悪役の友達はみんな悪友。


今日は月曜日。


もちろん祝日ではないし、登校日である。

いや〜、体が拒絶反応起こすんだけど?

久しぶりに登校した日も、保健室しか行ってねえし(あと、職員室か)

過去に多大な迷惑をかけちまった人も見つけたし。

俺がいないほうが中学が平和なのは当たり前だ。

つまり、登校しなくてもいいのでは?


結局最後はこの思考に行きついてしまう事を俺は知っていた。

でも、登校する以外の選択肢はない。

だって、俺には『高校進学』という選択肢があるからだ!

今は、ただ内申だけが欲しい。

出席日数も危ういし。


『お姉ちゃんの高校に入学しない?伊久磨君も気に入ると思うな~』


この前の蜜花との会話がフラッシュバックする。

お姉ちゃんの通っている県立高校は丁度、全体から見て中堅より少し高い。

偏差値55~60ぐらいな?

……もちろん、不登校暴君キッズの俺がそう簡単に行けるレベルではないだろう。

努力は欠かさないつもりだけど、あわよくば、蜜花の通っている高校に行きたいなっていうのが本心。


伊久磨は反抗的に見えるが、実は蜜花をずっと慕っていたのかもしれない。


「授業に参加か、とにかく今日を乗り切らなくては……」


教室に行ったらどんなこと言われるんだろ?

多分、友達もいないだろうし、休み時間は机に突っ伏して終わるだろうな。

スマホ持ってくことが出来ないだろうし、授業以外は本当に暇だ。

しかも班で作業する授業どうすんの?

その時は、クラスの平穏を保つことを第一に考えて、俺だけ屋上に避難させてもらいます。

授業放棄オラオラァ!!


まあ、事前に電話で今日登校する旨を伝えてあるし、

そこ辺りは配慮してもらっていることを願おう。


俺は遂に家から出た。

周囲は通勤、通学する人に溢れており、時間は7;30。

これまでは昼頃に起きるような生活習慣を続けていたようで、

今日の早く家を出る行動は前世よりも新鮮さあった。



~~~~~~~~



あれから特に何もなく、遅刻せずに学校到着。


そして保健室に行こうとする本能的な行動を制御し、

俺の所属しているクラスである、3組に向かった。

記憶の断片だけで推測したけど、間違えてないよな?


俺は教室の前で少し落ち着きを払おうと、深呼吸する。

イジメられている可能性も覚悟したからだ。

なにせ俺はクラスに対してこれまでどれ程の迷惑をかけて来たかが計り知れない。

もしかしたら、机の上が落書きだらけになって居ることもあるかもしれんし……


そして、教室のドアを開けた。


目の前には、前世の時となんも変わりがない授業前の光景が広がっていた。

たとえば、グループでお喋りしていたり、

教室の後ろで一部の男子が、馬鹿なことやって居たり、

また、影の者陰キャは周囲との関りを遮断して趣味に没頭していた。


どちらかというと俺は陰の者と仲良くなりたい気がする。

グループで話して疲れるの嫌だし、

かといって、俺の精神年齢的に教室の後ろでやってるような馬鹿な事をしたい歳でもない。

……まあ、伊久磨の体は馬鹿な事をするのを求めているけどな!!

お前、俺が宿る前にあーゆー奴と絡んでたんか?



「伊久磨君……?」


不意に横から声をかけられる。

しかも聞いたことが普通にあるような声……。


顔を向けると、そこには神崎がいた。

心臓の脈動が早くなる。

え?まさか同じクラスだった??

先生には学校に来ることは伝えたが、もちろん生徒には全く伝わっていない。

だから神崎はとても驚いた様子で、俺の事を見ていた。


もちろん、その後にチラホラ俺に気付く人が現れた。

だけど、大体が目を逸らしたから別に気まずくもなんともなかった。

後ろのやんちゃそうなやつも俺の事は完全にスルー。

良いね。無理してまで俺に構う必要性は感じないぜ。


あと……凝視しているのは神崎だけってか。

俺はどれだけのヘイトを神崎から買っちまったんだ?

まあ、そりゃそうだよな。

流石にこんな奴に押し倒されたら、恨みしか湧いてこない。


居た堪れない気持ちしか湧いてこないので、神崎の言葉に、

俺は気づかないふりをしながら、

窓際のちょうど真ん中の席に座った。


一応、机を確認したが、特に他の人による意図的な破損や落書きなどは見つからなかった。

強いて言うなら、俺が机を削って落書きをしていたぐらいかな。

これは俺がコンパスの針で書いたという記憶がある。

しかもアンパンマンもどきを書いていたという…、この年にして恥ずかしさしか感じない。


とりあえず机の落書きは無視しよう。


その後、俺は隣の席の子を確認したいためふと横を向いた。

そこにはあまり記憶に無い、女子がいた。

記憶に無いってことは多分、席替えをしてから初めてのクラス登校なんだな俺。

その女子の方も俺が来るというのは予想外という様子で、

ずっとビクビクしていた。


え、なんかめっちゃ可哀想なんだけど。

たしかに、不登校だった不良が急に学校に来られても困るのは頷ける。

しかもこれからは内心を稼ぐために、ずっと学校に来るわけだ。

うーん、この子の心臓が持つか分からないな。


「(^▽^)」←無言


いつも誰かを貫くような鋭い視線しか持ち合わせていない俺。

隣の子を安心させるために今絶賛、作り笑顔発動中です。

やっぱ、フレンドリーな雰囲気を醸し出していないと誰とも仲良くなれないのですよ。

これでどうだ?

俺は隣のこの反応を確認する。


「……!ごめんなさいぃ」ビクッ


しかし、その女子の反応は俺が想像していた中、断トツで最悪な反応となった。

何がゴメンなのか分からん。

……いいよ。もう、大丈夫。

作り笑顔止めます。話しかけないから。

俺は普段の真顔に戻ってそっぽを向いた。


作り笑顔がキモかったせいかなと、少し反省をする。

そして、自分の作り笑顔を想像し、吹いた。

恥ずかしくて耳が赤くなってる気がした。


