第8話 シータへの指導

 シータは余程嬉しかったのか、翌早朝私がまだ寝てるのに部屋に迎えに来ました。

「シータ?寝て無いでしょ!」

「楽しみで、寝てなんて居られないよ!」

「冒険者は最善の状態で仕事しないと!寝不足はダメだよ!冒険者を続けるなら体調管理もしっかりしないと!」

「はい、師匠」

「師匠で無くイノマと呼んで」

「はい、イノマさん」


「ヨミさん、薬草採取指導に行って来ます」

「大丈夫と思うけど、無理をしないで」


 通常門に向かいます。




「あれ?イノマちゃん?シータとパーティー組んだの?」

 私は昨日まで名前知らなかったのに、門番さんはシータの名前知ってる?

「ゼンさん、剣術指導ありがとうございました!お陰でイノマさんに弟子入り出来ました!」

「良かったね、大切なのは無理をせず無事に帰る事だよ!」

 成る程、シータに剣術指導してくれた兵士さんか。


 いつもの迷いの森、薬草採取場所にシータを案内しました。

「これが薬草、間違わない様しっかり覚えて!10本で銀貨1枚になる」


「これだけで、銀貨1枚!!凄い!これで銀貨2枚!」

 50本採取したところでギルド買い取りの案内をします。



「依頼じゃないから、買い取りカウンター、ここに薬草を出せば良い」

「薬草50本、銀貨5枚で買い取ります」


「嬉しい!マリナ母さんにお土産!」

「お土産にするのも良いけど、銀貨3枚でナイフが買える武器の装備が一番だよ」



 ギルドの向かい、武器屋に連れて行きました。

 厳つい顔の店主がギロリ睨んでる。

「イノマさんとお揃いが良い!」

 睨む店主に動じない、シータは良い性根してる。


「シータは私より腕が長いから、短剣を買った方が良いよ」


「短剣ならこれがお勧めだ」

 店主が出した短剣を鞘から抜いてみます、刃の部分が50㎝ほどナタの様な丈夫な短剣です。

「素人でも使い易い、良い短剣だね、店主いくら?」

「銀貨2枚で良いぞ」


「シータ、これお買い得だよ!」

 銀貨2枚で剣帯まで付けてくれて、店主は強面なのに良い人でした。



 シータは剣を腰に吊し「マリナ母さんに銀貨3枚お土産に出来る」と喜んで帰って行きました。





「マリナ母さんが、泣きながら喜んでくれたよ!」

「そうか、良かったな!今日から雪に備え薪拾いをするよ」

 武器を携帯してるので、次の日は薪拾いをさせながらゴブリン目当て森の奥に入りました。


 私がゴブリンの脚を切り取り、倒れた所をシータに首を切らせました。

「ゴブリン魔石はこの位置に有る」

 胸を切り裂き魔石を取り出して見せました。

 次に出てきたゴブリンは、シータ一人で倒させます。

「シータはゴブリンより背が高い、狙って首を斬る!」

 一撃とは行かなかったが、二度首を斬ってゴブリンを一人で倒せました。


「良い感じ!魔石も取り出して!」

 良い性根のシータは、平気で胸を切り裂き魔石を取り出しました。

「ゴブリン魔石は一個銅貨5枚、今二匹倒したから銀貨1枚になったよ」

「ゴブリンを倒した方が高率良いね!」

「所が、初級1等に成らないと低級魔物の討伐は出来ない決まりだよ、薬草採取してたらゴブリンに襲われて倒しました、って報告し魔石を買い取りしてもらうって裏技使うの!」



 薪二人で背負い大量拾い、魔石を5個取った所で今日は終了!

 ギルド買い取り銀貨2枚と銅貨5枚です。

「銅貨5枚はシータが持ってて、貯金だよ!短剣の整備武器屋でやって貰うと銅貨5必要なんだよ!お金貯めて居ないと冒険者活動出来ないよ!」


 薪二人で孤児院まで運びました。



 順調に指導出来てたのに、ついに雪が積りました。

 薪拾い程度で、運が良ければ薬草採取にゴブリン討伐を細々とやってるある日、巨大なオークを担いで行く二人に出合いました。

「あれ?モノさんにオロさん?何で冒険者やってる?」


「イノマさん、あの二人凄いね!オーク担いで、重くないのかな?」

「モノさんは私の剣術の師匠で、ハンエイ子爵様の護衛騎士なんだけど、何で冒険者やってるのかな?」




 不思議に思っていたある日、信じられない二人をみました。

「おじさん達凄い!格好良いね!!」

シータが声を掛けて居ます。


 オークを2頭ワーウルフを2頭、それにビッグボアを1頭、モノさんにオロさん、それぞれワーウルフをオークに吊し担ぎ、ビッグボアの左右の前足を持って引きずってギルドに向かってる、信じられない非常識な二人です。

(モノさんのパーティーに入る事が出来れば私ももっと強くなれる!!)


 初級見習いのシータに教えるのはここまで、後は私の昇級を目指すよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る