呪殺聖女と呪われし世界

「ご馳走さまです」

「お部屋は整えておいたので、ゆっくりなさってください。他の部屋に入って物色してもかまいません」

「あぁ、それなんですが」


 居住まいをただす呪殺聖女。


「先ほどはなぜ、あんなことを?」

「何がですか?」

「呪殺してほしい、と」


 とぼけてみても通じない。


「ダメなんですか?」

「逆になんでいけると思ったんですか」

「『呪殺聖女』なのに」


 恨みがましい声を出すと、彼女は小さくため息をついた。


「あのですねぇ。私はいったい、どんなふうに伝わってるんですか?」

「それは」






 呪殺聖女。彼女と出会った者は死に至ると言われている。

 特に『呪い』に冒されている者は。


『呪い』とは魔王がばら撒いた、疫病みたいなもの。四、五年前、手ずから各地を襲い、無作為に付与した。

 日々痛い苦しいと喘ぐことになり、寝たきりになる人も多い。もともと衰弱気味の場合はとなることもある。動けなくて孤独死や不調による事故、苦にした末の自死もなくはない。


 が、基本『呪い』単独では死なない。


 それが彼女に出会うと死に至る。


 だから呪いの総仕上げをする者として、『呪殺聖女』。



 これだけ見れば、ただの魔王の手先。

 だというのに彼女が『聖女』と呼ばれる由縁。それは、



 当の魔王を討つため国王によって選ばれた、勇者一行の一人だから。



 僧侶の身として献身的に勇者一行を支えつつ、自身も多くの魔族を討ったと。他ならぬ勇者直筆の手紙で活躍が伝わっている。

 また、訪れた先々で多くの傷病者を救ったとも。


 ゆえに彼女の呪殺が世に伝わるまでは、他ならぬ王国の『聖女』だったのだ。


 それが今はスパイ説も一部で、いや。

 、それでも戦い続けていることも加味して半々か。

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