第5話 月島美羽と柊菜々香

「月島をよく見て見ろ。あの制服がはち切れそうなぐらいふくよかな胸に柔らかそうで張りのあるムチムチな足! 俺も1度はあの胸や太ももに挟まれて見たいぜ!!」


「‥‥‥そうだね」


「何でそんなゴミを見るような目で俺の事を見るんだよ。せっかく月島と同じクラスになったんだから、もっとテンション上げていこうぜ!」


「テンションを上げるのはいいけど、柊さんはどんな人なの?」


ひいらぎ菜々香ななか月島つきしま美羽みうの隣にいるだろう? 黒髪ロングの清楚な雰囲気をかもし出すおしとやかな可愛い女の子が柊だ」


「わかった! あの人が柊さんだね」



 尾崎君の言う通り、柊さんは男受けが良さそうな美人で清楚な女の子だ。

 スカート丈も膝上まで上げている月島さんと違って、膝丈ぴったりに抑えている。

 彼女の上品なたたずまいを見ていると、お城に住んでいる深窓の令嬢を思い浮かべてしまう。

 彼女は月島さんとタイプが違うが、10人中10人の人が見惚れる程美しくて綺麗な女の子だった。



「柊菜々香は運動や勉強が出来るだけでなく、クラスメイトや教師達の人望も厚い。完璧超人とは彼女の為にある言葉と言っても過言ではない」


「柊さんってそんなに凄い人なんだ」


「そうだぞ! 柊がいると周りの人間関係が円滑が進むらしいんだ」


「柊さんはコミュニケーション能力が高いんだね」


「俺達とは違ってな。そのコミュニケーション能力の高さから、教師達も柊の事を裏では人間潤滑油と呼んでいるらしい」


「人間潤滑油なんて言いえて妙だね。ネーミングセンスは微妙だけど」


「そうだな。あとこれは噂だけど、ミスコンに月島美羽を推薦したのも彼女らしい」


「そうなの?」


「これはあくまで噂だ。だけどその噂では彼女が月島美羽をミスコンで優勝させるために、ミスコン用の衣装を作ったり宣伝活動を積極的に行っていたらしい」


「へぇ~~~。2人共仲がいいんだ」


「そりゃそうだろう。元々あの2人は同じ中学だったんだから、そうなるのは当たり前だ」


「えっ!? そうなの!?」


「そうだぞ。これは同じ中学にいた奴から仕入れた情報なんだけど、あの2人は中学に入学した時から今のような関係だったらしい」


「そうなんだ。友達がいない僕とは縁遠い存在だね」


「俺とお前を一緒にするな!! お前は知らないかもしれないが、俺にだって友達はいる!!」


「嘘!? 尾崎君って友達がいたの!?」


「当たり前だよ。そんなに驚く事はないだろう」


「だって尾崎君っていつもクラスで1人ぼっちだったじゃん!? そんな人に友達がいるって言われても、僕は信じられないよ!?」


「まぁそうだよな。俺に友達がいると言っても、ネットの中の話だし。神宮寺が知らないのも無理はないだろう」


「ネットの中に友達がいるの?」


「そうだぞ! これを見てくれれば俺にはどれだけ多くの友達がいるか、神宮司もわかってくれるはずだ!」



 尾崎君が僕に見せてくれたのはとあるYourTubeのチャンネルだった。

 彼が見せてくれたスマホにはチャンネル登録者数3万人弱のチャンネルが表示されている。



「何々‥‥‥恭平のお悩み相談チャンネル?」


「そうだよ。実は去年、俺はYourTubeのチャンネルを立ち上げたんだ! 今の所順調に数字が伸びていて、現在の登録者数が3万人。今は年内10万人を目指してる」


「YourTubeのチャンネルを立ち上げたのはわかったけど、それと友達の何が関係してるの?」


「俺がYourTubeで定期開催しているお悩み相談を通して友達が出来たんだよ。去年はみんなでオフ会もしたし楽しかったな」


「その話だけ聞いていると、急に尾崎君が羨ましくなるのが不思議だ」


「そう思うなら神宮司も俺が主催するオフ会に来ないか? 今なら友達割引で料金を安くするぞ」


「えっ!? お金を取るの!?」


「当たり前だろう。場所代だけじゃなくて、食事や飲み物の代金もかかる。こっちだって慈善事業じゃないんだから、もらう物はしっかりもらう」


「それならやめておくよ。僕はそこまでして友達が欲しいわけじゃないから」



 わざわざお金を払ってまで尾崎君と会いたくはない。

 彼とはあくまでビジネス関係なので、これぐらいの距離感が丁度いいと思っている。



「本当にいいのか? 月島美羽や柊菜々香みたいな可愛い女の子もくるぞ」


「それでも僕は遠慮しておくよ。誘ってくれたのにごめんね」



 ネットの中にはまともな人もいるけど、自己顕示欲が強い人の方が多いと聞く。

 下手をすると自分の人気の為に近づいて売名行為をする人もいるので、リアルで会うなら注意した方がいいと昔姉さんに言われたことがある。

 なので基本僕はそういう集まりにはいかない。行くとしても、よっぽど気の合った人としか出かけないようにしていた。



「何だよ、つれないな」


「ごめん」


「そんなに謝らなくていい。急に誘った俺も悪かったからな。またオフ会をする時に誘うよ」


「うん。ありがとう」



 これから先も僕はオフ会に行かないだろうが、一応尾崎君には感謝をしておく。

 このオフ会も彼が僕の事を思って誘ってくれたのだから、その気持ちだけはありがたく受け取っておこう。



『キーーンコーーンカーーンコーーン』


「やばっ!? そろそろ先生が来る!? 早く席に戻らないと!?」


「尾崎君」


「何だ?」


「今年もよろしくね」


「おう。今年もいつも通りビジネスな関係で行こう」



 どうやら彼も僕との関係はビジネスだと思ってるらしい。

 その言葉を聞いて正直ちょっとほっとした。この関係が心地よいと思っているのは僕だけではなかったようだ。



「おーーい!! 全員席に着いたか? ホームルームを始めるぞ!!」



 先生が教室に入ってきたことで先程まで騒がしかったクラスが静まり返る。

 こうして学校生活の始まるを告げる朝のホームルームが始まった。



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ここまでご覧いただきありがとうございます

続きは本日の19時に投稿します。


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