エピローグ

 2学期最初のHR。昨日で夏休みが終わった。


「優香、一緒に帰ろ」


 日直の号令を終えると花凛が私に声をかけた。

 今日はいつにも増して輝いた表情をしている。


「いいけど、彼氏は?」

「別れた。夜道に女の子を置いておく男なんて碌な奴じゃないと思ってね」

「いい判断だと思う」


 私たちはバッグ片手に二人で教室を出た。


「それにしても、なんで優香は『ぼや騒ぎ』なんてしたの?」

「若気の至りってやつかな」

「それ、おじさんが言う言葉だよ」

「うるさいな。私だって青春したかったの」

「なにそれ。歪んだ青春だね。でも、警察に追いかけられた優香が私のところに来てくれたおかげで私はここにいる。これって運命かな」


 親友は私の腕に自分の腕を絡ませた。

 もしかすると、私が青春を歪ませてしまったのと同じように、彼女も性癖を歪ませてしまったのかもしれない。


「さあ」


 まあ良いとしよう。私は親友の手を握った。

 どうなっても、今ここにいてくれるだけでありがたい。


 うるさかったセミの声はもう聞こえてこなかった。

 私だけの長い長い夏がようやく終わりを告げたみたいだ。

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【短編】終わらない夏休み 結城 刹那 @Saikyo-braster7

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