大惨事に巻き込まれた主人公の男性と女子高生。
脳移植で主人公の脳を女子高生の身体に移植することで心を繋ぎ止めるのですが、その先で偶然にも主人公が契りを交わした恋人に教師と生徒という立場で再会するのです。
そこから物語は加速します。
移植の際、性別や『身体』が変わってしまっても、主人公の恋人を想う『心』は変わりませんでした。
想いの人と歩く、追憶の情景。なんだか、昔のあの人といるみたいと、彼女の隣が主人公とは気づかないまま、流れる時間が凄く切ないのです。
純粋な気持ちが繊細な筆致で綴られ、心の機微も美しく、感情の水面を揺らすような愛しい儚ささえも瞼の裏に浮かぶようです。
この小説は百合でも恋愛でもない、それらの枠組みを超えた心の物語であると思えるのです。
女性の身体へと変わっても、相手の幸せを切に願うその思慮の深さは、どこまでも純粋そのもの。
時が過ぎ、あなたの背中が思い出に変わったとしても。
最後は優しい嘘をついて、さようなら。