第26話 可愛い女の子は好きですか?

「う~~~ん、こんなにたくさんアニメの話をしたのは久々な気がする」


「あたしもそうだよ! 斗真君とオタトークが出来て凄く楽しかった!」



 柊さんが楽しんでくれてよかった。正直この店で話をするまで、彼女がこんなにアニメや漫画に精通しているとは思わなかった。



「(もしかしたら柊さんは僕よりもその手の話に詳しいかもしれない)」



 そのぐらいオタク関連の事に対して知識がある。

 この分野に関して言えば、もしかすると僕より博識かもしれない。



「そういえば柊さんが行きたいお店ってどこにあるの?」


「ここから少し歩くけど、そんなに遠くないよ」



 このお店から近いという事は目的地はだいぶ絞られる。

 僕は今までの経験を思い返し、柊さんが行きたいお店を予想してみた。



「(たぶん柊さんが向かうお店はサンフラワーシティーにあるに違いない)」



 あそこはおしゃれなお店が揃っているので、買い物をするにはうってつけの所だ。

 このお店からもその場所は近いので、彼女がそこへ行くものだと僕は思っていた。



「それじゃあToma君、あたしについてきて!」


「わかった」



 柊さんと目的のお店に向けて並んで歩く。

 彼女と話すことに夢中になっていて気付かなかったけど、いつのまにかサンフラワーシティを通り過ぎていた。



「着いた! ここだよ、ここ!! あたしが行きたかったお店!!」


「このお店は‥‥‥フィギュアショップ?」


「うん! フィギュアの他にもアニメグッズとか色々売ってて、品揃いがいいんだよ!」



 このお店は過去に僕も来たことがある。

 柊さんの言う通りアニメ関連のグッズの品ぞろえが良く、フィギュアのクオリティーも高いので重宝している所だ。



「どうしたの? 早く入ろう!」


「うっ、うん」


「こっちがフィギュアコーナーだから、ここから見ていこう」



 柊さんと店に入ってまず向かったのはこの店自慢のフィギュアコーナー。

 壁や棚一面にたくさんのフィギュアが並んでおり、ショーケースの中に入っている物の中には非売品なんてものもある。



「Toma君、このフィギュア可愛くない?」


「確かに可愛いね」


「こっちのフィギュアはどう思う?」


「これも可愛いと思うよ」


「むぅ、さっきから反応が淡白じゃない? あたしが選んだこのお店って、そんなに面白くなかった?」


「そんなことないよ!? フィギュアは精巧に作られていてクオリティーが高いし、見ているだけで楽しいよ!?」


「じゃあなんであたしが選んだフィギュアを一緒に見てくれないの?」


「柊さんの選ぶフィギュアって布面積よりも肌色面積の割合が多い物ばかり選ぶから、反応に困ってただけだよ」


「えぇ!? Toma君って、こういうエッチで可愛い子は嫌いなの!?」


「嫌いじゃないよ。むしろ柊さんが見繕ってくれたフィギュアはどれも僕の性癖にドンピシャだった‥‥‥」


「だったら素直に『この女の子、エロ可愛い!』でいいじゃん! 自分の気持ちに素直になりなよ」


「そんな事をクラスメイトの女の子の前で言えるわけないでしょ!!」



 しかも柊さんは校内で1、2を争う程の美貌を持っている。

 そんな清楚で可愛い女の子を前にして、『このフィギュア、エロ可愛いね』なんてセクハラ発言、口が裂けても言えるわけがない。



「だったらこっちの水着の女の子はどう? 黒のタンキニタイプだから、肌色面積が少ないよ」


「確かに肌色面積は少ないけど‥‥‥何でこのキャラクターが着てる水着は、胸の谷間にハートマークの穴が開いてるの?」


「それは可愛いからだよ!」


「可愛いのはわかるけど、それに付随してこのキャラクターが官能的に見えたら僕は何て表現したらいい?」


「そこは素直に『エロい!』でいいと思うよ」


「一応聞いておくけど、僕がもしこのフィギュアを見て『この女の子激シコだよね?』って言ったらどうする?」


「とりあえずティスコの友達登録を解除してブロックする」


「やっぱりダメじゃん!!」



 柊さんは僕の事を何だと思ってるんだ!!

 お腹を抱えて笑っている所を見るとたぶん彼女は僕の事をからかっているだけだと思うけど、本当にティスコをブロックされないか不安だった。



「ごめんごめん。Toma君の反応が面白くて、ついからかっちゃった」


「柊さんは今まで僕の事をからかってたんだ」


「全部が全部からかってたわけじゃないよ。普通にこの水着の子達はあたしが好きなキャラクターだから、Toma君に見せたかったんだ」


「本当?」


「本当だよ。だってあたしはエッチな女の子が大好きだし。こういうフィギュアとか見てると、幸せな気分になるの」


「柊さんはエッチな事が好きなの?」


「エッチな事が好きなんじゃなくて、エッチな女の子を見るのが好きなだけだよ」


「なるほど」


「でも普段学校でそういう事を言うとみんなに引かれちゃうから、それをネットで発散してるわけ」


「今の話を聞いて、何で柊さんがVTuberをやってるのかわかった気がする」



 普段素の自分を出せないから、代わりにその鬱屈した気持ちをネットで発散させてるわけか。優等生というのも大変だな。



「あれ? でもいいの? 僕に対してそういうことを言っても?」


「うん! だってToma君は奥手で人畜無害だから大丈夫でしょ」


「なんだか信頼されてるのか貶されてるのかわからないな」


「貶してるんじゃなくて褒めてるんだよ。それにさっきToma君がカフェであたしの事を大事な友達って言ってくれたから、あたしもこんな話が出来るの」


「そうなの?」


「うん、あたしはToma君の事は全面的に信頼してるよ! それにそんな大切な友達をなくすような行動をToma君はしないでしょう?」


「そうだね。せっかく見つけた趣味の合う友達をこんな事で失いたくない」



 せっかくこんなに趣味が会う友達を見つけたのに、一時の過ちでその友達を失いたくない。

 出来れば柊さんとはこれからも細く長く、末永い付き合いをしていきたいと思っている



「それならお互いの利害関係は一致してるし、大丈夫だね」


「うん!」


「そしたらあっち側にもフィギュアがあるから一緒に見よう!」


「うん」



 それから僕達は場所を移動し、柊さんが食い入るように見ているフィギュアを一緒に見た。



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ここまでご覧いただきありがとうございます

続きは明日の8時に投稿します。


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