第34話 学校生活の楽しみ
今日彼女と一緒に見ているアニメは最近流行りの学園青春ものだ。
内容を要約すると1人ぼっちでひねくれている主人公が奉仕部という部活に入って、ヒロインと学校生活を過ごしていくという物語である。
『こういう部活っていいよね。なんだか青春って感じがする』
「僕達はまだ高校2年生だし、今から部活に入っても遅くはないと思うよ」
『今更無理をして部活に入りたくないよ』
「確かにそうだね」
『それ加えてうちの学校って休みの日も活動している部活が多いでしょ。さすがに休みの日まで、あたしは学校に行きたくない』
「その気持ちは僕もわかるよ。休みの日は家でのんびりアニメを見ながらゲームをしていたい」
『わかる! 部屋でゴロゴロしていたらうっかり寝ちゃって、気づいたら夜になってて1日無駄にしたことを後悔するんだよね!』
神倉ナナの正体が同じクラスの柊菜々香だとわかって以来、こうして学校の話をすることも増えた。
この前はゴールデンウイークに出された宿題を一緒にしたし、ななちゃんとの距離が前より近づいた気がする。
「それにしてももうすぐゴールデンウイークも終わりか」
『ゴールデンウイークの後にはすぐ中間テストがあるよ』
「うわっ!? その言葉、1番聞きたくなかった」
『もう! 目を背けててもどうせすぐにテスト期間に入るんだから。斗真君も勉強した方がいいよ』
「そういうななちゃんは勉強してるの?」
『全くしてないよ』
「それなら僕と同じじゃん!?」
『しょうがないでしょ! あたしは深夜アニメと漫画とラノベの消化で忙しいんだから。勉強してる暇がないの』
「そこはせめて配信活動が忙しいから勉強してないって言ってほしかったな」
今の言葉をななちゃんのリスナーさんが聞いたらどう思うだろう。
泣くかわめくかはたまた叩くのか‥‥‥少なくともいい顔をしないのは確実だ。
『誤解のないように伝えておくと、あたしにとって配信活動は仕事だと思ってないよ』
「それは僕もわかってるよ」
『本当にわかってる?』
「もちろん! それはななちゃんの配信を見ればわかるよ。いつもリスナーと楽しそうに配信をしてるから、配信活動が大好きって気持ちが見てるこっちにも伝わってくる」
『‥‥‥‥‥』
「どうしたの、ななちゃん? いきなり黙られると僕も困るんだけど?」
『SNS越しじゃなくて、こうやって面と向かってそんなことを言われると恥ずかしいんだけど』
「そう? 僕はあんまり変わらないと思うけど?」
『じゃああたしがこの前FPSの大会に出てた斗真君を見た時の感想をここで話していい?』
「それはやめて!? あれは僕にとっての黒歴史だから!?」
もしあの配信をもう1度見返したら、僕はその場で狂い叫ぶ自信がある。
それほどあの時の僕は痛々しかった。緊張していたとはいえ、もっと落ち着いて話せばよかったのに。何であんな変な事ばかり言ったのだろう。それは今でも後悔している
『そういえば斗真君は学校でいつも1人でいるのを見かけるけど、友達はいないの?』
「いないよ。一緒にペアを組む時だけ話すビジ友はいるけど、学校で仲良く話すような人はいない」
『それだと1人ぼっちで寂しくない?』
「全然。僕は今まで1度も寂しいと思ったことはないよ。むしろ1人でいる方が人に指図されずに好き勝手出来るから楽なんだ」
もちろんそれ相応の責任が伴うが、人に何か言われてやるよりも自分で考えてやる方が失敗した時も納得できる。
だから僕はいつも1人でいた。自由に何でも出来る今の環境を僕は気に入っている。
「それにななちゃんは勘違いしているかもしれないけど、僕は僕で学校を楽しんでるよ」
『本当?』
「本当だよ」
『それなら斗真君は何を楽しみに学校に来てるの』
「そうだな‥‥‥‥‥色々あるけど、僕が今1番楽しみにしているのは昼休みだね」
『昼休み?』
「そうだよ。今は購買で売ってるパンを食べるのが学校生活で1番の楽しみになってる。あそこの購買で売ってるパンは近くのパン屋から直送してるから出来立てで美味しいんだよ。これだけでも学校に行く価値があると個人的には思ってる」
