第3話 コラボ相手はVTuber!?
「姉さん、この情報おかしくない?」
『何がおかしいのよ?』
「僕の見間違えじゃなければ、パソコンの画面には人間じゃなくて3Dキャラクターが表示されてるよ」
『それは斗真の見間違えじゃないわ。貴方がコラボする相手はVTuberよ』
「VTuber? 何それ?」
『VTuberはバーチャルYourTuberの略語で、2Dまたは3Dのアバターを使って活動しているYourTuberの事を総称して呼んでるの』
「へぇ~~~。そういう活動をしている人達がいるんだ。今の技術って凄いんだね」
『凄いなんてものじゃないわよ。今の技術だと2Dで描かれたキャラクターが人間の動きに合わせて、ヌルヌルと動くのよ』
「2Dってことは、自分で描いた絵が人間の動きに合わせて動くの!?」
『そうよ。モーションキャプチャーのアプリをパソコンに入れる必要があるんだけど‥‥‥その辺りの話はまた今度するわ』
最近の技術はここまで発展してるのか。一昔前は2Dで描かれたキャラクターが人間の動きに合わせて動くなんて考えられなかったことなので、すごく驚いている。
「姉さんはやけにVTuberについて詳しいね。もしかしてVTuberの配信をよく見てるの?」
『もちろんVTuberの配信は毎日見てるわ。私がやっている芸能事務所はVTuber専門の事務所だから、そのサポートの一環として見てるの』
「VTuber専門の芸能事務所!? そんな事をしてるなんて、僕初めて知ったよ!?」
『当たり前でしょう。私だって今初めて貴方に言ったわ』
芸能事務所をやっているという話は前から聞いていたけど、どうやら僕が考えていたような事務所ではないらしい。
アニメや漫画に興味がなかった姉さんが最近妙に詳しくなったのはこういう理由だったのか。確かにそういう業界にいれば、その手の情報に自然と詳しくなるはずだ。
『それよりも話を戻すわよ。今回貴方がコラボする相手は神倉ナナという個人勢のVTuberよ』
「個人勢? VTuberって派閥でもあるの?」
『派閥じゃないわよ。企業に所属してないVTuber達の事を総称して個人勢と呼ぶの』
「なるほど。そうなんだ」
『ちなみに企業に所属している人達の事を企業勢とも言うわ。これから貴方もそういう人達とコラボする事が増えると思うから、覚えておいて損はないと思う」
確かに姉さんの言う通り、僕はVTuberのことについて何も知らない。せっかくコラボをするんだし、これを機に1度VTuberについて詳しく勉強しておいた方がいいかもしれない。
「でも姉さんは何で企業に所属しているVTuberじゃなくて、個人で活動しているVTuberを選んだの?」
『それは私の直感よ』
「直感!? 大切な弟のコラボ相手をそんな安直な理由で決めていいの!?」
『いいに決まってるじゃない。今回色々な人が斗真にコラボ配信のオファーをくれたけど、その中でもこの子が利害関係を抜きにして、純粋に配信を楽しんでると思ったから選んだのよ』
「そうなの?」
『そうよ。あとで彼女の配信アーカイブを見ればわかると思うけど、とりあえず今は画面共有しているキャラクターを見て』
パソコンの画面に映し出されたキャラクターは神社の巫女のような格好をしている。
赤い髪で両目は黄色と青のオッドアイ。外国から来た女性が巫女のコスプレをしているような姿をしていた。
『この子の名前は神倉ナナ。チャンネル登録者数は50万人を超える、個人勢の中では大物と呼ばれてる人よ』
「確かに登録者数はものすごく多い。でもこの数字を見る限り、さっき姉さんが言っていた再生数が欲しい配信者と一緒なんじゃない?」
『私も最初はそう思ったわ。でもこの子は他の配信者達と全然違う考えを持ってるの』
「どういう事?」
『この子は今まで斗真にオファーをしてきた人達とは違って、純粋に貴方と遊びたいみたいよ。彼女の配信内容と送られてきたメールの文面を見て、そう判断したの。今神倉さんが斗真宛に送ったメールを共有するわね』
そう言って姉さんは神倉さんが送ってくれたメールの文面を僕に共有してくれた。
そのメールには僕が思わず読むのを躊躇するような長文が書かれている。
正直この文面を見た瞬間若干引いた。全ての文面を読んだわけではないが、僕に対してものすごく熱烈なラブコールを送ってくれていることだけは、この文面から読み取れる。
「もしかして姉さん、このメールを全部読んだの?」
『もちろんよ。そのメールを読んだ後、すぐに彼女の配信を見たわ』
「姉さんはそこまでしたの!?」
『当たり前でしょう!! 公式以外で初めて配信に出る弟の為だもの。初めてのコラボ相手は慎重に選ぶわよ』
やっぱりこういう時の姉さんは頼りになる。
あの時僕のサポート役に姉さんを選んでよかった。
『それにこれも私の直感だけど、この人は確実に斗真と合うわ』
「僕と合うってどういうこと?」
『それもこの人の配信を見ればわかるわ。あとでこの人のチャンネルと配信アーカイブのURLを送るから、1度配信を見てみなさい』
「わかった」
『それを見てこの依頼を受けるか判断してくれればいいから。もしこの人とコラボしたくなったら連絡を頂戴。いい返事を待ってるわね』
いつもはこういう話を強引に決める姉さんも今回ばかりは慎重だ。
それだけ配信業というのは難しいのかもしれない。特に今回は公式配信ではなく個人配信になるので、尚更慎重になっているようだ。
『でも、神倉ナナの配信アーカイブを見る時は心して見てね。もしかしたら斗真にはちょっとだけ刺激が強いかもしれないから』
「どういうこと?」
『それは彼女の配信を見てもらえればわかるわ。じゃあこの話は一旦これで終わり。次は企業からきた案件について話すわね』
「お願いします」
気になる話は色々あったけど、それは後で神倉さんの配信アーカイブを見れば全部わかることだ。そういう事はあとで考えればいいので、今は気にする必要がないだろう。
僕はこのコラボについて一旦忘れ、姉さんが持ってきた仕事の話を聞くことにした。
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ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
続きは本日の19時頃投稿しますので、よろしくお願いします
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