないでね」
そういえば彩音さん達が今喧嘩中だということを忘れてた。
2人が喧嘩を初めて既に2週間以上が経つ。そろそろ何とかしないとまずい。このまま放置しておくとずっと喧嘩別れしたままになってしまう。
「周年ライブの前に、彩音さんとサラさんの喧嘩もどうにかしないと。姉さん、何かいい案はない?」
「あるわけないでしょう。こういうのは時間が解決してくれるのを待つしかないわ」
ダメだ、自分の事務所の問題だと言うのに、姉さんはこの件に関しては無関心を決め込んでる。
時間が解決するといっても限度があるだろう。そろそろ何とかしないと、仕事にまで影響が出てしまう。
「ななちゃんは何かいい案ない? あの2人が仲直りする?」
「そうだな‥‥‥‥‥仲直りをするきっかけを作るなら、いつもとは違う場所に2人を連れてくのはどう? 場の雰囲気の力を借りて、強引に仲直りできないかな?」
「なるほど、そういう手もあるか。ちなみにななちゃんなら、あの2人をどんな場所に連れて行けばいいかな?」
「明日もコミフェスがあるから、そこに彩音先輩とサラ先輩を連れていくのはどう?」
「それは逆効果だと思うよ。エッチな本を前に興奮してはしゃぐ彩音さんに対して、それをゴミを見るような目で見るサラさんの姿しか思い浮かばない」
会場を周っている途中で喧嘩を始め、更に仲が悪くなるだろう。
それこそ本当に関係修復が出来なくなるぐらい大喧嘩することが目に見えている。だからこの案は却下だ
「そしたらどうしよう? こういうのって季節限定のイベントに連れて行くのが1番効果があると思うんだけど? 何かいいイベントはないかな?」
「都内でやってる季節限定のイベントか」
そんなものなんて本当にあるのかな?
普段家に引きこもっている僕には夏のイベントなんてコミフェスぐらいしか思いつかない。
「う~~~ん、どうしよう」
「帰ったら作戦会議しよう。あたしも2人が仲直りする方法を考えるよ」
「ありがとう、なな‥‥‥」
ふとその時電車内に張ってある広告が目に入った。
その広告を見た時、僕の頭の中にはあるアイディアが浮かぶ。
「どうしたの、斗真君? つり革の方ばかり見て? 何か見つかったの?」
「これだ‥‥‥」
「えっ!?」
「これだよ! このイベントに彩音さんとサラさんを連れて行こう!!」
「でもこのイベントは明日開催するみたいだよ。そんな突発的に誘って、2人の予定は空いてるの?」
「確か明日は2人共配信を休むはずだし、収録の予定も日中に終わるから大丈夫なはずだ!」
スマホで2人のスケジュールを確認すると秋乃さんも含めて奇跡的に3人の予定は空いている。
ななちゃんもこの2日間予定を入れていないので、全員で出かけられる。
「帰ったらみんなに提案してみよう! ななちゃんは明日も僕に付き合ってもらって大丈夫?」
「あたしは大丈夫だよ!」
「よし! そしたら帰ったらみんなに提案してみよう」
急いで事務所に帰った僕は、彩音さん達に先程電車で見たイベントに行かないかと誘いに行く。
1人1人に事情を説明するのは大変だったが、無事に約束を取り付けることができ、明日事務所のみんなで遊びに行くことが決定した。
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