第79話 目を背けたいもの
「神倉ナナさん入ります!!」
「宜しくお願いします」
「それじゃあTポーズお願いします」
「はい」
「‥‥‥‥‥OKです。次はマイクチェックをお願いします」
彩音さん達3人に加えてななちゃんも撮影スタジオに入り、4人が複数のカメラに囲まれ撮影が始まるのを待っている。
スタジオにいる全員が4人に注目する中、僕だけがその4人から目をそらしていた。
「ちょっと斗真!! 貴方の企画なのに、何でよそ見なんてしてるのよ!!」
「しょうがないじゃん!! トラッキングスーツって体の線がモロに出るから、見てられないんだよ!?」
トラッキングスーツは他の服とは違い、体の線がはっきりと出る。
そのせいで普段はわからない人のスタイルがはっきりとわかり、人によってはとある部分がものすごく強調されていた。
「なるほどね。斗真が言いたいことはわかったわ」
「姉さんもわかってくれた?」
「うん。つまりあんたは菜々香ちゃんの体を見て興奮しているから目を背けてるんでしょ? あんたも少しは男の子らしいところがあるじゃない!」
「何でそこでななちゃんが出てくるの!? 彩音さんやサラさんだっているのに!? 失礼じゃない?」
「そこで秋乃の名前を出さないあんたの方が私は失礼だと思うわ」
「それは言葉の綾だよ。秋乃さんの事をわすれるわけないじゃない」
「どうだか」
確かに彩音さんやサラさんには負けるが、秋乃さんもそれなりにスタイルがいい。
そんな彼女のことを僕が忘れるわけがない。ただ言い忘れてしまっただけだ。
「それよりも姉さん、さっきの発言を取り消してよ。別に僕はななちゃんの体を見て、興奮してないよ」
「私に嘘なんてつかなくていいわよ。あんたは菜々香ちゃんのトラッキングスーツを着ている所を見て興奮しているんでしょ?」
「何を根拠に姉さんはそんなことを言うの?」
「今まで撮影の手伝いをしていた時、彩音達のトラッキングスーツを見てもあんたは平然としていたじゃない」
「確かにそうだね」
「あの子達だってスタイルが普通の子達よりも断然いいのよ。それなのに菜々香ちゃんの時だけ目を逸らすってことは、そう考えるのが普通じゃない」
相変わらず姉さんは痛い所ばかりついてくる。
確かに僕はななちゃんの姿を見てしまい、ちょっとだけ気まずい気持ちになっている。
ただそれは僕がななちゃんの姿に興奮しているからではない。むしろ罪悪感のせいで目を逸らしている。
「‥‥‥‥‥姉さんにはわからないよ。クラスの女の子のスタイルをこんな形で知る人間の気持ちなんて」
「そんな気持ちなんてわかるわけないでしょ。これは遊びじゃなくて仕事なんだから、あんたも切り替えないさい」
そう言われて切り替えがすぐに出来るわけがない。それぐらいななちゃんのスタイルに目がいってしまう。
普段月島さんに隠れていたからわからなかったけど、ななちゃんもスタイルも人並み以上にいい。
腰はきれいにくびれてるし、足はスラっとしている。それなのに胸も人並み以上に大きいなんて完璧なスタイルだ。
「‥‥‥‥‥ななちゃんって意外と着やせするタイプだったんだ」
「ぼそっとそういう事を言うあんたが1番気持ち悪いわよ」
姉さんに何と言われようと、僕だって立派な思春期の男子。気持ち悪いと言われても、ななちゃんを見るとそういう感想を抱いてしまう。
それぐらいななちゃんは綺麗だった。このスタジオにいる誰よりも、彼女の姿が綺麗だと思っていた。
「(でも、どうしてななちゃんを見た時だけそういう感想を持つんだろう)」
彩音さんやサラさんを見ていても何も思わなかったのに。ななちゃんを見るとどうしても悶々とした気持ちを抱いてしまう。
それが何故かはわからない。ただななちゃんの姿を見ていると胸が高鳴ってしまう。
「はぁ」
「何故そこでため息をつくの?」
「菜々香ちゃんがちょっと不憫に思っただけよ。ただあんたの気持ちもわからなくはないから、大変だと思うけど頑張りなさい」
まだ何もしていないはずなのに姉さんからエールをもらってしまった。
頑張るのはこれからのはずなのに。姉さんも変なことを言うんだな。
「それじゃあ撮影を始めます!! 皆さん、指定された場所に移動してください!」
「わかりました! よろしくお願いします!」
ななちゃん達が指定された場所に移動した後、監督の合図と同時に新人お披露目企画の撮影が始まった。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。
続きは明日の7時に投稿します。
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