第25話 おすすめの店
僕達がメニューを頼んですぐ、お姉さんが注文したドリンクを持ってきてくれた。
時間にして約1分弱。ドリンクを作る時間としては異例なスピードで、僕達の元に飲み物が運ばれてきた。
「(この様子を見ると、ある程度裏で準備をしていたに違いない)」
僕達があまり手間のかかるものをオーダーしなかったのもあるけど、その事を差し引いたとしても持ってくるスピードが早い。
たぶんこの店の店員が裏で飲み物を出す準備をしていたのだろう。そう思うとお店の人達にはちょっとだけ悪いことをしたような気分になった。
「Toma君は何を注文したの?」
「僕は蜂蜜ジンジャーティーだよ。柊さんは何を頼んだの?」
「あたしは蜂蜜ストロベリーティー」
「柊さんはおしゃれな飲み物を頼んだんだね」
「うん! こんな映えてる飲み物は久々に見たから、写真を撮ってもいい?」
「いいよ。よかったら、僕のジンジャーティーも一緒に撮る?」
「うん! ありがとう!」
ジンジャーティーとストロベリーティーを並べて写真を撮る柊さん。
スマホで何枚も写真を撮っている所を見ると、あとで撮った写真をSNSに上げようとしているように見えた。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
「そしたらこのジンジャーティーはもらうね」
柊さんから受け取ったジンジャーティーを飲むと口いっぱいに優しい味が広がる。
はちみつを入れると甘ったるい味になると思われがちだが、実際飲んでみるとそんなに甘くはない。
むしろ蜂蜜を入れたことでショウガ特有の苦みをやわらげ、優しい味に変化して飲みやすくなる。
「やっぱりここの飲み物はどれも絶品だな」
「Toma君はよくこのお店に来るの?」
「僕はあまりこのお店には来ないよ」
「そうなんだ。殆ど来たことがないのに、よくこんなおしゃれなお店を知ってたね」
「僕の姉さんがこのお店を気にいってるんだよ。池袋に姉さんと2人で来た時はよくこのお店を使ってるから、そのおかげで僕もこのお店を知ってたんだ」
「そういえばToma君、前にお姉さんがいるって言ってたよね?」
「うん。姉さんはミーハーだから、こういう可愛くておしゃれなお店には目がないんだよ」
こんな事を本人の前で言ったら絶対に怒られるだろう。
だが幸いにもこの場所に姉さんはいない。柊さんと姉さんに接点はないし、この会話が姉さんの耳にまで届くことはないだろう。
「お待たせしました。こちらがストロベリーハニーフレンチトーストです」
「わぁ! このフレンチトーストすごく可愛い!」
「以上でご注文はお揃いですか?」
「はい。ありがとうございます」
「では、ごゆっくりどうぞ」
お姉さんが僕達の前に置いてくれたものは星型をした一口サイズのフレンチトーストである。
そのフレンチトーストにジャムのような見た目をしている苺の蜂蜜付けソースをつけて食べるのが僕のおすすめだ。
「Toma君」
「何?」
「この横に置いてあるクマのモナカ、凄く可愛くない?」
「可愛いでしょ。だから僕はこれを注文したんだ」
取り皿を柊さんの前に置き、フォークとナイフを彼女に渡す。
柊さんはそれを受け取るが、何故かキョトンとした表情で僕の事を見ていた。
「Toma君、このフレンチトーストってあたしも食べていいの?」
「うん。その為に頼んだものだから、柊さんに食べてもらわないと僕だけじゃ食べきれないよ」
このフレンチトーストはこの店のおすすめ料理なので、ぜひとも柊さんに食べてもらいたい。
この商品はこのお店に来た時に僕と姉さんが食べている物で、今回のように1つの物を注文して2人でシェアをして食べている。
「じゃあお言葉に甘えて。いただきます!」
「どうぞ」
食べる前にちゃっかり写真を撮るのを欠かさない柊さん。
写真を撮り終えるとフォークとナイフを使って半分に切り、フレンチトーストを食べた。
「このフレンチトースト凄く美味しい!」
「気に入ってもらえてよかった」
「この苺ジャムみたいなソースもつけると更に美味しくなる!」
「甘い物が苦手な人でもこのフレンチトーストは食べやすいから、何個でも食べられるんだよね」
僕が注文したフレンチトーストを柊さんは美味しそうに食べている。
先程注文したストロベリーティーを食事の合間に飲み、満足気に笑っていた。
「(こんなに喜んでくれるなんて、柊さんをこのお店に連れてきてよかった)」
フレンチトーストを食べる度に笑顔がこぼれている彼女を見たらそう思わずにはいられない。
いつもは傍若無人な振る舞いをする姉さんだが、今日だけはこのお店を教えてくれたことに感謝をした。
「そういえばToma君。この後はどこに行くの?」
「実はまだ決めてないんだよ。柊さんと合流してから行きたいお店を決めようと思ってたから、何も考えてなかった」
そういう事は会った時に考えればいいかと思っていたけど、それにしてはあまりにもプランがなさ過ぎた。
この街には何でもあるから柊さんの要望を聞いて行動しようと思っていたけど、逆にそれが仇となっている。
「もしToma君が行きたいお店がないなら、あたしが行きたい場所を選んでもいい?」
「いいよ。これを食べたらそのお店に行こう」
柊さんの行きたいお店か。彼女は一体どんなお店に行きたいのだろう。
どこに行くかわからないが、彼女が選んでくれたお店にものすごく興味があった。
「ふふっ! 今からそのお店に行くのが楽しみだな!」
「そんなに嬉しそう話すという事は、よっぽどそのお店に行きたかったんだね」
「うん! Toma君から遊びに行く場所の連絡がきた時、このお店は絶対行こうと!思ってたんだ」
「という事はそのお店は僕も楽しめる所なの?」
「もちろん! 絶対Toma君も気に入ってくれると思うよ!」
僕が気に入るお店か。柊さんが激推しするという事は、僕も一緒に楽しめる所なんだろう。そのお店に俄然興味が出てきた。
「(彼女は一体どんな場所へ連れて行ってくれるのだろう)」
今からそこに行くのが楽しみでワクワクが止まらなかった。
「ところで話は変わるけど、この前Toma君がオススメしてくれたアニメ見たよ!」
「本当!?」
「うん! あまりに面白くてつい夜更かしをしちゃった」
それから僕と柊さんは最近見たアニメの話で盛り上がる。
しばらくカフェでアニメ話に花を咲かせた後、会計をしてお店を出た。
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ここまでご覧いただきありがとうございます
続きは明日の8時に投稿します。
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