第11話 女性冒険者

ダンジョンの闇の中で映像が揺れている。


映像は、暗い通路を進む3人の冒険者の姿を捉えていた。


彼らの背中をライトが照らす。


彼らにしては珍しく、慎重に歩みを進めているようだ。その足運びから何かを強く警戒していることが伝わってくる。


突然、遠くから銃声が響き渡った。


冒険者たちは一瞬止まるが、言葉を交わさず、その音の発生源に向かって急いで移動を始める。





彼らが近づくにつれて耳を刺すような咆哮が聞こえ、それに合わせて絶え間ない銃声も響き渡った。




カメラも彼らに続き、狭い通路を抜けて広間にたどり着く。



ダンジョンの広い部屋は、数え切れないほどの異形の生物で溢れかえっていた。



少年の震える手が映る。彼は眼前の出来事を撮影しようと、なんとかその場に踏みとどまっているようだ。



目の前に広がる光景は、混沌としていた。

一人の女性冒険者が複数のモンスター相手に激しい戦いを繰り広げている。


彼女の周りには多数のモンスターが集まり、包囲網を完成させようとしていた。異様な数のモンスターが映し出され、カメラのレンズ越しにもその場の緊迫感が伝わってくる。



映像は揺れ動きながら大小様々なモンスターたちを映す。その姿は高い攻撃力と脅威度を示していた。



冒険者たちは状況の深刻さを理解して迅速に散開しつつ、救出が可能なのかを分析している。女性冒険者の状態を確認し、彼女にどの程度の余力が残っているのか見極めようとしているようだ。



カメラは女性冒険者の顔を捉えた。

彼女は金髪で青い目をしている。彼女は血と汗に汚れているが、表情は冷静でまだまだ余裕があるように見えた。


彼女はカメラに気づくと、こちらに向かって軽く手を振った。


「やあ、こんにちは。助けてくれると嬉しいな」


彼女はにこやかに微笑みながら言った。



「なん……だと……?」朝倉が呆然とする。


「彼女は、本当にただの一人であの数のモンスターを相手に戦っているのでしょうか?」黒瀬が驚く。


「あそこに」柾木が指をさす。


カメラは彼の指した方向にパンする。そこには二人の人間がいた。一人は白衣を着た女性で、もう一人は少女だった。二人は壁際に立っている。


「うん、そうだよ。私たちは三人なんだ。あの二人は研究者とその助手だよ。私は彼女たちのボディーガードをしているの」


女性冒険者が説明する。



「なるほど……」


どうやら残りの二人は護衛対象らしい。黒瀬は自身を納得させるようにして頷く。



黒瀬は彼女の救援要請を受け入れることにしたらしく、合図と指示を送りながら言った。


「救出が最優先です。道を切り開いて、必要なサポートを与えましょう」


冒険者たちはそれぞれ戦略的な位置に広がり、迅速に行動を起こした。


黒瀬はハープーンガンで、敵対する群れの動きを制限しコントロールする。


朝倉はライフルを構え、正確な射撃で怪物たちを撃退した。


柾木は巨体を生かし、巨大なパイルバンカーを振り回して迫り来るモンスターを吹き飛ばす。



男性冒険者たちはそれぞれの武器を駆使し、モンスターの群れに立ち向かった。


カメラは彼らの連携や銃声、モンスターへの攻撃の様子を鮮明に捉えている。


男性冒険者たちはモンスターの包囲網を崩すことに集中していた。彼らは完全な殲滅を目指すのではなく、女性冒険者を助け出すことに焦点を当てているようだった。



しかし、注目すべきは包囲の内側で戦いを繰り広げている女性冒険者だった。

カメラは彼女が繰り出す体術や、銃撃によって次々と倒されるモンスターたちの様子を捉える。彼女の表情は冷静でありながら、その目は歓喜と狂気に満ちていた。



その間、護衛対象の女性研究者と助手の少女は、物陰に隠れることもせずに大胆に姿をさらしている。


モンスターの群れに包囲されるという絶望的な状況に怯える様子もなく、冒険者が怪物たちを惨殺してゆく様子を目の当たりにしても平然としていた。



モンスターたちの攻撃は激しさを増すが、女性冒険者はモンスターを圧倒し続けた。


彼女の攻撃は迅速かつ強力で、モンスターを次々に倒していく。

映像超しでも、その異常なまでの強さが伝わってきた。


同時に、カメラは男性冒険者の驚きの表情も捉えていた。

彼らは目を見開き、自身が目撃した女性冒険者の強さに圧倒されている。彼女の戦闘技術と身体能力の高さに対する驚きと感嘆が、カメラを通して伝わってくる。





女性冒険者の戦闘スタイルは見る者に恐怖と畏敬の念を抱かせた。


彼女の持つアサルトライフルには銃剣が付いていた。それは一般的な物よりも鋭く長い。

迫る牙や爪をものともせずに近接して、深々と刺して抉る。

体術を駆使しながら巨体のモンスターの攻撃を軽くいなして投げ飛ばす。

自身の周囲のモンスターを軽く払いのけるように切り殺しながら、さらに護衛対象に近づくモンスターたちも僅かな動きで撃ち抜いていた。




戦いが続く中、女性冒険者の動きがますます際立ってきた。

彼女の動きは優雅で力強く、一撃ごとに的確で致命的な攻撃を繰り出している。

彼女には自然の力のような静けさと、猛烈な激しさがあった。



モンスターたちの包囲は崩れて、救出の見通しが明確になっていく。



カメラは援護する男性冒険者たちを捉えた。

彼らは護衛対象の女性研究者たちを誘導しながら戦っている。

執拗なモンスターの群れと戦いながらも、目的に集中していた。彼らは仲間の道を切り開くことを優先し、逃走を妨げる可能性のある脅威を排除することに努めている。鉄の匂い、武器の衝突音、絶え間ない闘争が濃密な空気を生み出していた。



カメラは戦いの一部始終を記録し、男性冒険者たちのサポートと女性冒険者の戦いぶりを見事に映し出す。





結果的に、彼らは周囲にいた全てのモンスターを殺し尽くし、殲滅していた。



少年の震える様な深いため息を最後に、映像は途切れる。

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