『あたしはいつもお弁当を持って行ってるから、購買には1度も行ったことがない』
「それなら1度行ってみるといいよ。きっと世界が変わるから」
あそこの購買は美味しい食べ物が多いので、ななちゃんも満足するに違いない。
むしろ今までそこに行っていないのが僕には信じられない。人生の半分は損してると思う。
「あとは購買だけじゃなくて、学食に行くのもいいよ」
『学食に何かあるの?』
「何かあるわけじゃないけど、あそこのご飯も美味しいんだよ。特に春夏秋冬の季節に合わせて期間限定のメニューも出るから、季節を感じたいならそこに行くといいよ。ななちゃんは学食に行ったことある?」
『1度もない』
「それなら今度行ってみて。絶対に損はさせないから」
そのぐらい購買に負けず劣らず学食のご飯も美味しい。
あまりに人が多すぎて人酔いするので僕は購買で済ませてるけど、もしあの人込みがなければ毎日通っている。
『ふふふっ』
「どうしたの、ななちゃん? そんなに笑って?」
『なんだか斗真君と話してたら、自分の悩みが馬鹿馬鹿しく思えてきた』
「悩み? 何かあったの?」
『ちょっと美羽ちゃんの件で悩んでる事があったんだけど‥‥‥‥‥斗真君の話を聞いたら、なんだか大丈夫な気がしてきた』
月島さん絡みの悩み? ということはこの前学校にいる時に聞いた、グループ分裂の話なんじゃないか?
「力になれるかわからないけど、僕でいいならその話を聞くよ」
『大丈夫だよ! 斗真君は気にしないで』
「わかった。でもあまり1人で抱え込まないでね。僕でよければいつでも相談にのるから。何でも話してほしい」
『ありがとう。それなら今度斗真君に購買を案内してもらおうかな』
「もちろんいい‥‥‥えっ!? 今なんて言った!?」
『斗真君に購買を案内してもらうの。言質は取ったから、今度案内してね』
もしかしたら僕は交わしてはいけない約束をななちゃんと交わしてしまったんじゃないか?
ななちゃんの事だからきっと僕の事をからかってるだけだと思うけど。どうしてもそれが冗談のようには聞こえなかった。
『斗真君が推してる購買のオススメメニューって何?』
「そうだな‥‥‥‥‥総菜パンはどれも美味しいけど、メロンパンみたいな菓子パンやシュークリームも僕は好きだよ」
『わかった。そしたら今度それを買ってみる』
「そうするといいよ。あと中庭に涼しくてくつろげるオススメのスポットがあるから、購買でパンを買ったらそこで食べるのがオススメだよ」
それから2人でアニメを見ながら、学校のオススメスポットについてななちゃんと話す。
ななちゃんの話は興味深く、僕の知らない話もあり面白かった。
『あっ!? もうこんな時間だ!?』
「明日から学校が始まるし、そろそろ寝よう」
『わかった! そしたらこれからベッドに移動するね』
「えっ!? 今日も寝落ち通話するの!?」
『ダメ?』
「ダメじゃないけど‥‥‥ななちゃんはいいの?」
『うん! あたしは何も問題ないよ!』
「わかった。ななちゃんがそう言うなら、僕も付き合うよ」
異性の僕と寝落ち通話なんてして、ななちゃんは大丈夫なのかな?
でも本人は問題ないと言ってるし、あまり気にしなくてもいいか。
『そういえば今度発売する遊戯ダムの新弾カード、斗真君は買う?」
「もちろん買うよ。ただお金がないから、1ボックスだけ予約を入れてる」
それから僕達はベッドの中でアニメやカードの事について話す。
しばらくするとななちゃんは寝てしまい、僕も通話を切ってそのまま眠ってしまった。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。
続きは明日の8時に投稿します。
最後になりますが今年も1年ありがとうございました。
来年も皆様に楽しんでもらえるような作品をお届けできるように頑張りますので、よろしくお願いします。
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