第77話 愛情のこもった朝食
「‥‥‥うま。斗真、起きなさい!!」
「えっ!? もう朝?」
「そうよ!! もうとっくのとうに朝日が昇ってるわ!!」
姉さんに叩き起こされた後、窓の外を見ると既に太陽が空へ昇っている。
さっきまで外は暗かったのに。一体今は何時なんだ?
「姉さん」
「何?」
「昨日は僕、何時間寝てた?」
「2時間よ。もうすぐ朝の8時になるわ」
「8時‥‥‥ってまずい!? ななちゃんを迎えに行かなきゃ!?」
昨日の帰り際ななちゃんと朝の8時に駅で待ち合わせをするという約束をしたのに、待ち合わせ時間はとっくのとうに過ぎている。
急いで待ち合わせ場所に行かないと、彼女を待たせることになる。
僕はベッドから寝ていたソファーから飛び起きて、急いで服を着替えた。
「何をそんなに急いでるのよ?」
「だって僕はななちゃんを迎えに行くって昨日約束したから‥‥‥」
「それなら大丈夫よ。あんたが菜々香ちゃんと約束をしてると思って、菜々香ちゃんを事務所まで連れてきてって秋乃にお願いしておいたから。ここで待っていればその内来るわ」
「秋乃さんがななちゃんを迎えに行ってくれたんですか?」
「そうよ。正確には秋乃も電車だから、そのついでに連れてきてもらってるのよ」
「姉さんは秋乃さんにそんなことを頼んでくれたんだ。ありがとう」
「どういたしまして。さっき秋乃から連絡があって菜々香ちゃんと合流したらしいから、もうすぐ着くんじゃない?」
僕が寝坊したせいで、秋乃さんに迷惑をかけてしまった。
あとで秋乃さんと会った時に一言お礼を言っておこう。ついでに昨日美味しそうに食べていたパンケーキ屋のクマさんワッフルも一緒に渡した方がいいかもしれない。
『ピンポーン』
「ほら、来たわよ。鍵を開けてあげなさい」
「わかった」
玄関の鍵を開けるとドアを勝手に開く。僕がドアを開けるとそこにはビニール袋を持ったななちゃんと秋乃さんが立っていた。
「おはよう、斗真君」
「おはよう。ごめんななちゃん、待ち合わせの約束を破って」
「全然いいよ。それよりも秋乃さんから明け方近くまで台本を作っていた話を聞いたけど、体調は大丈夫?」
「大丈夫だよ。僕は元気だから心配しないで」
「その割には目に隈が出来てるよ」
「嘘!?」
「本当だよ。鏡を見て」
ななちゃんから渡された手鏡を見ると、目の下にうっすらと隈が出来てる。
昨日までこんなものはなかったのに。これはたぶん殆ど寝ていないせいだ。
「斗真君、昨日は何時に寝たの?」
「わからない。空が明るくなってきたところまでは覚えてるけど、そこから先は覚えてない」
きっと台本を書き終えたことで気が抜けてしまい、そのまま寝てしまったのだろう。
あのまま姉さんに起こされなかったら、昼過ぎまで寝ていたはずだ。
「もしまだ眠いようなら、先にお風呂に入ってきたら? そうすれば目が覚めるかもしれないよ」
「そうするよ」
「その間にあたしが朝ごはんを作っておくから。ゆっくり入ってていいよ」
「えっ!? ななちゃんが朝ごはんを作ってくれるの!?」
「うん。その為に色々買い物をしてきたから任せて!」
2人が手に持っているビニール袋の中には朝食の材料が入ってるのか。
この荷物は今日の昼食用の材料だと思っていたけど、そうではないらしい。
「本当に作ってもらっていいの?」
「もちろん。あたしも今日は朝ごはんを食べずに来たから、一緒に食べよう」
「ありがとう。そしたらお願いしてもいい?」
「うん。そしたら台所を借りるね」
「お邪魔します」
そういうと真っ先に僕の部屋の中に入ってくる秋乃さん。
ななちゃんよりも先に僕の部屋に入ってくるので驚いてしまった。
「ちょっと待って下さい!?」
「えっ!? どうしたの!?」
「もしかして秋乃さんも僕達と一緒に朝食を食べるんですか?」
「もちろん、そのつもり」
「斗真君、秋乃さんが朝食を食べるのってそんなに意外なの?」
「意外ってわけじゃないけど、秋乃さんって好き嫌いが激しいイメージがあるから、ななちゃんの作った朝食を食べられるか心配になっただけだよ」
「それなら大丈夫だよ。さっき買い出しをした時、秋乃先輩の好みを聞いたから」
「今日の朝食はナナが私の好物を作ってくれるみたい」
「それなら大丈夫か」
そこまで考慮してくれてるなら問題ないだろう。
それにしても秋乃さんの好物か。偏食家の秋乃さんが好きな物を思い浮かべるが、何が好きなのか思い当たらない。
「それじゃあ早速朝食を作るね」
「私は斗真のお宝本を探す」
「そんなものを探さないでいいから、秋乃さんは大人しくリビングで座って待っててください!?」
お宝本なんてないし、秋乃さんは家探しなんてしてないで大人しく座って待っててほしい。
そういえば奥にいる姉さんは大人しいけど、一体何をしているのだろう。
「秋乃、斗真はお宝本なんてもってないわよ」
「そうなの?」
「うん。そういうのは全部パソコンかスマホに保存してあるはずだから、探すならそっちを探しましょう」
「OK!」
「『OK』じゃないですよ!? 2人共ご飯が出来るまで大人しくして下さい!?」
その後僕は風呂に入った後、ななちゃん達と朝食を食べる。
僕のスマホのパスワードの番号を真剣に考えている姉さん達は放っておき、朝食を食べ終わった後僕達は3Dスタジオへと向かった。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。
続きは明日の7時に投稿します。
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