~~~~~~~~~~~~~~~


最悪の状態で一時間目の授業がやってまいりました。

……45分経った、授業終わったぜ。

二時間目……やっと終わった。

三時間目、、、

こんな調子で昼休みまで時間が過ぎて行った。


ここで気付いたことが一つ。

なんか、授業中に先生に当てられないの草。


一時間目

『挙手する生徒がいないなら、指定するぞー?今日は17日だから……』

(17番か、あ、伊久磨17番って書いてある。じゃあ俺当てられるのか)

『17…ゴホンッ、9月だから9足して26番』

(お、回避したw)

二時間目

『当てますよー今日は十七日だから……』

(今度こそ来るのか?)

『17……んんっ!9足して2で割って13番』

(2で割るの?)

三時間目

『えーとですねー、今日は17日なので』

(やばい、当てられそう。答え分からん)

『……17の約数の総和は18なので18番お願いします』

(約数ww)

四時間目

『今日はーー17日!!よって!!』

(17日だからーー?)

『……tan(17)は3から始まるため、3番!!』

(タンジェントは中学範囲じゃ無くね?みんな理解できてない気が……)


という事で、俺は全ての指定を回避した。

この中学では顔で通るらしいな伊玖磨は。


昼休み時間になった。

これぐらい時間が立つとクラスメイトも俺を段々と警戒しなくなってきた。

いや、始めが警戒されまくってただけか…。

なにせ1時間目は俺が指をポキポキ鳴らすだけで、教室の雰囲気変わったからな。


さて、どこで昼食を食おうかなー。

実はここの部分が記憶から完全に抜け出てるんだよな。

多分、一人で過ごしているのかなと予想。

だから、俺は特段誰かを誘うわけでも無く弁当をカバンから取り出し、机の上で食べようとした。

しかし、俺はある事に気付いた。


「あれ?そういえば、この中学って屋上が定期的に解放されているんだっけ?」


実はここの中学校。

月曜日と水曜日だけ、屋上が解放されているんです。

これは学校の掲示板を見た時に、ふと目に留まった情報。

理由は、屋上の清掃やルーターなどのチェックによって、

主に先生が屋上に出る必要があったかららしい。


というか、そう考えると俺はよく屋上に行って弁当食べていた気がする。

もしかして、屋上に行くことが俺の記憶の回復につながるのかもしれない!!


~~~~~~~


屋上に着いた。まだ昼休みは始まったばっかりで、人っ子一人いなかった。

なぜか安心感がそこに漂っていた。

そして俺はいつもの定位置、ベンチに腰を下ろした。

うーん、やはり良い景色だな。

記憶にも残ってる気がする。……既視感が半端ない。


このガムの吐き捨てられている跡とか、たばこの吸い殻みたいな跡とか懐かしい。

あとは、今俺が座っている血がはねているベンチとか……。

――――は?

いや、めっちゃ屋上が不穏なんだけど?

懐かしさで危険性が飽和されていたけど、思い返してみるとヤバい点しか見つからない事に冷や汗をかく。

というか、わざわざここを選んで昼食をとるのがわけわかんない。

というか、もしかしたら屋上って不良の巣窟だったり……?


「よお、くまさん。久しぶり~」

「いくまじゃん!!お久!」

「ベア君、登校しててるの珍しい」


不意に、屋上のドアが開いて4人ほどのグループが入ってきた。

俺はベンチから転げ落ちるようにして、後ずさる。

なにせ、相手は見た目からして不良だったからだ。


「なにやってんだか……」

「え、その反応可愛い」


男子三人、女子一人のグループ。(女子居るの!?)

