第3話
「キャーーーーーーーー!!」
勇者の手で貴族と騎士が灰燼にされ、静寂だった謁見の間が阿鼻叫喚に包まれる。
「静粛に! 皆の者、静粛に!」
声を張り上げた国王だったが、パニックに陥っている貴族達には届かない。
すると、盛大に溜息をついたユウキが立ち上がると、天井に向かって手を翳した。
「あぁ、うるせぇな!! お前ら全員焼き殺すぞ!!」
そう言って巨大な火球を出した瞬間、混乱していた貴族達が一瞬で大人しくなった。
「ったく、勇者である俺に世話やかすんじゃねぇよ」
手のひらにあった火球を消したユウキは、不機嫌そうな顔で周囲を睨みつける。
そんな彼に、謁見の間にいた貴族達は怯えたような目を向けた。
(ったくよ、俺は魔族じゃなくて勇者なのに、どうしてそんな目を向けられなくちゃならねぇんだよ?)
その場で胡坐を掻いて頬杖をついたユウキを見て、落ち着きを取り戻した国王は盛大に溜息をつく。
「ハァ、そういうところが勇者らしくないというのだが……まぁ、いい」
(こやつが傍若無人であることは今に始まったことではないからな)
頭を切り替えるように首を小さく横に振った国王は、わざと大きく咳払いをして皆の注目を集めると、ユウキに冷たい目を向けた。
「勇者ユウキよ。貴様の罪は、無抵抗な魔族や人間を皆殺しにしただけではない」
「はっ?」
眉を顰めたユウキを他所に、国王とアイコンタクトを交わした宰相は近くにいた騎士に指示を飛ばした。
すると、入口近くに控えていた3人の冒険者が、騎士に連れられてユウキの後ろに立った。
「あぁ、俺の盾役兼引き立て役の奴らね」
騎士の動向を目で追っていたユウキは、振り返って後ろにいる3人を視界に捉えると心底面倒くさい顔をした。
そんなユウキの言葉に、3人が揃って苦い顔をすると、眉を顰めた国王が口を開く。
「勇者ユウキよ、貴様に問う。この者達を仲間として扱っていなかったというのは本当か?」
勇者召喚から1か月後に行われた魔王討伐出立の儀。
その儀式で、ユウキのパーティーメンバーとして選ばれたのが、戦士のリュグラ、神官のマリー、魔法使いのベラエッタの3人だった。
この3人は、国で一番の戦士・神官・魔法使いであると言われる3人で、勇者ユウキの同行者に相応しいと考えた国王は、自らが3人に声をかけて勇者のパーティーに加えた。
だが、ユウキはそんな有能な3人に盾役や索敵、雑魚敵の処理や宿の手配に物資調達などあらゆる雑用を押し付け、活躍の場を一切与えなかった。
そして、自分が『勇者』であることを良いことに、3人の手柄を全て自分の手柄にした。
それが、ユウキのもう1つの罪だった。
(勇者のことを思って、選りすぐりの3人を選んだというのに……!)
怒りを抑えながら厳しい目を向ける国王に対し、ユウキは鼻で笑った。
「ハッ、そんなの当たり前じゃねぇか」
「はっ?」
後ろから殺意が向けられる中、ニヤリと笑みを浮かべたユウキは、利き手から聖剣を顕現させた。
そして、徐に立ち上がると聖剣の切っ先を国王に向けた。
「おっ、おい! 貴様! 一体、何を……」
「俺には、女神アドベルから授かったチート能力と聖剣がある。だから、本当は俺1人でも余裕で魔族を殲滅出来たし、魔王だって普通に倒せた」
(実際、魔王の対峙した時は俺1人であっさりと倒したしな)
笑みを浮かべたいたユウキは、聖剣を消すと大きく肩を竦めた。
「だけど、お前らが『どうしても』っていうから、仕方なくついてきてもらったんだよ」
(本当、俺にとっては要らない存在だったよ)
わざとらしい盛大な溜息をついたユウキに、後ろで聞いていたリュグラが感情を抑えながら口を開いた。
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