ユニークジョブ、巨根

馬車に揺られること数分、町には到着したんだけど一つ問題があった。


なんでも身分証が無いと入れないらしい。いや、無くても入ることは出来るんだけどその場合は冒険者ギルドの預かりになるらしい。


おっさんが町の入り口の兵士に話してくれてるらしく俺が追いはぎにあって全裸で立ち尽くしてたって伝えると兵士も納得してくれた。

おっさんには感謝しかないな。


「そういう事なら冒険者ギルドで身分証の再発行だな。ただし入って十日以内に銀貨1枚を納めてもらうことになる。それが出来ないのであれば町から追放となるからせいぜい頑張りな。」


兵士は別に珍しいことを言う風でもなく俺にそう伝えた。


「あ、はい、色々とありがとうございます。」


仮身分証みたいなのを兵士から受け取り中に入った。



すげぇ!女騎士さんやおっさんを見たときになんとなくわかってたけどここって中世ヨーロッパって感じの正によく見る異世界転生モノの舞台だ。

レンガ畳の道もそうだけどハイテクなイメージのものが一切ない。

家の煙突からはもくもくと煙が上がってるし街灯もランプ?ガス灯?そんな感じだ。


「んじゃあ俺は仕入れた服とかを卸に行ってくるわい。俺の店はそこの防具屋だから装備を整える時は是非ご贔屓にな!」

おっさんがそう言って指を差した先にはこじんまりとした店があった。


窓から見える店内には誰もいないし明かりもついてないからおっさんがひとりで経営してるんだろうか。


「何から何まで本当にありがとうございました。とりあえず冒険者ギルドに行ってみますね。」


「おう。納税に追われてあんまり無理な依頼を受けるんじゃないぞぃ。」

俺は手を振ってその姿が見えなくなるまで頭を下げていた。



おっさんと別れて教えてもらった冒険者ギルドの場所まで歩いたのだがあまりにもきょろきょろしていたのか何人かに不審者でも見るような眼を向けられた。

それでも通報された雰囲気が無いって事は多分俺の事を田舎者か何かだとみんな思ったんだろう。


冒険者ギルドの入り口の前に立つとそこからすごいにぎわってる声が聞こえてくる。

なんて言うんだろ西部劇のバーでよく見るような入口のパコンパコン開くやつだから中の声や様子が丸わかりだ。


パコンパコンってなんかエロい響きだな。


冒険者って人たちなんだろうな。

めちゃくちゃ体育会系のガタイのいい男の人たちばっかりだし陽キャな集まりの雰囲気を感じる。あ、女の人もいるなぁ。数は男性の方が多いけど女性も少なくはない感じ。戦士っぽい人もいれば魔法使いっぽい人もいる。


緊張するなぁ。


誰かに絡まれたりしないかな。


こっちはちょっと駅の階段の上り下りするだけで息が切れる中年男性だぞ。気づいたら腹は出てるし学生時代は運動部にも所属せずにだらだらして、ちょっと前までネットでエロ動画漁る休日の過ごし方をしてたからなぁ。


いや、俺は冒険をするために転生したんじゃないんだよ。セックスがしたくて転生したんだった。


魔王とかいるのかなぁ・・・


まぁそっちはいれば勇者様に任せよう。


あ、そう考えたらちょっと気が楽になったかも。

もう、行っちゃえ。


カランコロンカラン。


周囲を見渡すと沢山の冒険者が飲んでいる。

こっちを気にすることなくみんな飲んだり騒いだりしている。


「いらっしゃい」


声のした方を見るとカウンター越しに女性の店員さんが俺を見てる。くすんだ茶色の髪色をしているが顔の作りが良い。メイクはほとんどしていないようでアクセサリーの類も耳にピアスが光ってる程度だ。というよりもそんなことよりおっぱいが大きい。赤いチューブトップの衣装がエロい。


揉みたい。しゃぶりたい。顔をうずめたい。


童貞の俺からしたらそのサイズがFカップなのかHカップなのかすら判断が付かないからそれを考えるだけでも幸せな気持ちになれるから不思議だ。

まさか初対面の女性にサイズを聞くなんてことは出来ないからそんなことはしないがいずれはパっと見ただけで胸のサイズが分かるようになるまでになりたいものだとつくづく思う。


「いらっしゃい。何にする?」


女性はメニュー表を持って俺に問いかけてきた。


「あ、いや、実は追いはぎにあいまして身分証までもっていかれちゃったんですよ。門番の兵士さんに伝えたところ、こちらで身分証の再発行をするように言われたんですが。」


「あら、それは大変だったわね。だったら仮身分証をもらえるかしら。」

「あ、はい。こちらになります。」


仮身分証を受け取ると女性は何か水晶のような丸い玉とカードを持ってきた。


「えーっと、スズキさん?変わった名前ね。まぁいいわ。はい、こちらに手を置いてね。」


言われるがまま、水晶に手を置く。


青い水晶をのぞき込むと中心部分で黒いモヤモヤがぐにゃぐにゃと動いているのが見えた。手を置くとぐにゃぐにゃが更に激しくなった。ぐにゃぐにゃが大きくなり水晶全体が真っ黒い玉になる。


「え・・・・、なにこれ。こんな反応初めて見た・・・」


女性がなんか怖いことを言ってる。


真っ黒の玉がおとなしくなったと思った瞬間、一気に白く光る。


目を背けると横に置いていたカードも光りだした。カードに文字らしきものが浮かび上がってきている。


なんぞ?と思っていると水晶、カード共に光が消えカードには色々な事が書かれているのが分かった。


「はい、出来上がり。これがあなたの身分証よ。一応説明しておくと・・・って。ぷぷ。」


なんだろ。

なんか変なことが書かれるのかな。


「あははははっはははは、初めて見たわ、こんなジョブ!!!あなた何者なの!!!!」


えぇ・・・。

なんだろう、女子に身体測定や運動テストの結果を見られてるような恥ずかしさを感じる。なんて書かれてるんだろう。


「あの、すみません。私こっちの国の出身じゃなくて文字が読めないんですけどなんて書かれてるんですか。」


女性は笑いすぎてカウンターの下にうずくまっている。

なんなんだよ。マジで。


ヒィヒィ言いながら女性が立ち上がると笑いすぎたのだろう、肩で息をしながらこっちを見る。

涙目になってんじゃん。


「ジョ、ジョブが・・・、あんたのジョブ、巨根だってさ!」




マジかよ・・・

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