03.次女(水瓶座)
怖がりなのを治したかった。
美人過ぎて怖いと言われた。
同性の知り合いからの、恐らく、彼女からすれば褒めているつもりの言葉。
その言葉は、私の胸に鈍く突き刺さった。
痛くて、悶えて、嫌でも、それを相談した相手は皆、揃って自慢だと思った。
生まれつきの目付き。
私は、性格だけでも明るくいようと決意した。
無理だった。
皆が思う私は、私のなりたい私と正反対だった。
皆が思う私は、私だった。
悔しかった。理想なんて叶わないと、成長してから尚実感して、苦しい思いをした。
苦しい思いをした、なんて、こんなの言いたくなかった。
なんで私が弱みを吐かないといけないんだろうか。
吐くべきは、気にするべきは私ではなく、あの彼女なのに。
そう思った私は、ナイトクラブに入った。
やかましい音楽、そしてアルコールの匂い。甘い香水の匂い。汚い匂い。
鼻をつまみ、人を掻き分けながら奥へ足を踏み入れる。
私がやっとの思いで到着したそこは、いわゆる、VIP席と呼ばれる、この店が選んだ金持ちが集まる場所だった。
怪訝な目で見られる私。
胸元からカードを取り出すと、彼らは揃って顔を見合わせ、私を招き入れた。
「お姉さん、来るの初めて?」
「お酒とか飲むの?」
初めてだった。
見た目で怖がらず、私を受け入れ、お姉さんとして、一人の女として扱われたのが。
お酒を一口飲み、踊っている人達を見た。
彼らは楽しそうだった。
俗世を忘れ、音楽や、踊りに身を委ねている彼らは、楽しそうだった。
中にはスーツのまま、足が開きにくいスカートで踊っている人もいた。
スーツなんていう踊りにくい服でよく踊れるな、なんて思いながら、もう一口お酒を飲んだ。
よかった。そう思った。
「お姉さんはここ初めてなの?」
「はい…客として、来るのは、初めてです」
「……客として?」
不思議そうに目を丸くする少女。
よく見ると可愛い顔だな、なんて思いながら彼女に微笑みかける。
すると彼女は、私の真似をして微笑んでから二度頷いた。
彼女とそうしてコミュニケーションをとってから、私は、立ち上がり、所謂お立ち台と呼ばれる場所へ向かった。
マイクを持ち、フロアに集まる人達にこう宣言した。
「今日のお代はオーナーの私が持ちます。皆様、俗世を忘れ、心行くまでお楽しみください」
拍手が起こる。
私は堂々と、胸を張ってこう言った。
「私の事はオーナーではなく、帝王とお呼びください」
舐め腐るなよ人間。私は昔から何一つも変わっていない。
見下すな人間。
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