第7話 孤児院のシータ

「イノマちゃん!無事で良かった!!」

 随分心配掛けた様で、ヨミさんが笑顔で迎えてくれました。


 ベンさんがギルドに報告してくれたそうで、護衛対象を無事逃がす事で護衛任務は成立で、失敗には成らなくて良かったです。

 イズさんとレノマさんは王都冒険者ギルドで中級2等に昇格したそうですが、同行の私は昇級しませんでした。

 私の場合、もう一度護衛同行完了で中級昇級になるとか、護衛ってあんまり遣りたく無いけど昇級の為なら頑張るよ!



 王都冒険者ギルドで、イズさんとレノマさんが全て報告済みだそうで、同行の私から報告する事は無く借りてる部屋に帰りました。


 部屋でアイテム袋を眺め、50枚の金貨にニマニマしてるとドアをノックされてる。

「はい、何ですか?」

「イノマちゃん、孤児院の女の子が訪ねて来て、下で待ってるよ!」

「はて?孤児院の女の子?訪ねて来る様な子居ないと思うけど、降りて会ってみます」




 降りてみると、たしかに孤児院の子で無愛想で返事もしない女の子でした。


 どうせ返事はしないだろう、名前も知らないし無言で見詰めました。

「あのぅ、弟子にして下さい!」

「嫌だね、話掛けても返事してくれた事無いし、だいたいあんたの名前知らないし、無愛想なあんたの面倒を私が何で見ないといけないの?あんた私を嫌ってるでしょ?私そんなお人好しじゃ無いよ!不愉快だったの思い出す!孤児院に帰りなさい!」

「弟子にしてくれるまで帰りません!」


「じゃ、勝手にすれば良い」


 放置してギルド酒場に入りました。

「大将、スープに串焼き肉!」

「イノマちゃん、大変だったそうだな!無事で良かった・・・そっちの子も同じで良いか?」


 無愛想な女の子が付いて来てたの気付いて居なかった。

「おい、何で付いて来た?」

「師匠!私はシータ、弟子がお供するのは当然です」

「お前を弟子にした覚えは無い!腹立たしいが、おごってやる!食ったらさっさと帰れ!」


「ご馳走には成りますが、弟子にしてもらえるまで帰りません!」

 流石孤児院育ち、したたかさだけは一人前です。


 スープと串焼き肉を大将が持ってきてくれました。

「美味しい!こんな美味しい物いつも食べてて、師匠ずるいです!」

「依頼をこなし稼いだお金で食べてる、甲斐性が有るから食べれる!冒険者になれても皆がみんな普通に食べれるとは思うな!」



 シータはボソボソ話だしました。

 同じくらいの年なのに、マリナ母さんはイノマの事ばかり誉めて悔しかったそうです。

 毎日薬草採取で銀貨をマリナ母さんに渡して、私だって出来ると、隣の兵士に剣術指導してもらったそう。

 そこでも、兵士達イノマを誉めてばかりで、比べられて悔しかったって。

 そんな凄いイノマの弟子になって、行動を共にすれば私も同じ様に凄くなれる!


「シータは甘く考え過ぎだよ!鍛練を努力しても個人の資質にも寄る!同じ様に強くは成れん!だいたいシータは何歳なんだ?」

「師匠と同じ10歳よ」

「12歳でないと冒険者登録出来ん!私は13歳だぞ!」

「へ?13歳?嘘でしょ!私の方が背も高いし」


「放といて!背が全然伸びんのは私も気にしてる、冒険者ギルドには年齢測定器が有って、誤魔化しは出来ん」


「師匠ずるい!」

「私から言わせて貰うと、10歳のくせにそのどんがらのシータの方が余程ずるい!羨ましい!」


 とか何とかで、ギルド練習場でシータの実力を見る事に成りました。


「そこの木剣を選んで」

 私も適当な木剣を持って相手をします、結論から言うと、シータは強くも弱くも無い普通でしたが、ゴブリンを倒せるかと言われると、難しいかと思いました。




 ギルド受付のヨミさんに頼んでみました。

「ヨミさん、この子シータに初級見習いタグ発行して貰えません?」

「ギルドマスターにお伺いして来ます、チョッと待っててね」


 チョッとどころか、20分待って居ます。

「シータ、10歳でも特別強ければ初級見習いタグ発行してもらえるけど、今のシータでは無理みたい」

 とか話て居ると、やっとヨミさんが帰って来ました。

「この初級見習いタグは、イノマちゃんが10歳の時発行された特別品、ギュンタギルマスがシータに渡してくれって、預かって来ました」


「ヨミさん、ありがとう!明日から薬草採取に連れて行って、ゴブリンに襲われても殺されない様に鍛えます、当分はシータとパーティー組む事にします」


 シータは初級見習いタグを首に吊し、嬉しそうに孤児院に帰って行きました。

 私は明日に備えて、早目に寝ました。

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