第82話 柊菜々香の誘い

「う~~~ん! やっとテストが終わった!」



 テストの答案を前の席の人に渡した後、僕はその場で背伸びをする。

 ななちゃんのお披露目撮影の動画編集作業があったものの、しっかり勉強をしていたおかげで、今回の期末テストはかなりの手ごたえがあった。



「これもななちゃんが僕に勉強を教えてくれたおかげだ」



 中間テストの時に続き、このテスト期間中も僕はななちゃんと一緒に勉強した。

 彼女が勉強を教えてくれたおかげもあって、今回のテストは中間テスト以上に手ごたえがある。

 テストの結果次第では、1学期の成績表は期待できそうだ。



「斗真君」


「どうしたの、ななちゃん!? そんな神妙な顔をして、何かあったの?」


「その‥‥‥この後って時間空いてる?」


「そうだな‥‥‥この前スタジオで収録した撮影の編集は終わったし、特に仕事の予定も入ってないから大丈夫だよ」


「本当!? それならこれからうちに来ない?」


「えっ!? ななちゃんの家に遊びに行っていいの!?」


「うん! この前斗真君の家にお邪魔したから、今度はあたしの家で遊ぼう!」



 ななちゃんの提案を聞いて驚いた。まさか彼女が自分の家に僕を誘ってくれるなんて思わなかった。



「(クラスのみんながうらやむななちゃんの家に行けるのか)」



 彼女の家に遊びに行けることを想像したら急に緊張して来た。

 そこに行くのは非常に嬉しいけど、本当に行ってもいいのか悩んでしまう。



「やっぱりあたしの家で遊ぶのは駄目かな?」


「駄目じゃないよ。でも本当に僕がななちゃんの家に行っていいの?」


「うん! 実はあたし、斗真君に見せたい物があるんだ!」


「僕に見せたい物?」


「うん! それを見ればきっと斗真君も喜んでくれると思う!」



 ななちゃんが見せてくれる僕が喜びそうなものってなんだろう。もしかしていつも僕と遊んでいる時に使うカードゲームのデッキを作ったから、それを見せてくれるのかな?



「(もし対戦デッキの調整をしたいなら、僕も彼女の家に遊びに行きたいな)」



 ちょうど最近ボケモンの最新パックが発売したので、もしかしたらそれを一緒に開封したいのかもしれない。

 そういうことだったら僕もななちゃんの家に行きたい。

 あのパックはこの前開けたけど、まだそれを使用したデッキを作ってないから、これを機に新しいデッキを作ろう。



「そういうことならいいよ。今日はななちゃんの家で遊ぼう」


「本当!?」


「うん。今帰る準備をするから、一緒に帰ろう」


「ありがとう! そしたらあたしも鞄を持ってくるね!」



 あんなに急いで鞄を取りに行くなんて、カード開封がよっぽど楽しみなようだ。

 正直僕もカード開封をすることにワクワクしている。

 あのパックは最高レアリティーのカードが市場では10万以上の値段で取引されている物も入ってるので、開けることを考えただけでドキドキしてきた。



「お待たせ! 準備出来たよ!」


「僕も準備出来たから、一緒に帰ろう」


「うん! 早く帰ろう!」



 それから僕は教室を出てななちゃんと一緒に彼女の家へと向かった。

 今にして思えば、ななちゃんが僕に見せたい物について事前に聞いておくべきだったかもしれない。

 まさかそこでカード開封よりも心臓に悪いことが起きるなんて、この時は思わなかった。


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ここまでご覧いただきありがとうございます。

続きは明日の8時に投稿します。


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