もちろん、みんな髪を染めていたり制服を改造……言い換え、着崩したりしていた。


また、何か記憶が流れ込んでくる。

最初に流れ込んできたのは、

いくま→くま→ベアー

という、どうでもいい俺のニックネームの成り立ちだった。


次に頭に流れ込んできたのは、この四人組と俺との関係だった。

鑑定結果―――この四人組はお友達ですね。

もちろん悪い事をする仲間だった。


一人の男子、拓斗たくとは、他校の生徒を病院おくりにした記録がある。

理由はウザかったかららしい。

また、一人の男子、颯太そうたはヤリ〇ンで、中学生のくせに片手で数えられない程経験してるらしい。

また一人の男子、なぎさは社長の息子で好き勝手やってる感じ。

なにやっても力で帳消しになるから本当に面倒なタイプ。

しかも、性格的に威張ってる感じは全然なくて逆に物静かで聡明なせいで、周囲から反感を買うことも無く、裏から色々操ってる。

狡猾で悪質すぎるな。

残った女子、鶴奈つるなはとんでもサイコパスな部分があって平凡のグループに馴染めきれなかったため、このあぶれた仲間たちと仲良くしている。

よく、拓斗や俺について行って喧嘩を見るとこを楽しみとしているらしい。


うん、全員色が濃すぎないか?


まじかよ……よりによってこんな爆弾と仲良かったんかよ……。

怖すぎて敬語になりそう。


「あーお前らか。ちょっと貧血でクラっとしてただけ」


いや、敬語は悪手よな。

下に見られると終わりだと気付いた俺は、取り敢えず敬語は控えた。

多分、こいつらの仲間である以上、俺を急にぶん殴ってくることは無いだろうし

まずは様子見と行こうじゃないか。


「貧血かよwもっと体大事にしろよな」


病院送りの暴君ニキは予想もつかない言葉を放った。

予想的にはもっと辛らつな言葉が飛んでくるのかと…、


「超久しぶりのトーコーだししゃーないよね」

「ベア君が病んでなくて良かったよ」

「元気出たらそろそろナンパいかねーか?」


上から、鶴奈、渚、颯太。

意外とみんな優しかった事に驚く。

普通に罵り合う事にしか、会話というものを知らないのかと思っていたが……。

あ、因みに颯太の誘いは後程丁寧に断って置いた。


「あ!僕思い出したことあるんだけどさ」


急に渚がキラキラと目を輝かせながら俺の方を見る。

まだ、中3のあどけない雰囲気が残っているのかなと言う印象だ。


うーん…。

見た目からして悪意は全く感じ取れない。

でもコイツ、発言は鋭すぎるのが特徴なんだよな。

何も隠し事ができない感じ。

今回は何を詰められるんだが…。


「一ヶ月前ぐらい前だけど、美紅と結局なにがあったのかな?」


神崎美紅…。

渚は突拍子もなく、一ヶ月前の話題をぶっ込んできた。

しかし、渚の穏やかな目と鋭く笑っている口で、

だいたい試されていることを察知した。

渚はもしかして、俺と鶴奈の関係を察しているのか?


いや、何があったって……ナニがあったって答えるしか無いんじゃね(?)

あまりの発言の鋭さに呆気にとられる。

先に言葉を返したのは鶴奈だった。


「渚〜。聞いても無駄かもよ??だって神崎は庄田しょうたと付き合ってるじゃん。どうせ神崎に雑用頼まれただけだって〜」


ゲラゲラと口に手を当てながら鶴奈は笑っていた。

その様子をつまらなそうにみる颯太。

拓斗は渚を「お前NTR展開期待してたのかー?」ってどついてた。

予期せぬ状況で新情報ゲッツ。

どうやら、あの神崎は別の男子と付き合ってるらしい。

庄田……か?なんか聞いたことある名前だな……。

誰も否定しないしこの情報は信用してもいいだろう。

そういえば、っと傍観していた俺はふと我に返った。


