第2話、兄との別れと出会い

夜が明けたばかりの頃。村にある一際大きな屋敷の前で朝日を見ている少女がいた。

彼女は、鈴音すずね。歳は15だ。

「鈴音、見送りありがとう」屋敷から出てきた美青年が鈴音に優しく微笑んだ。

彼は、れい。鈴音の実兄だ。

鈴音は零を見上げると「零兄さん。大丈夫なの?」と瞳を震わせた。零は安心させるように笑いながら「心配しないでいいよ。鈴音は自分自身のことを心配しよう」と頭を撫でた。鈴音は嬉しそうに笑うと、「わかったよ」と頷いた。


ーー何を言っても無理そうね


鈴音は苦笑し、零を改めて見つめた。「行ってくる。鈴音、決して無理はするな」零は鈴音の肩に手を置いた。相変わらずな心配性の零に、鈴音はふふっと笑いつつ「心配しないで。私は大丈夫。」と安心させるように言った。零は優しく微笑むと、そっと鈴音の腕を引き、鈴音を胸に寄せた。そして「すぐ帰って来る」と優しくつぶやき、鈴音の頭を撫でた。鈴音は目に涙を溜めつつ「ありがとう。零兄さん…速く帰ってきてね」と零にぎゅっと抱きついた。


◇◇◇◇


零の姿が見えなくなり、鈴音は気を取り直すように胸に手を当て、息を吐くと「おい」と低い声で呼ばれ息を飲み込んだ。

「父上様…」鈴音は恐怖で足が震えた。すると勢いよく腕を捕まれ屋敷に引きずられそうになった。「すみません!!謝りますから!!」鈴音は泣き叫ぶように声を上げ、抵抗した。更に腕を捕む力が強くなり「零がいなくなった代わりはお前だからな」と言われ屋敷に引きずりこまれた。


◇◇◇◇


零の別れから、一月ほどが経過した。鈴音は毎日、殴られ蹴られると言った暴力ばかり浴びさせられていた。

その痛みを感じるたび、零の辛さがわかったような気がした。そして、申し訳なさと罪悪感で押し潰されそうだった。


ーーごめんなさい…零兄さん…


鈴音の目から涙が溢れた。痛みからか、辛さからか。

すると、ドサッと音がした。鈴音は少し目線を上げると目の前で父親が血を流し、倒れていた。鈴音は何かわからず見上げると、男三人が鈴音を睨むように見下ろしていた。そして、髪を乱暴に捕まれ、強く投げられた。運が悪く、鏡が左眼に当たり、破片と共に、血が流れた。男三人を睨むと鈴音は、息を飲んだ。それは、恐ろしさではない。

「みえ…ない…」鈴音は思わず口に出してしまった。男達は、刀を鈴音の首近くに当てた。「ここで死ね。」と冷たく吐き捨てられた。鈴音は我に返り、今にも切れそうな刀を避けた。そして、懐に隠していた、小刀を取り、「うわぁぁぁ‼️」と男に飛びかかった。すると、鈴音の小刀を誰かに弾かれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る