04.♡♡24/7♡♡

 僕は変わらず捜査を続けた。


 劇場の全てを見た。

 全てを漁って、全てを捜査したが、大した成果が得られず悩んでいると、ふと、思い出した。


 深夜、唸り声が聞こえると噂の。

 幽霊が出ると噂の地下室を思い出した。

 その地下室に、もし、本当に悪魔がいたら?

 幽霊なんて信じていないくせに、悪魔を信じて地下室に向かった。

 今思うと、馬鹿だったと思う。

 でも、その時の僕は藁にも縋る思いだった。

 弟の無実を証明するため。

 弟を罵る馬鹿を見返すため。



 地下室に足を踏み入れると、目の前に現れる黒ずくめで、背丈がやけに大きい影。

 まさかこいつは、僕の義妹が苦しんでいる元凶の悪魔か?

 そう思った途端、影が僕へ飛びかかった。


 押し倒され、床に押さえつけられる僕。昔から人と喧嘩などした事が無かった僕には、悪魔らしき大柄の影を突き飛ばすことも、こいつの顔を一発ぶん殴ってやることも出来なかった。


 すると、大柄の影は抵抗のしない僕を不思議に思ったのか、手を離し、僕の顔をまじまじと見つめた。



「…」

「…!」

 直感でこう思った。こいつに勝てるかもしれないと。

 こいつを突き飛ばし、さっきのように押し倒してから首元を押さえつけると、大柄の影は驚いたようだった。


 それから、しばらくそうやってお互いをひっくり返したりして遊んだ。

 呑気に思えるだろうが、こうやって誰かと転げ回るなんて、僕の人生で初めての事で、ついつい熱中して影と遊んでしまった。

 しかしそれは影も同じだったようで、殴れない僕を、殴れない自分を笑いながら何度も転げ回っていた。


「あ、貴方、なんなんですか」

 息を切らし、床に寝転ぶ影にそう言う僕。

 よく見ると影は端正な顔つきで、どこかで見たこあるような顔で、背丈に似合わず童顔だ、なんて思っていると、その影が突然、僕の名を呼んだ。


「貴方は、私が思っていたよりも不思議な人だ。ベク・ルックスさん」

 それを聞いた僕はひっくり返った。これは比喩。

「ベク・ルックス…その名の通り、お美しい方だ」

 僕はまたひっくり返った。これは比喩ではない。


 影はクスクスと笑ってから、こう続けた。

「自己紹介をしましょう。私は、悪魔です」

 僕はまたひっくり返った。

 悪魔と名乗った影は僕の肩を抱き受け止めた。


「あ、悪魔……?」

 僕の言葉に、悪魔は頷いた。

「……と、言えと、言われました」

「…誰に…?」

「イプシオン・ルピー、あなたの、義妹です」

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