第2話

「はっ? 勇者としてあるまじきこと?」



(俺が一体何をしたっていうんだ?)


 眉を顰める勇者に、玉座に座っていた国王は手を握る。

 その様子を見ていた宰相は、小さく咳払いをするとユウキに厳しい目を向けた。



「勇者ユウキよ。あなたは、人間に敵対した魔族だけでなく、古くから人間と友好関係にあった魔族や戦いの場で降参した魔族も一匹残らず殺したというではないか」

「はぁ? そんなの当たり前だろ?」



 宰相の言葉を鼻で笑ったユウキは、その場にいる者達に向かって得意げに話し始めた。



「人間と仲良くしていようと、その場で降参していようと、昔から魔族は人間の敵なんだろ? もしかすると、俺たち人間を油断させ、滅ぼす隙を意図的に待っていたのかもしれない。だったら、一匹残らず殺すしかねぇだろうが」



(ゲームやラノベでも、魔族は人間の脅威であり敵だ。だから、異世界から召喚された勇者として、魔族を片っ端から殺すことは当然の行いだ。そこに、人間としての温情なんてあってはならない)


 誇らしげな笑みを浮かべるユウキに、国王が怒りを抑えるように口を開く。



「それが例え、人間と魔族の間に生まれた子どもであっても、そして……魔族と友好関係であった人間でさえもか?」

「あぁ、そうだ」



 すると、ユウキが突然笑みを潜めた。



「魔族に加担した人間は、全員魔族に魅了されて利用されているに決まっている。だから俺は、魔族に加担した人間も魔族共々殺した」

「……それは、彼らの話も聞かずに問答無用で殺したのか?」

「その通りだ。人類を脅かしている魔族の言葉も、その魔族に利用されている人間の言葉も、勇者として聞く価値がないからな」

「っ!? 貴様――!!」



 冷たく発せられたユウキの言葉に、謁見の間にいた貴族の1人が、騎士に取り押さえながらユウキの前に飛び出してきた。



「だからあの時! 辺境の村にいた息子を殺したのか!!」

「辺境にいた息子? 誰だそれ?」



 再び眉を顰めるユウキに向かって、飛び出してきた貴族が憎しみに満ちた表情で怒号を上げる。



「リグルだ! 辺境にある別荘で療養していた我が息子で、息子と同い年ぐらいの魔族と人間のハーフの子と遊んでいた……」

「あぁ、最後まで魔族を庇って、勇者である俺に楯突いたガキのことか?」

「っ!?」



 体を硬直させた貴族を見たユウキはニヤリと笑った。



「そのガキなら殺したぞ。だって、魔族を庇って俺に楯突いたんだからな」

「!!」

「まぁ、貴族の息子なら跡取りとか色々考えないといけないだろうが……とりあえず、ご愁傷様」

「きっ、貴様――――!!!!」



 他人事のように話したユウキに、怒りが頂点に達した貴族は容赦なく唾を飛ばす。

 そんな貴族を見て面倒くさそうな顔をしたユウキは、騎士に取り押さえられてもがいている貴族に向かって手を翳す。



「あぁ、うるさい。お前、死ねばいいよ」



 そう言ってユウキが得意の火魔法を放った瞬間、声を荒げていた貴族と取り押さえていた騎士があっという間に消し炭になった。

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