第4話 2人のマドンナ
「ふぁ~~~眠い」
教室に入るなり席に着くと思わず大きなあくびをしてしまう。
僕がこんなに眠そうにしているのには理由がある。それは昨日姉さんと夜遅くまでミーティングをしていたせいだ。
「あれから3時間、休憩なしでミーティングをしてたから疲れちゃった」
結局姉さんとのミーティングが終わったのは深夜1時過ぎ。パソコンの電源を落とした後、疲れ果てた僕は風呂に入るのを忘れベッドで爆睡した。
こんなにミーティングが長引いたのには理由がある。それは企業からもらった案件について、僕と姉さんで話の折り合いがつかなかったせいだ。
僕に舞い込んできた様々な企業案件をどうにか受けさせようとする姉さんと絶対にそれをやりたくない僕。お互いの主張がぶつかり合った結果話が平行線を辿り、15分で終わるミーティングがこんなに長引いてしまった。
「姉さんは何が何でも僕を
必死に僕を説得するあの様子を見るにそうとしか考えられない。
これ程ハイリスクローリターンな仕事もないだろう。配信を仕事にするよりも、普通にバイトをした方が効率よく稼げるに違いない。
「よぉ、神宮司。今日はずいぶんと眠そうだな」
「おはよう。‥‥‥ってあれ? 初めて話すと思うけど、君は誰?」
「お前は俺の名前を忘れたのか!? 去年も同じクラスだっただろう!! この顔を忘れたとは言わせないぞ!!」
「‥‥‥あっ!? もしかして君は、
「やっと思い出してくれたか」
「うん! 体育の時とか科学の実験中に2人1組のペアを作る時、僕達だけあぶれるからしょうがなく一緒のペアを作ったんだよね」
僕と尾崎君はいわゆるビジネスパートナーと呼ばれる関係だ。
お互いクラスにいる時は干渉しないけど、必要に応じて協力する。そんな血も涙もない関係である。
「そんな悲しい事をいうなよ。俺達は数々の戦場をかいくぐってきた戦友だろう?」
「学校でペアを作る時だけの関係じゃなければ、その言い回しは格好いいんだけどね」
「そんなことはどうでもいい!! それよりも今日は神宮寺に話があってきたんだ」
「僕に話?」
「そうだ」
尾崎君が僕と話をしたいなんて珍しい。去年僕が彼に話しかけようとしたら、『必要な時以外は話しかけるな!!』と言っていたのに。どういう風の吹き回しだろう。
「時に神宮司。今年俺達がクラス分けで大当たりを引いたことは知ってるよな?」
「そんなこと知らないよ。そもそもクラス分けに当たりはずれなんてあるの?」
「あるに決まってるだろう!! クラスに可愛い女の子がいるかいないかで、この1年のモチベーションが大きく変わってくる!!」
「そんな力説しなくても言いたいことはわかったから!? 少し落ち着こう」
「わるいわるい。少々取り乱した」
いつもは物静かな尾崎君がこんなに興奮するなんて珍しい。僕は周りをあまり見ないからわからないけど、そんなに可愛い子がこのクラスにいるのかな?
「神宮司はクラス名簿を見なかったのか?」
「見たことはあるけど、上から下までしっかり見たわけじゃないよ。始業式の日は自分がどのクラスになったのか確認しただけだったし。他の人の名前まで見てなかった」
「そんな鈍感なお前に朗報だ。クラスの中央を見て見ろ」
「中央? あの女の子が4人固まっている所を見ればいいの?」
「そうだよ。あの4人の中に
「月島さんと柊さん? 誰? それ?」
「またまた冗談ばかりいって。柊の事は知らないかもしれないけど、月島美羽のことは知ってるだろう?」
「名前は聞いたことある気がするけど‥‥‥どこでその名前を聞いたか全く思い出せないんだよ」
去年どこかでその名前を聞いた気がするけど、どこで聞いたか忘れてしまった。
月島さん、月島さん‥‥‥‥‥あと少しで思い出せそうなのに。どうしてもその名前が出てこない。
「思い出せない神宮寺の為にヒントをあげよう。お前は去年文化祭で行われたミスコンを覚えてるか?」
「ミスコン‥‥‥ミスコン‥‥‥‥‥あっ!? わかった! 月島さんって去年のミスコンで1位を取った人でしょ!?」
「ようやく思い出したようだな。月島美羽は1年生ながら、上級生を抑えて1位になった程の美貌を持つ女だ」
「そんな人が僕達と同じクラスなんだ」
中央に固まっている4人の女子を見ると、1人だけギャルっぽい格好をした女の子がいる。
たぶんあの人が月島さんに違いない。あの人懐っこい笑顔は去年ミスコンが行われた時、ステージの壇上で見たような気がした。
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ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
続きは明日の8時頃投稿しますので、よろしくお願いします
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