第31話 明かされた関係

『ピコンピコン‥‥ピコンピコン‥‥‥ピコンピコン』


「あれ? 電話が掛かってきた?」



 ゴールデンウイークも終盤に差し掛かったある日の朝、僕のスマホが珍しくなっていた。

 こんな休みの日に連絡がくるなんて珍しい。

 日中は滅多に電話なんてかかってこないのに。一体誰からの連絡だろう。



「休日に連絡を入れてくる人なんて、ななちゃんぐらいしかいないか」



 もしかしたら日中は暇なので、一緒にゲームをしようというお誘いかもしれない。

 そう思ったらすぐにでも電話に出ないといけない気がした。



「とりあえず電話を取るか」



 僕はスマホの画面に写った名前は見ず、寝ぼけまなこの状態で電話に出た。



「もしもし‥‥‥ななちゃん?」


『斗真。起きてる?』


「ねっ、姉さん!? どうしたの!? こんな朝早くから僕に連絡なんてして!?」


『朝? 何を言ってるのよ? もうお昼過ぎじゃない』


「嘘!?」


『本当よ。嘘だと思うなら、時計を見なさい』



 ベッドの横にある置き時計を見ると、現在の時刻は13時30分。

 昨日は休みだからといってななちゃんと明け方までゲームをしていたまでは覚えているけど、どうやらあの後ずっと寝ていたみたいだ。



『斗真、今日予定していたミーティングは何時開始だった?』


「13時‥‥‥」


『今の時間は?』


「13時30分」


『それなら私に何か言う事があるんじゃない?』


「遅刻をしてしまって申し訳ありません!!」


『全く。あんたにしては珍しいわね。遅刻をするなんて』


「ごめん」


『やけに声がガサガサだけど、もしかしてこの時間まで寝てたの?』


「うん。今起きた」



 休日だからといって、ちょっと睡眠を取り過ぎたかもしれない。

 明け方に寝たとはいえ、もう少し早く起きるべきだった。

 そうすれば姉さんとの定期ミーティングに遅刻することはなかっただろう。



『そういえばお母さんに聞いたんだけど、あんた最近夜な夜な誰かと電話してるみたいじゃない』


「うっ!?」


『その反応を見ると図星のようね。もしかしてあんた‥‥‥彼女でも出来た?』


「かっ、彼女なんているわけないでしょ!? 姉さんは何を言ってるの!?」



 友達だってろくに出来ないのに、彼女が出来るわけがないだろう。

 さすがに話が飛躍しすぎだ。



『なんだ、彼女じゃないのか。つまらないわね』


「そうだよ。変な期待をさせて悪かったね」


『別に構わないわよ。それにしてもあんたが友達を作るなんて珍しいわね。その人はどんな人なの?』


「どんな人って言われても普通の子だよ。僕と趣味が似通ってるから馬が合って、作業通話をしながら夜な夜な2人で遊んでるんだ」



 僕が遊んでいる友達が神倉ナナだという事は姉さんには言わないでおこう。

 もしその事がバレたら何を言われるかわからない。下手をすれば連絡先を強制的に消される可能性がある。



『作業通話? ろくに配信活動をしていないあんたが何でその言葉を知ってるのよ?」


「あっ!?」


『もしかしてあんた‥‥‥まさかとは思うけど、神倉ナナと連絡を取ってるの?』


「ななちゃんと連絡なんて取ってないよ!? 姉さんは何を言ってるの!?」


『そう‥‥‥一応聞くけど、私に嘘はついてないと天地天命にかけて誓える?』


「‥‥‥‥‥たぶん」


『正直に白状するなら今回の事は不問にするし、何かあった時は私も協力するけど。その千載一遇のチャンスを捨てていいのね?』


「すいませんでした!!!」



 やっぱり姉さんには敵わない。僕がついた嘘は全てこの人に見破られている。

 スマホ越しで話してるのにも関わらず、いつの間にか僕はベッドの上で土下座をしていた。



『やっぱりそうだったのね。お母さんからあんたの様子を聞いた時にピンときたけど、私の予想は当たっていたみたい』


「僕が神倉ナナと連絡を取り合ってたことを知ってたの!?」


『知らないわよ。ただあんたが自分の生活リズムを崩すまで話し込む人なんて、よっぽど趣味が会う人以外いないはずよ」


「確かにそうだね」


『それに加えて奥手なあんたがクラスで友達を作る事はないと思ったから、直近であんたと絡みがあったあの子だと思ったのよ』


「姉さんには敵わないな。それならこの前僕がななちゃんと一緒に出掛けたことも知ってるんだね?」


『そんなこと知らないわよ!? 何!? あんた神倉ナナと2人で遊びに行ったの!?』



 まずい!? 焦りすぎて自分から墓穴を掘りに行ってしまった!?

 どんなに取り繕ろうとしてももう遅い。この状況ではさすがにごまかしきれない。



「うん。この前ななちゃんに誘われて、2人で遊びに行ったんだ」


『あんたも隅に置けないわね。つい最近話したばかりの女の子を誘ってデートに行くなんて。我が弟ながらやるじゃない!』


「デートじゃなくて遊びに行っただけだよ!?」


『それをデートって言うのよ。仲のいい異性が2人で遊びに行ったら、誰がどう見たってデートって言うわ!』



 あれ? 変だな。もっと烈火のごとく怒られると思っていたけど、姉さんは一向に怒る気配がない。

 むしろ僕が女の子と遊びに行ったことを楽しそうに聞いている。それこそ僕に異性の友達が出来たことを喜んでいるようにも見えた。


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ここまでご覧いただきありがとうございます。

続きは明日の7時に投稿します。


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