第15話 ダンジョンボス1

無線通信の音声記録が再生される。



CP(コマンドポスト)オペレーター:「こちらはコマンドポスト、各チーム受信できていますか?」


Red-1(特務部隊リーダー):「こちらはチーム:レッドサーペント、受信している」


Blue-1(一般兵リーダー):「こちらはチーム:ブルーサイクロン、聞こえています」


Green-1(冒険者リーダー):「こちらはグリーンフォレスト、問題なく聞こえております」


CPオペレーター:「バイタルデータ、位置情報、ともに正常。Red-1~5、blue-1~15、Green-1~4、確認しました」



CPオフィサー:「よし、全員揃ったな。目標はボス部屋の最深部にある神殿、それを守る3体のゴーレムの撃破だ」



CPオフィサー:「各チームそれぞれが1体のゴーレムを受け持ち、攻撃が始まったら位置情報のマーカーとカラーペイント弾を撃ち込め。」



Green-2(朝倉):「チームカラーでターゲットも区別するのか。分かりやすいけど味気ないね。俺ならクロートー、ラケシス、アトロポスって名前を付けるね」



Green-4(レネ・ハルター):「糸を紡ぐもの(クロートー)、計るもの(ラケシス)、切るもの(アトロポス)。運命の三女神ね、あなたにしては気が利いてるじゃない」


CPオフィサー:「私語は慎め。屑冒険者どもめ」


Green-4(レネ・ハルター):「あらあら、テロリストではなく一応は冒険者として扱ってくれるのね。優秀な将官様がわざわざダンジョン内の指揮所で自ら指揮をして下さるなんて、とってもうれしいわ」


CPオフィサー:「き、きさまっ……」




CPオペレーター:「さ、作戦開始まであと15分です。目標の確認と準備はできていますか?」



Red-1(特務部隊リーダー):「CPへ、こちらRed-1。現在、ボス部屋前に展開し、作戦確認を行っている。ドローンにて敵のゴーレム3体を確認、他チームの準備が整い次第、ボス部屋に侵入できる」


CPオペレーター:「了解しました、Red-1。ボス部屋に侵入後は扉が閉鎖されて映像通信が不可能になります。サポートも制限されますので、以後は慎重に行動してください」




Blue-1(一般兵リーダー):「我々のチームは先行して左側から目標に接近する。侵入経路と目標の誘導、足止めの方法は確認済みです。準備は全て整っています」


Green-1(冒険者リーダー):「こちらは右側のゴーレムですね、承りました。いつでもどうぞ」


CPオペレーター:「各チームは目標のゴーレムから300メートルの位置に配置してください。作戦開始の合図は、特殊部隊による対戦車ミサイルの発射です。それまでは指定位置で待機してください」



Red-1(特務部隊リーダー):「了解した。これよりボス部屋に侵入する。オーバー」



CPオペレーター:「作戦成功を祈ります。アウト」






◆◇◆◇◆






Red-1(特務部隊リーダー):「全員に告ぐ、これより攻撃開始まではラジオサイレンスを保て。ターゲットに対し極力刺激を与えない様に細心の注意を払え。アウト」


しばし無線は沈黙する。


音声記録に爆音が入る。


Blue-1(一般兵リーダー):「こちらはBlue-1、チームRedの攻撃を確認。マーカーを打ち込みます。目標は左のゴーレムです」



Green-1(冒険者リーダー):「では、こちらも右側のゴーレムに攻撃を開始いたします」


音声記録に複数の銃声


CPオペレーター:「各部隊との音声通信良好、位置情報、バイタルデータを正常に受信。ターゲット3体のマーカーを確認」



CPオフィサー:「攻撃の効果はどうだ?」


Red-1(特務部隊リーダー):「対物ライフルの攻撃では表面の岩石が少し剥離しただけだ。ダメージはほとんど確認できない。NLAW(携行式対戦車ミサイル)による攻撃で頭部の一部破壊に成功したが致命傷には程遠い」


Blue-1(一般兵リーダー):「グレネードランチャーで攻撃、ダメージは確認できません」


Green-1(冒険者リーダー):「ライフルグレネードも同じく、手傷を与えているようには見えませんね」



CPオフィサー:「そうか……ロケットランチャーは弾数が限られる。他の武器で耐久が低そうなところに攻撃を集中させろ、ターゲットの弱点を探れ」


Red-1(特務部隊リーダー):「了解」

Blue-1(一般兵リーダー):「了解しました」

Green-1(冒険者リーダー):「承知しました」



音声記録に複数の爆発音が入る

各隊員からの報告


CPオペレーター:「各隊員の通信記録より分析、グレネードランチャー、ライフルグレネードではゴーレムの全ての部位に対して有効な打撃を与えていないようです」



CPオフィサー:「くそっ……関節部などを集中的に狙ってみろ。チームの状況はどうだ?」


Red-1(特務部隊リーダー):「オペレーター、こちらRed-1。中央のゴーレム、Target-Redに攻撃しているが、一般兵同様にダメージを与えられない。それと、ここまでゴーレムはこちらに反撃をしていない」


Green-2(朝倉):「こんな武器じゃな。敵さんは動くまでもないって感じだぜ」



CPオフィサー:「おまえたちは我々から与えられた装備に不満でもあるのか? 自慢の腕前でなんとかして見せろ」


Green-2(朝倉):「不満なんてないぜ。俺たちはこの条件で協力することに同意したからな。ただ、もしもあんた方が我々に隠している武器、例えばC4爆弾なんかを持っているなら、今が仕掛ける最初で最後のチャンスかもしれないぜ」


CPオフィサー:「不用意に近接することは危険だ。それに、我々はそんなものを持っていない」


Green-2(朝倉):「そうかい、それは残念だ」


Red-1(特務部隊リーダー):「オペレーター、こちらRed-1。ロケットランチャーと無反動砲の使用許可をくれ」




CPオペレーター:「承認されました。使用を許可します」





音声記録に爆発音が連続する。



Red-1(特務部隊リーダー):「Red-1より報告。脚部関節にかなりのダメージを与えた」


CPオペレーター:「各チームより報告。ターゲット動き出しました」


CPオフィサー:「各チーム、ターゲットが動き出したということは、攻撃が効いているということだ。これからが本番だぞ。気を引き締めろ」

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