第48話 作戦会議

「いいの? あの人のことを放っておいて」


「いいのよ。あの子はいつもあんな調子だから。放っておいても大丈夫」


「そうなの?」


「うん。以前3Dスタジオに花火を持ち込んで遊んでたのもあの子だから、斗真も彩音には容赦しなくていいわよ」



 そういえば前に配信者との付き合い方について話をしていた時、姉さんがそんなことを言っていた気がする。

 あれは姉さんが僕を脅かすために言ったことだと思っていたけど、どうやら本当にあった出来事のようだ。



「ここが私の事務所よ。とりあえずそこの椅子に座って話しましょう」


「わかった」



 姉さんが案内してくれた場所は、こじんまりとした部屋だった。

 部屋はさっぱりとしていて、2つの机と書類棚しか置いていない。



「(芸能事務所って、こんな簡素な部屋なんだ)」



 もっと華やかな部屋を想像していたけど、僕の想像以上に地味な場所で拍子抜けした。

 これは姉さんの趣味嗜好が反映された結果かもしれないけど、それにしたって物が少なすぎる。



「どうしたの、斗真? 座らないの?」


「今座るよ」



 そうだ、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 せっかくななちゃんの炎上が沈静化する方法を思いついたんだ。

 早くその事について姉さんと話そう。今は1分1秒でも時間が惜しい。



「改めて斗真の意志を確認したいんだけど、貴方は本気で配信者ストリーマーデビューをするつもりなの?」


「もちろんそのつもりだよ」


「本当にいいの? 今デビューしたら下手をすると神倉ナナ以上に炎上する可能性があるわよ」


「大丈夫。むしろそれは僕の望むところだよ」



 僕が炎上してななちゃんの話題が落ち着くなら、それはそれでいい。

 そうなるために僕は配信者ストリーマーデビューをするんだ。

 姉さんに言われなくてもその覚悟はとっくに出来ている。



「どうやら私が何を言っても無駄みたいね」


「ごめん」


「謝らなくてもいいわよ。ちゃんと骨は拾ってあげるから、頑張りなさい」


「ありがとう、姉さん」



 姉さんのお墨付きはもらったし、あとは配信をするだけだ。

 僕自身準備は出来てるし、すぐにでも配信できる。



「そしたらどの部屋を使えばいいの? もう配信する準備は出来てるんでしょ?」


「何言ってるのよ? 配信するのは今日じゃなくて明日よ」


「えっ!? 今日配信をするんじゃないの!?」


「準備が出来ていない状態で配信をするわけないじゃない。それにゲリラ配信をしたところで、ろくに人が集まるわけないわ」


「なら、どうすればいいの?」


「SNSで告知をして、事前に配信の枠立てをしておくのよ。あんたのツイッタラーのアカウント、フォロワー数が5桁いってるでしょ。それを使って、初配信を告知するの」


「なるほど。そうやって集客をするのか」


「ちなみに初配信のタイトルは決めてあるわ。それとツイッタラーに投稿する文面も準備してあるから、それを使いなさい」


「突然決めた事なのに、やけに手際がいいね」


「一応こうなることも想定していたから、前もって準備をしていたのよ」


「姉さんはやっぱりすごいな。僕には敵わないよ」


「そういうことはこの配信が成功したら言ってちょうだい。正直な話失敗する確率の方が高いと思うけど、かなりの数字が稼げるはずよ」


「そこまで計算に入れてるんだ」


「当たり前よ。この配信はデメリットの方が多いけど、大きなチャンスが舞い込んできたと私は思ってる」



 こういう時でも数字にこだわる姉さんの姿勢は凄い。

 このような思考になるのは社長としての血が騒いでいるからだろう。

 先程姉さんが言った通りろくなことにならない可能性が高いけど、とてつもない数字が稼げると姉さんは思っているはずだ。



「そしたらまずは下準備よ。これからYourTubeチャンネルの開設。それからその事をSNSで宣伝して人を集めるわよ」


「わかった」


「それが終わった後も色々とやることがあるから、斗真も手伝ってね」



 それから僕達は明日の配信に向けて準備をする。

 SNSの投稿や明日行う配信の枠立てカメラの準備等、明日の配信に向けて夜通し準備をした。


------------------------------------------------------------------------------------------------

ここまでご覧いただきありがとうございます。

続きは明日の7時に投稿します。


最後になりますが作品のフォローや応援、★レビューをよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る