第2話 高校三年生 春 1
「えーっとここは反実仮想になっているわけだから、、、この文が何を表してい るのか、登場人物が実際には何を言いたかったのかをしっかり読み取ってから選択肢の取捨選択を置こうなうように」
昼休みの時間が終わりおそらく多くの人が睡魔と闘う時間である五時間目。しかも今日の五時間目は古典。これでもかというくらい生徒たち、とくに僕にとっては最悪の組み合わせである。先生は片手に教科書を持ちながら黒板の前に立ち、僕たち生徒の方を見ながら問題の箇所を説明している。
古典という科目は僕にとっては実に不思議な科目だ。別に僕は格段勉強が苦手というわけでもなければ、ましてや国語が苦手というわけでもない。小さいころから本もそれなりに読んでいた。だけど古文という科目になると僕の頭には訳の分からない魔法がかけられたかのようにぐちゃぐちゃにかき混ぜられてしまう。
使っている文字はひらがなと漢字なのに。なのになぜか先生の言っていることが、文の表していることが右耳から左耳へ一瞬の間に通り抜けてしまい何も残らなくなってしまう。結局その日もうとうとしながら、現実と夢の世界を何度も行き来しながら果てしなく続くと思えるような五時間目を過ごした。
五時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。僕は特に部活というものには入っていない。ほかの人は友達と。おそらく部活のメンバーと話しながら準備をして教室から出ていく。別に部活に対してめんどくさいだとか時間の無駄だとかそんなのを思っているわけではない。ただ何となく入りたいとも思わなかったし、そもそも昔から多くの人と関わりつ続けるのはあまり得意ではなかった。友達だって幼稚園からの知り合いが、いや他人からしてみれば幼馴染というのだろうけど、一人のみだった。
別に不満は感じたりはしなかった。気の合わない、中途半端な友達が複数人いるよりはむしろこの関係の方が自分には、ほかの人は口に出さないだけで合うのだろう。
「あ、今日は五時間目で終わりか」
そう一人でぶつぶつとつぶやきながら早速帰る支度を始める。机の横に置いてある有名ブランドロゴの入っているリュックのチャックを開け机の中に入っている教科書を入れ始める。数学、現代文、古文・漢文、世界史、倫理。今日の授業はざっとこんな感じだった。
「もう教科書多すぎ。」
一人で文句を垂れながらいると友達が帰ろうといってきたので二人で下駄箱へ向かい校門を出る。僕たちの服装は二人そろってワイシャツにブレザーを羽織り少し緑の入った暗いネクタイを付ける。そしてげた箱から靴を取り出しいつものように並んで履く。
僕たち二人の前には二人生徒がいた。僕たち二人とは全く違う服装だった。あの分厚いズボンはおそらく野球部の指定の服なのだろう。スライディングをする野球部用に後ろの部分が分厚い作りになっている。
「なあ、あのさあ」
前にいる野球部の二人が靴を履いている様子を見ながらあいつ言った。
「ん?どうした」
「あ、いや何でもない」
「なんだよ気になるじゃん。変な奴、、」
僕がもし彼らみたいに部活に入っていたら、一つの物ごとに対してなあなあではなく真剣に取り組んでいたら、今の生活は、僕の高校人生はどうなっていたのかな。
そう彼に言いかけたがやめた。こんなことを言っても特に何もならないし、こんな答えにくい質問をしても迷惑になるだけだ。
知るかよそんなん
と返されるのが関の山だろう。そんなことをぶつぶつと頭の中で考えながら僕たち二人は後者を背にして春の訪れを感じる外へと向かった。
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