じゃあ、逆に俺の位置はマズくないか?

神崎は別の男子と付き合っていて、

その間に俺が割って入って神崎を襲ったって事だよな

記憶からたどるに俺のした事は完全に「黒」。

完全にヒロインを寝取ろうとしている悪役としか印象がつかなかった。


「……ん?くまさんどうした?顔色悪いぞ?」


颯太が不意に声を掛けていた。

俺はベンチから起き上がると適当に言葉を返す。


「いや、なんでもない。ちょっとトイレ行ってくるわ」


「…………」


俺は盛り上がりに欠ける発言しかしてなかったことに

内心謝りながら屋上を出た。

階段を駆け下りながら、伊久磨の友達について少し考えていた。


危険だが、どこか愛着のある悪友グループ。

不登校だった俺の唯一の友達であった。

多分、皆色が濃いせいで、誰かの性格を勝手に決めつけたりできないのだろう。

だからこそ、あれだけ危険な奴がそろっているのに奇妙な「他人の尊重」という

雰囲気が漂っていたのだろう。

―――てか、そのグループで、あいつが一番やべーとか決めつけてたのは俺だけか。


俺は重い足取りで階段を下っていた。

トイレに行くのも億劫な程、気が重い。

というか、そもそも言い訳だったけど、過去を思い出してから本当に体調が悪い。

階段を下りて、角を曲がったら、長い廊下に差し掛かる。


とりあえず、ここで気持ちを鎮めようと深呼吸をした。

その時だった……背後からドンっと背中を突かれた。


「んあ?」


急な衝撃に、体制は崩れなかったものの、情けなく声が出てしまう。

どうやら、相手も本気で押し出す感じでなくて、気付いてほしげに衝撃を与えたんだと思った。

俺は少し不機嫌そうな顔を取りながら背後を振り向く。

どうせ、鶴奈とかの悪戯だろう。そう思いながら。


しかし、背後にいたのは思いもしなかった人物。

神崎美紅だった。

いつ見ても綺麗な黒髪のロングヘア、

青色のまるでサファイアのような瞳。

スラっとしており、急いだせいなのか額に一筋の汗をにじませていた。


「……え、神崎?」


俺は驚いてつい名前を呼んでしまった。

すると、すこし神崎の目が細くなる。

そして彼女は俺としっかり目を合わせながら口を開いた。


「伊久磨君、学習委員の仕事サボろうとしたでしょ?」


……。が、学習委員??

記憶から消し飛んでたけど、俺、学習委員に所属していたのね。

一番似合わねー!!というか、なんで神崎は俺が学習委員だと知ってるんだ?

何というか、俺相手でも恐れもしない神崎に完全に会話のペースを奪われながらも受け答えをしていた。


「……余裕が無かったというか、あのな……」


「嘘つき、伊久磨君は今日暇よね?屋上でゆっくり弁当でも食べてたんでしょ?」


「…………」


伊久磨の言い訳術を、真正面からカンパしてくる。

さらに、なぜか声のトーンが明るいせいか、叱っているようには聞こえなかった。


「私も学習委員だから一緒に仕事するわよ」


両手を合わせたり離したり、

また、青色の目を少し揺らしながら、そう尋ねてくる。


奪う側と奪った側。


記憶の中の神崎と今、目の前にいる神崎は全く違う人物だった。

その落差に「俺と神崎の関係に関する記憶に歪があるのか?」という考えが一瞬ちらつく。

しかし、大まかな部分を伊久磨は否定した。

神崎は嫌がりながらも最大限友好的に接してくれているだけだろう。

そう考えながら、彼女の言葉を受け取った。










~~~作者より~~~~~~~~~

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