第10話 (戦争と老人Ⅵ)


その老人は、フーとため息をつきながら、持参した水筒から水分を摂った。


「俺のところは爆弾は落ちなかったが…他の所では…原子爆弾が落とされたんだよなぁ…あの爆弾は……」


そう言うと老人は黙ってしまった。

私は黙って老人の背中を擦った…


私は…その老人の話が…とてもリアルに感じていた…戦争が終わった時…そんな会話があったということ…そして、不安が終わったと思ったらまた不安…その後の原子爆弾という爪痕…

戦争は…全てを奪うのだと…

この時代を生きた方々は…心身共に…苦しく…痛かったのだと…

いや…

経験者にしか分からない…

言葉にならない…

言葉に出来ない…


その想いを……

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