第10話 実戦と甘味処
「平助くん、少し休んだら?」鈴音は庭で稽古をしている平助に声をかけ、水と手ぬぐいを渡した。
「ありがとう。」平助は水を喉に流し込んだ。
鈴音は平助が持っていた木刀を見つめ懐かしむように「私も稽古したことあったよ」と呟いた。「そっか。鈴音は道場のお嬢さんだったんだよね。もしかして、実戦出来たりする?」平助は目を輝かせた。「できるよ。実家にいた頃はやってた時期もあったし」鈴音はふふっと笑った。
平助は「実戦やってみない?俺退屈してたから」と木刀をもう1本渡した。
鈴音は少し笑い「久しぶりだから、身体訛ってるよと言いつつ、下ろしていた髪を1つに結んだ。
「いつでもどうぞ」その言葉で攻撃が開始した。
鈴音は平助の足を狙ったが、ひょいとかわされ、背を狙われたが鈴音は弾き返した。
それには想定外の平助は息を飲んだが持ち直した。
ーー肩、腰、足全ての動作を...
鈴音は腰を狙った。平助は攻撃を避け、すぐさま攻撃を仕掛けた。
鈴音は次の攻撃を見極め、一瞬の隙を攻撃していた。
そうして、少し戦闘をした後決着が付かず終わりにした。
「す...鈴音すごい」平助は息を切らしつつ鈴音の裁きを褒めた。「ありがとう。平助くんも流石だね」鈴音も息を切らしていた。
「鈴音って女だから男の俺よりは身体も力も弱いけど、その分すばしっこくて、一瞬の隙をよく見てる」平助の分析に鈴音は「流石、わかってたんだ」と笑った。
「すごかったよ。鈴音ちゃんは」後ろから声をかけられたかと思うと鈴音の身体は誰かに包まれていた。
「永倉さん?!」平助は驚いた目で新八を見つめた。
鈴音は我に返り、見上げると目の前に新八の顔があり、抱きしめられていると悟り頬を赤らめた。「鈴音ちゃん、頬が赤い。俺に見惚れた?」新八はいたずらっぽく鈴音の頬を撫でた。
鈴音は混乱したように目を泳がせた。
新八はクスッと笑い「鈴音ちゃんの戦闘良かったよ。動きに無駄が無かった」と褒めてくれた。
「本当ですか?ありがとうございます」鈴音は嬉しそうに笑った。
新八は鈴音を抱きしめていた腕を強くした。「君は愛らしいね。どう?俺との時間を」「永倉さん!!鈴音を誘惑しないでください」新八の誘惑に平助は止めに入り、新八から鈴音を引き剥がした。
「全く、藤堂君も素直じゃないな」新八は呆れたように笑った。
鈴音は混乱し平助と新八を見比べた。
新八は混乱している鈴音を見つめると「そうだ。近藤さんから伝言があったんだった」と思い出したように言った。「藤堂君、鈴音ちゃんを町に連れて行きなさいだってさ。鈴音ちゃん、屯所に来てから1月くらい経ってるけど、1回も外に出てないでしょ?」新八は鈴音の方に目線を向けた。
鈴音は少し考え「そう言えば、外には出ていませんね」と答えた。
「え?!あっでもそっか。」平助は1人で納得し「わかった。鈴音、今から町に行こう」と鈴音に優しく微笑んだ。
鈴音は目を輝かせ「ありがとう。平助くん」と楽しみな気持ちを持ちながら、自室へ向かった。
◇◇◇◇
残された、新八と平助は優しく鈴音を見守った。
「平助くん〜。鈴音ちゃんをしっかり見ていないと、襲われるよ」新八は平助の頬に指を当てた。
「わがってますって」平助は鬱陶しがるように新八の手を払い除けた。
◇◇◇◇
平助は屯所の門の前で待っていると、「平助くん。お待たせ」鈴音の声が聞こえ振り向いた。
鈴音を見ると目を丸くした。
桜色の鈴と桜が描かれた着物。
下ろした艶のある綺麗な黒髪。
その黒髪には平助が贈った簪がつけられていた。
「平助くん?」鈴音は平助を見上げた。
鈴音に呼ばれた、平助は我に返り「鈴音、綺麗だよ」と言った。
鈴音の頬は赤く染め、少し俯いた。
「えっと…平助くんが選んでくれた簪、可愛くて気に入ったの」鈴音は話題を少しずらすように簪に触れた。
「選んでよかった。俺小物集めが好きだからさ、いつも行ってる店で偶然、鈴音に似合いそうな簪見つけた」平助は無邪気に笑った。
◇◇◇◇
「今日も町は賑わってる」平助は歩きながら鈴音に声をかけた。
鈴音は3歩後ろを歩きつつ「そうだね」と答えた。
「鈴音。最初はどうしたい?」平助に聞かれ、鈴音は少し考え「美味しい甘味処が知りたい」と答えた。
平助は少し笑い「いいよ。」と答えた。
◇◇◇◇
しばらくし、甘味処に着き床机に座り甘味を幾つか頼んだ。
「美味しい〜」鈴音はお団子を頬ばった。
「鈴音、これも食べてみなよ」平助は金平糖を鈴音の口に金平糖を入れた。
「甘い…」「小動物を餌付けしてるみたい」平助はいたずらっぽく笑った。
鈴音は頬を赤らめ、甘味の味に集中した。
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