05.Interlude


 埃っぽい地下室。僕と悪魔は見つめあった。

「あの、大男」

 僕の言葉に、悪魔は目を見開いた。

「覚えていたんですか?」


 端正な顔立ちに大きな体格。悪魔のことをどこかで見たと思っていたら、少女が閉じ籠り、けたたましい笑い声をあげた時「悪魔に乗っ取られた」と呟いた大男がそうだった。


「あれも演じろと僕の義妹に言われたのか?」

 悪魔は頷いた。

「ええ、貴方が思っているよりイプシオンさん…いや、座長は…強かで恐ろしい人ですよ」

 僕は答える。

「知ってる」

 悪魔は頷いた。

「ならいいんです、分かっているなら話が早い」


 悪魔と僕はそのまま、見つめあった。


「……あの、弟の鞭は?」

「劇場の小道具です、それを渡したのは劇場の人間。それを貴方に見つけさせるため、クローゼットに隠せと命じたのは座長です」

「…待て、劇場の、人間?」

「詳しいことは座長から聞いてください、私達がすべきことは他にある」

「……そっか」

 悪魔は立ち上がった。

 僕も同じように立ち上がると、ふと悪魔の靴に目がいった。


「部屋にあった大きい靴は君のものだったんだね」

「ふふ、そうです、貴方に見つけて貰うために…私が隠しました」

「そうなんだ」

「ええ、でも…靴の大きさを知られるって、ちょっと照れ臭いですね」

「照れ臭いものなの」

「照れ臭いですよ、だって…」


 悪魔は何かを言いかけてやめた。

 

「……どうしたの?」

 顔を覗き込むと、悪魔は照れ臭そうに僕にこう尋ねた。


「あ、あの、貴方、とか、お兄さん、とか、そういう呼び方じゃなくて」

「?うん」

「…ベクさんって、呼んでいいですか」

「……え?あ、い、い、い、いいよ?」

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