第3話 高校生 春 2
僕たち二人下駄箱で靴を履き荷物を持ち校門を出た。後ろにも前にも部活の服や荷物を持った生徒がいた。そんな生徒を横目に見ながら僕たち二人は校門を。
日本には四季がある。それぞれの四季には色があり、そして美しさもあり非常に風情がある。春といえば暖かい気候を思い浮かべるものだが今日は少し肌寒く閑散としていた。桜はもうすでにほぼ散りかけていた。桜のない桜並木の道を僕たち二人は取り留めのない会話をしながら歩いていた。
「そういえばお前はもう行く大学とか決まってんの?」
「うーん、まあ一応国立にしようかなとは思ってて。ほら、うち貧乏でしょ?親には苦労かけられないし。」
ははっと少し笑いながら彼の問いかけに僕は答えた。貧乏といっても例えば食事に困ったりだとか、学校生活に必要なものが買えないというほどではない。父は数年前に通り魔に襲われこの世を去っていた。母は悲しみに暮れることもせず、いやおそらく愛していた父のことを僕以上に悲しんでいたとは思うけれども、女手一人で働き、私立の高校にまで行かせてくれた。さすがにこれ以上甘えることはできない。だから僕は比較的学費の安い国立に行くことに決めた。受かるか受からないかは別として。
「あ~確かにそうだな。でもお前学力的には大丈夫なのかよ。トップ校じゃないにしろ国立だぞ。科目数も俺の何倍もあるし。」
「うーん、、、正直微妙かな。勉強頑してはいるんだけどね。あんまり結果が振るわないというかなんというか。うん。どうなんだろう。」
「奨学金使えばいいじゃん。そしたら私立にも通えるようになるだろ?」
「一応それも考えてみたんだけど。でも就職したら少しでも家にお金入れて親に恩返ししたいしさ。」
「そんな先まで考えてるのかよ。お前すごいな」
彼は僕とは真反対の過程だからそんな感情を抱くのも仕方ないのだろう。親は自営業で地元ならそれなりに名の知れてる会社を営んでいるし、遊びに行くときなんかも彼のお金使いからも裕福さの片鱗を感じる。
「まあ、お互い頑張るしかないよな。俺も三科目とはいえまだ合格点には微妙だ し」
そんなこんなでこれからの話を春景色の中で歩きながら話していると彼の家の前まで来た。
「あ、着いたわ。じゃあまた明日。」
「うん、また明日。」
お互いに右手を軽く振りながら、体は半身のままであいさつをして別れた。
人間みな平等という言葉僕は嫌いだ。生まれたときからある程度の人生の道は敷かれてしまっていると僕は思う。でもそんな状況の中でもがんばればその状況を覆せるかもしれない。だから一万円札の彼はかの有名な言葉を生み出したのだろう。
そんなことを考えながら一人で寂しい景色の中を歩いていると家の前についた。
玄関を開ける前に僕はいつも軽く深呼吸をする。勝手に僕が感じてしまっているプレッシャーを考えるとどうも家の中で息苦しく感じてしまう。だから窒息しないように肺の中に落ち着きため込み家の中に入る。
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